1: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/07(月) 20:24:51.63 ID:ISgydyMx0
「わぁ、961プロって初めて来たけど、とっても大きいんだね。迷子になっちゃいそう。
こんなに大きいビルを何に使ってるんだろう?」
「アイドルだけじゃなくて、他にも幅広く手掛けてるから。そのせいかも」
「藍子ちゃんは迷ってない? ちゃんと集合場所に行けるかな?」
「部屋番号を見てるから大丈夫だよ。この階の……ちょっと先にあるみたい。ほら、案内板」
「あ、ほんとだ!」
「夕美ちゃんも場所をわかってるかと思ってたんだけど……」
「そこはほら、藍子ちゃんがしっかりしてるからついて行けば大丈夫かなって♪」
「もうっ……」
「冗談だってば! 703会議室でしょ?」
「そうそう……って言ってる間に着いちゃった」
目の前の、703号室と書かれたプレートが掛けられている扉の前で立ち止まる。
ノックをして、そのドアを開いた。
「失礼します」
「失礼しますっ」
「藍子ちゃんに……夕美ちゃん!
おはようございます。今日はよろしくね」
部屋の中には美波さんが居た。椅子から立ち上がって出迎えてくれる。
さすがに美波さんは私たちよりも先に来てたみたい。
「おはようございます。よろしくお願いしますね」
「おはようございますっ。えっと……」
「あっ、私は新田美波です。夕美ちゃんのことは藍子ちゃんからよく聞いてて、それで知ってたんだ。
みんなよりちょっとだけ先輩になるけど、これから同じユニットで活動していくんだから気楽にしてね?」
「はいっ。よろしくお願いします、美波さん」
2人は会うのが初めてだっけ。
夕美ちゃんも物怖じしない性格だから、美波さんと打ち解けるのも早いと思う。
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2: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:16:29.43 ID:i56WKjGq0
「それにしても今回の企画、美波さんにはぴったりだと思います。
私と夕美ちゃんはどうしてえらばれたんだろうって不思議ですけど」
「ふふっ、ありがとう。
3: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:17:07.22 ID:i56WKjGq0
聞こえたノックの音に会話が途切れた。
「おはようございます。みなさんお揃いですね」
4: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:17:34.71 ID:i56WKjGq0
ここまで話したところで、ありすちゃんが照明を点けた。
「さて、堅いお話はここまでにしましょうか。ここで自己紹介をしたいと思いますけど、どうでしょうか?
初対面の方も居ますから」
5: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:18:09.43 ID:i56WKjGq0
「ここまでで何か質問はありますか?
何でも訊いてください。疑問は解消しておいた方がいいですから」
ありすちゃんが部屋の中を見回す。
6: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:18:35.27 ID:i56WKjGq0
リーダーが美波さんに決まったところで、ありすちゃんが大きく息を吐く。
「美波さんが引き受けてくれてよかったです」
7: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:19:07.78 ID:i56WKjGq0
美波さんと文香さんが部屋を出ていくと、ありすちゃんが私と夕美ちゃんのところに近づいてきた。
「私達もこの後ゆっくりお話でもしましょうか。
下のカフェに行きませんか?」
8: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:19:41.10 ID:i56WKjGq0
「藍子ちゃん、本当にかっこよかったよ! 普段と全然雰囲気が違ってたね」
「夕美ちゃんもクールにできてたと思うよ。やっぱりお姉さんだから、大人っぽかったし」
9: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:20:13.78 ID:i56WKjGq0
「はーい。それにしても、私はこういう方向の演技ってしたことがなかったから新鮮だったなぁ」
「普段の自分と違うほど難しくなっていきますからね。私も、子供らしくと言われると困りましたから」
10: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:20:41.23 ID:i56WKjGq0
PV撮影の当日になった。
移動に使っている車の中では、それについての会話に花が咲いている。
私とありすちゃんが座っている前の列には、美波さんと夕美ちゃんと文香さんが座っていた。
11: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:21:11.05 ID:i56WKjGq0
「これはまだ話が出てるだけなんですけど、設定を作り込み過ぎたみたいで。アニメ化の企画になるかもしれません」
「えっと、アニメ? ドラマじゃ映画じゃなくて?」
12: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:21:41.45 ID:i56WKjGq0
「それでいいんです。同じようなことを後からやる以上差別化は必要ですから。
まったく、なんで社長も乗り気になってるんですか……部長は銀河アイドル伝説ってどんな冗談ですか……
今からどこまでオファーが飛んでいくか怖くて仕方がないのに……」
13: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:22:23.49 ID:i56WKjGq0
「綺麗な場所ですね〜」
「実際に目にしてみると、思っていた以上にいいところでした」
14: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:22:59.66 ID:i56WKjGq0
文香さんが立ち去ると、ありすちゃんと2人きりになった。
少し気まずそうな顔をしている。
「結果的にあれでよかったんじゃないかな? 文香さんもちゃんとわかってたみたいだし」
15: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:23:49.16 ID:i56WKjGq0
「それにしても、本当にきれいなお花畑だね。
小さな頃、花冠や花の指輪なんかを作ったのを思い出すなぁ」
「私はあまりそういう遊びはしてこなかったので、作り方を知らないです。
16: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:24:19.78 ID:i56WKjGq0
今日はライブの本番。これが『アインフェリア』としてひとまず最後のお仕事になる。
会場は大規模なアリーナ。こんな会場は私の単独ライブで使ったことはなくて、『パステルガールズ』でならなんとか、というところだ。
ありすちゃんは単独で使ったこともあるくらいで、私と美波さんはこの規模の会場やドームでのライブに出た経験があるから、落ち着いている。
17: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:24:48.64 ID:i56WKjGq0
「ここだよ」
美波さんの案内で来たのは、スタンド席の外の通路だった。
会場前で人気のない通路の壁に沿って、フラワースタンドが並んでいる。
18: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:25:16.99 ID:i56WKjGq0
「みんな、お疲れ様! いいステージだったわ!」
「文香さんも頑張りましたね。ソロで会場を惹きつけたのは凄かったです」
19: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:25:57.96 ID:i56WKjGq0
「本当に終わっちゃったんだよね。
みんなとお友達になって、お仕事は先輩達に教えてもらって。
いい経験になったし、楽しかったよ。
だから、もっと……って思っちゃうのかな」
20: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:26:29.66 ID:i56WKjGq0
荷物をまとめていると、隣にいたありすちゃんが体を寄せてきた。
「藍子さん。また後で相談したいことがあるんですけど、いいですか?」
21: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/11/08(火) 09:26:57.77 ID:i56WKjGq0
ライブから1週間後。
私と美波さんと夕美ちゃんと文香さんは、961プロの近くにある公園に来ていた。
木陰にブルーシートを広げて、今日はここで打ち上げをすることになっている。
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