過去ログ - モバP「白菊ほたると一輪の笑顔」
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7: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:51:24.03 ID:QSjMH8mi0
 雑誌の撮影から二カ月、穏やかな日々が続いた。

 大きな失敗もなく、ほたるちゃんは着実に仕事をこなした。自信のなさは相変わらずだけど、それでも彼女が首を傾げるぐらいには順調と言えた。

 俺とほたるちゃんの仲も、多少は近づけたように思う。
以下略



8: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:52:24.07 ID:QSjMH8mi0
 ある日、ほたるちゃんは両手ですずらんの鉢を抱えてきた。事務所を出てすぐの花屋で買ってきたらしい。

 控えめにだけど、自己主張する彼女は珍しい。嬉しくなる。

「この部屋、緑が少ないと思います。……ダメですか?」
以下略



9: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:54:59.07 ID:QSjMH8mi0
 だから、油断したんだと思う。

 さらに一ヶ月が経った今日、ほたるちゃんは小日向美穂とともに、双葉杏と諸星きらりのステージでバックダンサーを務めた。

 しかし、完璧ではなかった。細かなミスがいくつかあった。ただ、許与範囲と言える。気にするなとは言えないけれど、気にし過ぎるほどでもない。
以下略



10: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:56:06.78 ID:QSjMH8mi0
 だけど、ほたるちゃんにとって「次」は不確実なもので、「今」は脆くいつ崩れ落ちても不思議ではないのだろう。

 杏ちゃんはテーブルに突っ伏しながら気だるげに言う。

「気にするなって言われても無理だよねー。こればっかりは気持ちの問題だからさ。でも、ほたるちゃんが落ち込んでると逆に気になるんだよね。だから、杏たちのために気にしないでよ」
以下略



11: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:57:51.97 ID:QSjMH8mi0
 それから帰り道、喫茶店に寄った。せめて、もう少し明るい気持ちで帰ってほしかったのだ。

 カウンターでコーヒーとココアを受け取って席に着く。俯くほたるちゃんの前にココアを置いてから、俺は口を開いた。

「練習ではできていたよね。なんでミスしたと思う?」
以下略



12: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 12:58:57.67 ID:QSjMH8mi0
「一緒に確認して反省しよう。今すぐどうにかは難しいと思う。だから、一緒に慣れていこう。不幸があったならふたりで乗り越えよう。大丈夫、ほたるちゃんを見捨てはしない。俺も、プロダクションもね」

 ほとんどプロポーズだった。まあ、形は違うけど似たようなものだ。

 俺はほたるちゃんに伝えなければならない。ここなら安心だと、明日は普通にやってくるし、今日は崩れないと。
以下略



13: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:00:43.27 ID:QSjMH8mi0
「あの……笑顔の練習、付き合ってもらえませんか?」

 ライブの一件からしばらくして、ほたるちゃんはレッスンの休憩中に、唐突にそう言った。

「小さい頃から、いつも困った顔してるって言われて……」
以下略



14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:02:07.16 ID:QSjMH8mi0
「ああぁぁ……今笑えてたよ。うん、可愛かった」

「……すみません」

「いや、謝らなくていいよ」
以下略



15: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:04:30.93 ID:QSjMH8mi0
 茹だるような暑さに気が滅入る。

 周囲は人、人、人。喧騒と雑踏に嫌気がさしながら、俺はほたるちゃんの手を引いて歩く。

 出店の鉄板と人の多さのせいか、会場までの道程は気温以上に暑く感じた。
以下略



16: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:06:04.88 ID:QSjMH8mi0
 突然の待ちぼうけ。俺とほたるちゃんはフェンスに近づく。目の前は暗い海。その先には街が煌々と輝いていた。

「向こう側、キラキラしてますね」

「うん、綺麗だね」
以下略



17: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:08:19.51 ID:QSjMH8mi0
 プロダクション主催の合同ライブに、白菊ほたるの出演が決まったのは半年前、きらりちゃんと杏ちゃんのバックダンサーを務めた直後だった。

 夏頃までは現実味がなかったのだと思う。ライブまで残り一ヶ月と迫って、ほたるちゃんは不調に陥った。

 それまではできていたのに、歌えば音を外し、踊ればどこかしらでミスをする。端的に言えばスランプだ。
以下略



18: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:09:57.11 ID:QSjMH8mi0
 遠い目をしているのは、うん、きっと未来を見ているのだと信じたい。

 俺にできることは少ない。こればかりは他人がなんと言おうと、最終的には本人の問題だから。

 だとすればなにができるのか。
以下略



19: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:11:29.12 ID:QSjMH8mi0
「俺もダメだったろうなぁ。水やり忘れそうだし」

 他愛ない会話をして歩く。のんびりとした時間は安らぐ。ほたるちゃんも少しは、気を楽にしていればいいけれど。

 帰り道、アクセサリーショップに寄った。
以下略



20: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:13:01.98 ID:QSjMH8mi0
「ほたるちゃんがどう思ってるのかは知らないけれど、俺はほたるちゃんと一緒にいれて幸せなんだ。だから、恩返し」

 幸不幸は解釈による。俺はどんな出来事も、ほたるちゃんといれば幸福に思える。

 ほたるちゃんは困ったように笑う。
以下略



21: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:14:19.98 ID:QSjMH8mi0
 ほたるちゃんが移籍してきてから一年近くが経った。

 桜が心地よい風に舞い、あらゆる出来事を祝福して見える。出会いと別れの季節。ほたるちゃんにはさらなる幸せと出会い、これまでの不幸と別れられるよう願うばかりである。

 今日は雑誌の特集であるブライダルセレクションの撮影だ。
以下略



22: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:15:58.13 ID:QSjMH8mi0
 親の気持ちとはこういう感じなのだろうか。ほたるちゃんの言葉に涙腺が緩んでしまう。

 ほたるちゃんは涙ぐむ俺に歩み寄り、手を差し出してきた。

「手をひいて……もらえますか……?」
以下略



23: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:17:23.30 ID:QSjMH8mi0
 事務所に戻る。

 ある意味、今日のメインイベントはこれからだ。ほたるちゃんと小会議室を訪れる。彼女は首を傾げたが、素直についてきてくれた。

 ノックするとドアの先から「どうぞー」と声がした。俺はスマホを取り出し連絡するふりをして、ほたるちゃんに先に入るよう促す。ドアを開くとクラッカーが鳴り響いた。
以下略



24: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:18:59.21 ID:QSjMH8mi0
 ほたるちゃんは頬を朱に染める。そして、恥ずかしそうにはにかんだ。

「結婚の約束、してくれました」

 爆弾だった。いや、たしかに似たようなものだけど。ちひろさんが隣にやってくる。
以下略



25: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:19:34.57 ID:QSjMH8mi0
終わりです。
依頼してきます。


26:名無しNIPPER[sage]
2016/09/07(水) 16:23:46.80 ID:eaPZR3gnO
乙、面白かった
デレステほたるちゃんssrはよ


27:名無しNIPPER[sage]
2016/09/07(水) 19:54:54.64 ID:AdPRlbEiO
ほたるぅー!俺だー!


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