過去ログ - 禁断の果実はなんの味?
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1:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 11:50:09.86 ID:FU69ie4a0
鉛筆が紙の上を走り抜けていく音が好きだ。サラサラと、カッカと紙と鉛筆の芯が触れ合う音が好きだ。

その理由はあまりたいしたものじゃない。むしろこの理由を恥じるべきだと僕は思う。

電子機器を扱うのが苦手なだけだ。

誰も彼も、まだ小さい幼児ですら歩くことのできるインターネットの道を僕ははいはいする赤子程度にしか歩くことができない。

だから嫌いなんだ。

キーボードも、ディスプレイも。

「コーヒー」

画用紙を文字で埋め尽くそうとする手を止めて、僕は顔を画用紙から動かさずにそう言った。

また再び画用紙を文字で埋め尽くす作業へと戻る。

僕は好きだ。この音が好きだ。

「お待たせいたしました、マスター」

そしてこの人間を真似した無機質な声が嫌いだ。

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2:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 12:02:47.00 ID:FU69ie4a0
人類の進化。ブレイクスルーが起きたのは僕が生まれるよりも前。

ロボット、アンドロイド。それらの登場によって人間の生活というものはさらに豊かに、便利になった。

農業、漁業、工業。人間よりも長時間働き、疲労も少ないアンドロイドの活躍により、商品の値段は低下した。だって人間と違っているものは電気とたまのパーツ交換だけだからだ。労災もいりはしない。むしろ保険にはいっている分、壊れてしまったほうがよいという事だってあるくらいだ。
以下略



3:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 12:25:21.54 ID:FU69ie4a0
よく行く喫茶店。僕がコーヒーを一口すすると、そいつは店内に響く大声で怒鳴った。

「だーかーらー。お前は頑固親父かよ!?」

「うるさいなぁ。だって苦手なものは苦手なんだから仕方がないだろ?」
以下略



4:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 12:40:36.52 ID:FU69ie4a0
「アンドロイドにも心はある!」

「ねぇよ」

「なにぉう!?」
以下略



5:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 12:55:26.75 ID:FU69ie4a0
「恭平は俺の意見を否定するが、お前もアンドロイドにかかわる職種だろう。思うところはないのか?」

「俺はただ家電をデザインしてるだけだ。アンドロイドを人間に近づけようだなんてさらさら思ってねぇよ」

「まるでアレルギーだな」
以下略



6:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 13:09:02.94 ID:FU69ie4a0
「アンドロイドの話はいったんやめよう」

「そうだね」

意見が違う僕達だけれど、アンドロイド以外では気があうのでいつもこの三人でこの喫茶店に集まる。
以下略



7:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 13:28:01.90 ID:FU69ie4a0
「ただいま」

家に戻り玄関を開け、そう言う。今までの人生の中で染みついた言葉はたとえ一人暮らしだとしても抜けることは無い。

「おかりなさいませ。マスター」
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2016/03/19(土) 15:17:44.97 ID:wDMsngH3o
つまんねw


9:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 17:55:55.42 ID:FU69ie4a0
カリカリカリ

カリカリカリ

原稿用紙を文字が埋める。
以下略



10:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 18:20:11.43 ID:FU69ie4a0
自己嫌悪に陥り、両手で顔を押さえる。

部屋の中に残っているのは鼻をくすぐる香ばしい料理の香り。

それに影響され腹の虫が鳴いた。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2016/03/19(土) 18:45:11.13 ID:1AGnmcL2O
あんたか
ふむ、期待


12:名無しNIPPER[sage]
2016/03/19(土) 19:36:27.39 ID:mVFMpU3SO
同じ人外好きとして期待


13:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 21:25:56.16 ID:FU69ie4a0
600をようやく数え終え、立ち上がる。いつもより時間がたつのは遅いのは時の流れを認識したからだろうか。それとも僕があのアンドロイドと顔を合わせたくないからか。

「それでもおなかはやっぱり減る」

部屋から出てリビングに向かうと直立不動で僕を迎えるアンドロイドが一人。
以下略



14:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 22:18:52.90 ID:FU69ie4a0
今日の夕食のメニューは鶏肉のカシューナッツ炒めと中華スープ、あと冷奴。

どれも味は完璧。レストランのシェフほどではないけど、十分美味しい。

少しとろみのついた中華スープをスプーンでかき回す。
以下略



15:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 23:24:46.40 ID:FU69ie4a0
「今―――いや、なんでもない」

バグか? 伝達系に遅延が発生しただけかもしれない。もしくは僕の命令の発音が悪かったか。

アンドロイドがテレビに集中する。そんなことはありえない。
以下略



16:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 23:46:28.41 ID:FU69ie4a0
「マスター」

バラエティーは終わり、スタッフロールが画面下に流れるころに僕はアンドロイドに声をかけられた。

「ん、風呂できた?」
以下略



17:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/19(土) 23:53:42.05 ID:FU69ie4a0
風呂の準備が出来たため、風呂へ向かう。

着替えも下着もタオルも全て用意されている。敦彦の言うとおり便利ではあるんだ。

アンドロイドが命令以外の行動をしたのは僕が使いこなせてないからだろうか。
以下略



18:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/20(日) 00:01:31.69 ID:dVwQUgbl0
次の日、目覚めた時にはすでに8時を過ぎていた。いつも起きる時間よりずっと遅い。

しまった。アンドロイドに命令しておくんだった。

後悔しながら眠い目をこすり部屋から出る。
以下略



19:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/20(日) 00:16:57.13 ID:dVwQUgbl0
「マスター。朝ごはんができました」

「ん」

新聞をたたみ、机の上に投げる。
以下略



20:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/20(日) 00:43:34.67 ID:dVwQUgbl0
いつもの喫茶店。運よく暇だった恭平を呼んで僕は相談に乗ってもらっていた。

「で、それで俺を頼ったのだな」

事情を説明すると恭平は少し頭を横に曲げ、眉をひそめた。
以下略



21:人外好き ◆HQmKQahCZs[saga]
2016/03/20(日) 00:44:04.49 ID:dVwQUgbl0
今日はここまで


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