過去ログ - モバP「白菊ほたると一輪の笑顔」
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10: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:56:06.78 ID:QSjMH8mi0
だけど、ほたるちゃんにとって「次」は不確実なもので、「今」は脆くいつ崩れ落ちても不思議ではないのだろう。
杏ちゃんはテーブルに突っ伏しながら気だるげに言う。
「気にするなって言われても無理だよねー。こればっかりは気持ちの問題だからさ。でも、ほたるちゃんが落ち込んでると逆に気になるんだよね。だから、杏たちのために気にしないでよ」
11: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:57:51.97 ID:QSjMH8mi0
それから帰り道、喫茶店に寄った。せめて、もう少し明るい気持ちで帰ってほしかったのだ。
カウンターでコーヒーとココアを受け取って席に着く。俯くほたるちゃんの前にココアを置いてから、俺は口を開いた。
「練習ではできていたよね。なんでミスしたと思う?」
12: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:58:57.67 ID:QSjMH8mi0
「一緒に確認して反省しよう。今すぐどうにかは難しいと思う。だから、一緒に慣れていこう。不幸があったならふたりで乗り越えよう。大丈夫、ほたるちゃんを見捨てはしない。俺も、プロダクションもね」
ほとんどプロポーズだった。まあ、形は違うけど似たようなものだ。
俺はほたるちゃんに伝えなければならない。ここなら安心だと、明日は普通にやってくるし、今日は崩れないと。
13: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:00:43.27 ID:QSjMH8mi0
「あの……笑顔の練習、付き合ってもらえませんか?」
ライブの一件からしばらくして、ほたるちゃんはレッスンの休憩中に、唐突にそう言った。
「小さい頃から、いつも困った顔してるって言われて……」
14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:02:07.16 ID:QSjMH8mi0
「ああぁぁ……今笑えてたよ。うん、可愛かった」
「……すみません」
「いや、謝らなくていいよ」
15: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:04:30.93 ID:QSjMH8mi0
茹だるような暑さに気が滅入る。
周囲は人、人、人。喧騒と雑踏に嫌気がさしながら、俺はほたるちゃんの手を引いて歩く。
出店の鉄板と人の多さのせいか、会場までの道程は気温以上に暑く感じた。
16: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:06:04.88 ID:QSjMH8mi0
突然の待ちぼうけ。俺とほたるちゃんはフェンスに近づく。目の前は暗い海。その先には街が煌々と輝いていた。
「向こう側、キラキラしてますね」
「うん、綺麗だね」
17: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:08:19.51 ID:QSjMH8mi0
プロダクション主催の合同ライブに、白菊ほたるの出演が決まったのは半年前、きらりちゃんと杏ちゃんのバックダンサーを務めた直後だった。
夏頃までは現実味がなかったのだと思う。ライブまで残り一ヶ月と迫って、ほたるちゃんは不調に陥った。
それまではできていたのに、歌えば音を外し、踊ればどこかしらでミスをする。端的に言えばスランプだ。
18: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:09:57.11 ID:QSjMH8mi0
遠い目をしているのは、うん、きっと未来を見ているのだと信じたい。
俺にできることは少ない。こればかりは他人がなんと言おうと、最終的には本人の問題だから。
だとすればなにができるのか。
19: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:11:29.12 ID:QSjMH8mi0
「俺もダメだったろうなぁ。水やり忘れそうだし」
他愛ない会話をして歩く。のんびりとした時間は安らぐ。ほたるちゃんも少しは、気を楽にしていればいいけれど。
帰り道、アクセサリーショップに寄った。
20: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:13:01.98 ID:QSjMH8mi0
「ほたるちゃんがどう思ってるのかは知らないけれど、俺はほたるちゃんと一緒にいれて幸せなんだ。だから、恩返し」
幸不幸は解釈による。俺はどんな出来事も、ほたるちゃんといれば幸福に思える。
ほたるちゃんは困ったように笑う。
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