過去ログ - モバP「白菊ほたると一輪の笑顔」
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14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:02:07.16 ID:QSjMH8mi0
 「ああぁぁ……今笑えてたよ。うん、可愛かった」 
  
 「……すみません」 
  
 「いや、謝らなくていいよ」 
15: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:04:30.93 ID:QSjMH8mi0
  茹だるような暑さに気が滅入る。 
  
  周囲は人、人、人。喧騒と雑踏に嫌気がさしながら、俺はほたるちゃんの手を引いて歩く。 
  
  出店の鉄板と人の多さのせいか、会場までの道程は気温以上に暑く感じた。 
16: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:06:04.88 ID:QSjMH8mi0
  突然の待ちぼうけ。俺とほたるちゃんはフェンスに近づく。目の前は暗い海。その先には街が煌々と輝いていた。 
  
 「向こう側、キラキラしてますね」 
  
 「うん、綺麗だね」 
17: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:08:19.51 ID:QSjMH8mi0
  プロダクション主催の合同ライブに、白菊ほたるの出演が決まったのは半年前、きらりちゃんと杏ちゃんのバックダンサーを務めた直後だった。 
  
  夏頃までは現実味がなかったのだと思う。ライブまで残り一ヶ月と迫って、ほたるちゃんは不調に陥った。 
  
  それまではできていたのに、歌えば音を外し、踊ればどこかしらでミスをする。端的に言えばスランプだ。 
18: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:09:57.11 ID:QSjMH8mi0
  遠い目をしているのは、うん、きっと未来を見ているのだと信じたい。 
  
  俺にできることは少ない。こればかりは他人がなんと言おうと、最終的には本人の問題だから。 
  
  だとすればなにができるのか。 
19: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:11:29.12 ID:QSjMH8mi0
 「俺もダメだったろうなぁ。水やり忘れそうだし」 
  
  他愛ない会話をして歩く。のんびりとした時間は安らぐ。ほたるちゃんも少しは、気を楽にしていればいいけれど。 
  
  帰り道、アクセサリーショップに寄った。 
20: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:13:01.98 ID:QSjMH8mi0
 「ほたるちゃんがどう思ってるのかは知らないけれど、俺はほたるちゃんと一緒にいれて幸せなんだ。だから、恩返し」 
  
  幸不幸は解釈による。俺はどんな出来事も、ほたるちゃんといれば幸福に思える。 
  
  ほたるちゃんは困ったように笑う。 
21: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:14:19.98 ID:QSjMH8mi0
  ほたるちゃんが移籍してきてから一年近くが経った。 
  
  桜が心地よい風に舞い、あらゆる出来事を祝福して見える。出会いと別れの季節。ほたるちゃんにはさらなる幸せと出会い、これまでの不幸と別れられるよう願うばかりである。 
  
  今日は雑誌の特集であるブライダルセレクションの撮影だ。 
22: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:15:58.13 ID:QSjMH8mi0
  親の気持ちとはこういう感じなのだろうか。ほたるちゃんの言葉に涙腺が緩んでしまう。 
  
  ほたるちゃんは涙ぐむ俺に歩み寄り、手を差し出してきた。 
  
 「手をひいて……もらえますか……?」 
23: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/09/07(水) 13:17:23.30 ID:QSjMH8mi0
  事務所に戻る。 
  
  ある意味、今日のメインイベントはこれからだ。ほたるちゃんと小会議室を訪れる。彼女は首を傾げたが、素直についてきてくれた。 
  
  ノックするとドアの先から「どうぞー」と声がした。俺はスマホを取り出し連絡するふりをして、ほたるちゃんに先に入るよう促す。ドアを開くとクラッカーが鳴り響いた。 
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