過去ログ - 茄子「にんじんびーむ♪」
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4:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:43:21.95 ID:tFwGSLOi0
 ――事の起こりは、そんなところでしょう。あのとき事務所にいた彼女たち以外にも、同じようなことを願った子が多くいたのだと聞かされました。

 そうです、聞かされたのです。

 プロデューサーさんと、結婚したい。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:43:56.99 ID:tFwGSLOi0
   ◆   ◆   ◆

 逃れ得ぬ破滅。繰り返す惨劇。響き渡る慟哭。

 悲劇と憎悪と血涙が輪を成して、無限に、永久に、繰り返す。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:45:08.94 ID:tFwGSLOi0
 ――ひ、非常にマズイことになりました。

 プロデューサーさんが10歳になっちゃったなんて……これは、マズイです。本当の本当に大ピンチです。

奈々
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:45:45.78 ID:tFwGSLOi0
 ミトンをはめてダッチオーブンを持ち上げます。おっとこれは重い。腰に来ますね。ちょっとウサミンパワーを出さないと辛いです。

 えっちらおっちらと、鶏肉の塊が入った鉄の塊を運びます。いや、開けてのお楽しみとは言われましても、クリスマスにダッチオーブンを引っ張り出してきてまで作る料理と言ったらローストチキンしかありませんし。あ、なるほど。子供たちに聞かれても答えないで、ということですか。蓋を開けるときのワクワク感も、料理のだいご味ですからね。

 そんなわけで事務所に戻ってきました。奈々が運ぶダッチオーブンに気づいた人は自然と道を譲ってくれます。お気遣いいただきありがとうございます。ありがとうございます。いえ、ですが、あの、皆さん。もっと自分の作業に集中していただいてもいいんですよ? でないとほら、ね? いい匂いがしてきて、大きな鉄鍋を持った人がドアから入ってきて、モーセさんみたく人込みを割っちゃうとですね? ほら、やっぱり子供たちはガン見するわけですよ。ええ、ええ!
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:46:25.41 ID:tFwGSLOi0
   ◆   ◆   ◆

 私は飽きることを知らなかった。疑うことを知らなかった。そのような機能は持っていなかった。

 感情を持たなかった。怒りも憎しみも悲しみも喜びもなかった。私は魅力的な外装人格を備えた完璧な観測機だった。
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:47:00.48 ID:tFwGSLOi0
 奈々さんの説明というか、釈明によると、以前、プロデューサーさんとは同じアパートのお隣さん同士だったということでして。

 しかもプロデューサーさんが母子家庭だったこともあって、小学校に上がるまでの間は、お母さんに代わってプロデューサーさんの面倒を見ていたようなのです。ごはんはもちろん、一緒にお散歩したり、お昼寝したり、絵本を読んだり、お風呂に入ったり。ほかにも、いろいろ。けしからん。

 そういうわけで、プロデューサーさんは奈々さんにべったりでした。知っている人が奈々さんだけ、というのもあるかもしれませんが、それにしても甘えすぎのような気もします。というか仲良すぎですよね。ああ、ほら、あんまりにもべたべたしてるから……みんな殺気立ってますよ? 奈々さんもそれとなくプロデューサーさんを引き離そうとしてますけど、プロデューサーさんはじゃれ合いとしか思ってないようですし……これじゃあ子供たちの夢を叶えた意味がありません。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:48:25.27 ID:tFwGSLOi0
 身体を震わせるほどの歓声と、スポットライトが照らし出す汗。

 輝かんばかりの笑顔に、心に響き渡るメロディ。

 ステップは軽やかに。リリックは情熱的に。指先に、つま先に、精一杯の心を込めて。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:49:22.58 ID:tFwGSLOi0
 私は三つ目のケーキに手を伸ばそうとして、事務所の片隅にいたその子に気づきました。

 彼女はケーキを食べるわけでもなく、プロデューサーさんのところに行くわけでもなく、ただじっと手元を見つめていました。

 わいのわいのと盛り上がる事務所の中で、そこだけ空気が違っていました。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:49:50.21 ID:tFwGSLOi0
 私は答えられませんでした。正解のない答えです。その恐怖に対して解答を出せるのは舞ちゃん自身であって、私ではありませんでした。

 他人ができるのは背中を押してあげることくらいでしょう。でも、どうやって押せばいいのかはわかりません。踏み出すことを恐れて立ち止まっているなら、突き飛ばすくらいの勢いで押してもいいでしょう。しかし今の舞ちゃんが、もし立っているのもやっとの状態なら、押しただけで倒れてしまうくらい疲れ切っているなら、それはできません。

 倒れたら、起き上がる。それだけのことですが、たったそれだけのことが、難しいのです。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:50:16.94 ID:tFwGSLOi0
   ◆   ◆   ◆

 彼がプロデューサーを志した理由は、彼自身の口から聞いたことがあった。

 16年前の、とあるアイドルのデビューライブ。デパートの屋上に設営された、小さな野外ステージ。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:51:02.57 ID:tFwGSLOi0
 クリスマスパーティが終わって、後片付けも済むころには、すっかり夜も遅くなっていた。

 ちっちゃいプロデューサーがどこで寝るかという問題は事務所内抗争にまで発展しそうな案件だったけれど、奈々お姉ちゃん家で寝ると言い残して電池切れになったプロデューサーを前に、さすがのみんなも不承不承、それぞれの帰途に就いたのだけど――

 私はどうしても気になることがあって、事務所の門のところで踵を返した。
以下略



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