過去ログ - 【モバマスSS】香水 あるプロデューサーの物語
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名無しNIPPER
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2016/04/02(土) 22:46:35.63 ID:zCk6PcLr0
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数日後、正式に神谷奈緒の担当プロデューサーとなった慶は、空いていた部屋を貸し切り、奈緒に指導を行っていた。
以下略
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名無しNIPPER
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2016/04/02(土) 22:47:28.38 ID:zCk6PcLr0
人間は、パーソナルスペースというものを持っている。ニュアンスとしては、縄張りやテリトリーという言葉が近いだろうか。簡単に言えば、他人が近づいてきて不快に思う距離のことだ。
例えば、電車に乗る想像をしてみれば、理解しやすいかもしれない。他に座席が空いているのに、おそらく殆どの人は、見ず知らずの他人の真横に座ろうとは思わないはずだ。
つまり、自分から手を差し出すということは、相手のパーソナルスペースを侵害することになり、無意識のうちに相手に不快感を与えてしまう。
「相手が手を差しだしたら、相手の手を下から掬い上げるように両手で持つ。そして、相手の目を見ながらとびっきりの笑顔をし、一言二言、言葉を交わす。些細なことだけど、こういう細かいことに留意することによって、他のアイドルと差をつけられるぞ」
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名無しNIPPER
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2016/04/02(土) 22:48:10.07 ID:zCk6PcLr0
習うより慣れろ、ということで、さっそく奈緒に握手の練習をさせてみた。
「ほら、俺が客の役をするから、やってみようか」
「うん……えっと、お客さんが手を差し出してから……」
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72
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名無しNIPPER
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2016/04/02(土) 22:49:02.82 ID:zCk6PcLr0
慶は、奈緒の握手会を三日後に設定している。地味かもしれないが、無名に等しい奈緒には、ファンと身近に接するイベントは何よりも大事である。
基礎をしっかりと築いていれば、その上にどれだけ物を載せても揺るがない。しかし、基礎を堅牢にしないうちに上に積み上げてしまうと、累卵の危機となってしまう。そうなると、後から基礎を築きなおそうをしても遅い。
百人のファンを千人に増やすのは厳しいが、千人のファンを一万人に増やすのは難しくないし、一万人のファンを十万人に増やすのはもっと容易いということだ。
「いいか、奈緒。どんなトップアイドルだって、最初から万人に知られた人気者だったわけじゃない。地道に仕事をこなし、下積みを経験したからこそ、今日に多くのファンを勝ち得ているんだ。今はどんな仕事も、将来の自分の糧になると思って全力でやれ」
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73
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名無しNIPPER
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2016/04/02(土) 22:49:34.88 ID:zCk6PcLr0
握手会当日、会場にはそれなりの数の客が詰めかけていた。
「し、新人アイドルの神谷奈緒です。よろしくお願いします!」
奈緒は、慶の指導通りに客の一人ひとりと握手を交わしている。しかし、あまりスムーズとは言えない。
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74
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:50:21.16 ID:zCk6PcLr0
二人連れの客の会話を盗み聞きし、慶はやはり自分の計算は間違っていなかったと思った。
アイドルという仕事は、夢を売る仕事である。余程目の肥えた者でない限り、殆ど笑顔で騙されてくれるから安いものだ。
客と握手を続ける奈緒を見つつ、慶は今後のプロデュース方針を決めあぐねていた。
奈緒と加蓮は一歳違いだが、346には同時期に所属している。二人の関係はいたって良好で、ユニットを組ませるのという手もある。いや、ソロで活動させるより、そちらの方が良いだろう。
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75
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:51:03.60 ID:zCk6PcLr0
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ある日の夕刻、慶は自分のデスクルームで、書類に目を通していた。美城常務からメールで送信されてきたデータを、印刷したものである。
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76
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:52:04.42 ID:zCk6PcLr0
それは、ささいなボイスレッスンだった。奈緒と加蓮は自主練として、シンデレラプロジェクトに所属している、new generationsというユニットの曲で練習していたのだ。
そこを、当のシンデレラプロジェクトの、渋谷凛というアイドルが通りかかり、周囲の勧めもあって三人でレッスンしたという。
「シンデレラプロジェクト」とは、346が企画したプロジェクトである。アイドルを目指して応募してきた少女たちの中から、有望な原石を選び出し、新たにデビューさせようというものだ。
今年の春に発足したばかりであるが、夏ごろにはプロジェクトの全員がデビューし、定例行事のサマーフェスにはプロジェクト全体の新曲を披露し、成功を収めている。
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77
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:52:54.16 ID:zCk6PcLr0
渋谷凛は、そのシンデレラプロジェクトの一員である。
十五歳という年齢からすれば、かなり背が高く、黒く豊かな長髪の持ち主である。直接話したことは無いが、態度はいつも沈着で、同年代に較べれば大人びている。
サマーフェスを過ぎたころから、その渋谷凛と加蓮と奈緒が仲良くなったのは知っていた。しかし、加蓮と奈緒がここまで特定の人物に固執するのは珍しい。
慶は件のレッスンを直接見たわけではないが、次第に熱を帯びてくる奈緒の口調から察するに、二人は渋谷凛と精神の深いところで通じ合ったのだろう。
この仕事では、そういうことが稀にある。
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78
:
名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:54:11.34 ID:zCk6PcLr0
興奮する奈緒を、慶は冷静な目で見ていた。最初は奈緒をからかう風だった加蓮も、真剣な面差しになっている。
奈緒の熱弁が途切れた後、長い沈黙が部屋の中を支配した。だが、堪え切れなくなった慶は吹き出し、呵々大笑する。
自分たちのプロデューサーがおかしくなった。奈緒と加蓮は互いに顔を見合わせ、不安そうな目で慶の顔を凝視した。
こんなお誂えがあってもよいのだろうか。哄笑を収めた慶は、デスクの上に置かれた資料に目を落とした。その一枚目には、ダイヤモンドの意匠と共に「Project Krone」という表題が躍っている。
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79
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/02(土) 22:55:36.16 ID:zCk6PcLr0
「新しい企画には、二人と渋谷凛が入ってる。まあ、あっちにも事情や予定があるだろうし、シンデレラプロジェクトのプロデューサーとも話しをつけなくちゃならない。調整は俺がするから、精々頑張って、渋谷凛を口説き落とすことだな」
「ありがとう、慶さん!」
慶の言葉を聞いた二人は、「やったー!」などと言いながら、手を取り合って欣喜雀躍した。
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