過去ログ - 【モバマスSS】時には、プリンの話を
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1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:39:08.11 ID:wjFhQvEZ0
 
※ このssにはオリジナル設定やキャラ崩壊が含まれます。

===【始まりの、真っ赤な果実】

 城の中は酷く陰気で、重苦しい雰囲気に満たされており、
 切り払えども薙ぎ払えども、次々と行く手に現れる無数の魔物との戦いに終わりはないようだった。
 
 要所要所に設置された燭台の、頼りなげな炎を揺らす蝋が空気を淀ませ、
 奥に進むたびに強くなる、かび臭さと腐臭の混じった酷い臭いも鼻をつく。

 
 死霊の棲み家と恐れられるこの古城に足を踏み入れてから、どのぐらいの時間が経っただろう?
 
 いつ襲われるか分からない緊張感から流れでた汗が一筋、少女の額から鼻筋にかけてつうっと落ちる。
 
 僅かな光源を頼りに石造りの廊下を進み、曲がり角の暗がりに足を置いた瞬間だった。

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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:41:54.77 ID:wjFhQvEZ0
 
 迂闊にも足を踏み入れた、床に描かれた魔法陣が赤黒い光を放ったかと思えば、
 目の前の闇がぐらりと歪み、何も無い空間から無数の腕が現れる。
 
 それは冥界より死者を呼び寄せる、簡易な召喚魔法の一種。
以下略



3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:43:19.76 ID:wjFhQvEZ0

 できることならば、今すぐにでも気を失ってしまいたい――少女、銀蝕の乙女は城に入る前に言われた言葉を思い出す。
 
『いつものように、君の心に防壁を作らせてもらうよ……嫌がったって駄目さ。
 これも観測者としてのボクの役割であり、使命だからね』
以下略



4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:44:45.24 ID:wjFhQvEZ0

「うぅ……もう、お家帰りたいぃ……」

 思わず弱気な呟きが漏れるが、その願いが到底認められないであろうことは、彼女自身が知っていた。
 
以下略



5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:48:52.51 ID:wjFhQvEZ0
 
「漆黒の闇を払い、今こそ対峙の時。死霊巣くう陰鬱なる古城の主、死界の探究者よっ!」

 自らの心を奮い立たせるようにそう言って、乙女は威勢よく玉座に向けて指をさした。
 
以下略



6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:50:20.58 ID:wjFhQvEZ0

 フードを被った少女に向けて銀蝕の乙女はにべもなくそう言い放つと、目にもとまらぬ速さでその身を宙へと弾かせた。

 一閃、振り下ろされた鎌の切っ先がフードの少女の体を捉え、
 肩から腰にかけて切り開かれた傷口が辺りに鮮血をほとばしらせる。
以下略



7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:53:17.16 ID:wjFhQvEZ0
 
「せ、せっかち、なんだね……で、でも、そういうのも、嫌いじゃ……ないよ?」

 むくりと、倒れていた少女の上半身が起き上がった。
 
以下略



8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:54:26.43 ID:wjFhQvEZ0

 突然、乙女は強い力で足首を掴まれ、その場にがくりと膝をついた。
 
 振り返ると、背後では息を吹き返した立像の群れ。
 乙女の足首を掴んでいたのも、その内の一体だ。
以下略



9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:57:08.62 ID:wjFhQvEZ0
 
「い、いい……眺め、だね」

 床に押さえつけられた乙女を見下ろして、その傍に立つフードの少女。
 
以下略



10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 01:59:08.33 ID:wjFhQvEZ0
 
「き、貴様はっ、まさかっ! ……むぐっ!」

「……味が無いと、や、やっぱり……美味しくない……かな?」

以下略



11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/19(日) 02:01:55.74 ID:wjFhQvEZ0
 
「ひゃ、ひゃめへぇぇぇぇっ!!」

 少々乱暴な手つきでスプーンを口腔へとねじ込まれ、苦しさから体を捻る乙女。
 
以下略



12: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2016/06/19(日) 02:04:34.55 ID:wjFhQvEZ0
ここまで。


13:名無しNIPPER[sage]
2016/06/19(日) 13:06:26.72 ID:9er7d+Vwo
期待


14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:34:13.29 ID:aLv2JTSx0
===

「あのぅ、蘭子ちゃん……怒ってます?」

 部屋に置かれたテーブルの横、正座したまゆが、おずおずといった様子で蘭子にそうたずねると、
以下略



15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:36:53.99 ID:aLv2JTSx0
 
 とはいえ、それ自体はまゆと同室になってからというもの、すっか見慣れた朝の風景と言えるものだった。
 
 実を言えばこのまゆという少女、事務所に来てからほぼ毎日、
 朝早くから台所に立っては担当のプロデューサーの為に愛妻弁当ならぬアイドル弁当を作っているのである。
以下略



16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:37:58.81 ID:aLv2JTSx0

「はやる気持ちを抑えられなくて、手近な人に味見をしてもらいたくなっちゃったんです」とはまゆの弁だが、このような体験
 ――要するに、寝ている最中に口の中へ異物を入れられて起こされる体験だ――を蘭子が経験するのは、これで三度目。


以下略



17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:41:44.63 ID:aLv2JTSx0
 
「ほ、本質は其処で無い! 深紅の絆を見る者よ、我に二度も悠久の花園を見せようと言うのか!?」
(も、問題はそこじゃありません! まゆさんは、二回も私にお花畑を見せるつもりなんですか!?)

 そう、蘭子が顔を真っ赤にして言うように、前回の煮物は特に酷かった。
以下略



18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:43:53.99 ID:aLv2JTSx0
 
「ねぇ、どうです? 美味しかった? それともイマイチ? 
 私としてはちょっと酸っぱくなりすぎたかなって思ったけれど、その方が味が誤魔化せ――隠し味が、引き立つかなって」

 両手を合わせ、うっとりとした表情で語るまゆ。
以下略



19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:45:08.29 ID:aLv2JTSx0

「……どうしました、蘭子ちゃん。顔色が悪いですよぉ?」

 咄嗟にうつむき、強く口を噛みしめることでその感覚をやり過ごした蘭子だったが、
 そんな自分のことを心配そうに覗き込む、まゆの顔と視線が合った。
以下略



20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/20(月) 22:47:23.67 ID:aLv2JTSx0
 
 きっと、恐らく、いや、多分。いくら彼女が「変わってる」とはいえ、
 先ほど自分の脳裏に浮かんだイメージのようなことは、いくらなんでもしてないハズだ。
 
 ……と、言うよりも、するハズがないだろうと笑顔で否定して貰いたかった。
以下略



21: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2016/06/20(月) 22:48:24.15 ID:aLv2JTSx0
蘭子語辞典が欲しいと思う今日この頃。ここまで。


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