802:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:44:17.12 ID:IXxsBwaSo
◇
扉が静かに開いた。
803:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:45:00.16 ID:IXxsBwaSo
誰かに話しかけるような、ざくろの言葉の意味はわからない。
わたしは、静かにケイくんの手をとった。
「お兄ちゃんが、この世界のお兄ちゃんを刺した理由、なんとなく分かる気がするの」
804:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:45:28.75 ID:IXxsBwaSo
「――加害者側からの、理屈ね」
不意に、ざくろがそう言った。
805:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:46:52.54 ID:IXxsBwaSo
「血……?」
「そうよ。そうじゃないと不合理でしょう?」
806:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:47:49.68 ID:IXxsBwaSo
ねえ、そんな"誰か"なんていると思う?
「ねえ、わたしたちが心の底から笑える場所ってどこだと思う? そんなものがあると思う?
居心地が悪いのよ。なんだか何をやっても無理やり笑わせられてるような気がする。
807:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:49:12.52 ID:IXxsBwaSo
その人は、わたしとケイくんのことなんて見えていないみたいに、まっすぐにざくろに視線を向けていた。
「ねえ、ざくろ。あなたの言いたいことは分からなくもない。血は、流されないといけない。
でも、それは他の誰かの血ではないはずよね。遼一が、こっちの遼一を刺した。それは、事実かもしれない。
808:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:49:41.65 ID:IXxsBwaSo
にらみ合いのような沈黙が落ちたけれど、それはほんの数秒のことだった。
「なんだか気まずいところを見られたね」
809:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:50:08.64 ID:IXxsBwaSo
◆
白い光が見えた気がした。
810:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:50:34.86 ID:IXxsBwaSo
あたりを見回してみたけれど、彼の姿はなかった。
「ケイくん」と、もう一度名前を呼んでみる。
あたりは物音ひとつない静寂に包まれていて、発したはずのわたしの声でさえどこかに掻き消えてしまったみたいに思えた。
811:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:51:01.06 ID:IXxsBwaSo
似たような扉が続いているだけの通路の、どちらに進めばいいと言うのだろう。
どちらにいってもどこにつくか分からないなら、どちらにいっても同じことかもしれない。
どちらかに何もないとわかれば、もと来た方へと戻ればいいだけだ。
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