過去ログ - 橘ありす「その扉の向こう側へと」
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2: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:30:45.70 ID:L8J356lk0
――おとなになる、ということに、私は強いあこがれを抱いている。
それはきっと、誰しもが持つ……いや、持たなくても、意識したことはあるだろうあこがれ。
私の思う大人は賢く立派で、模範的で。……だって、そうしていれば、ありすちゃんは大人だね、なんて褒められたものだから。
その実何をすれば大人になれるのか、何をもって大人は大人なのか。具体的な定義なんてわからない。
だけど、その扉を見つけた日のことは。
3: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:32:50.15 ID:L8J356lk0
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いつだっただろう。二年くらい前かな。
4: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:34:04.80 ID:L8J356lk0
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「ありすちゃん、今日は朗報があります!」
5: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:35:41.27 ID:L8J356lk0
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ある休日、私はリビングのテーブルの上にノートを広げながら、うんうんと唸っていた。
本当に唸るのはみっともないからしていないけれど、それくらいの心もちでノートをじっと見つめていたのは紛れもない事実。
6: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:37:39.92 ID:L8J356lk0
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「じゃーすびーまいせーるふ、しーんーじーたー……あ、プロデューサー。お疲れ様です。……お疲れ様です」
7: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:38:52.69 ID:L8J356lk0
「ちょっとだけ待ってて。すぐ取ってくるから」
「……?はい、わかりました」
割かし簡単に用意できる類のものだったのか、プロデューサーはそのままどこかへ。
8: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:40:39.91 ID:L8J356lk0
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考えることはたくさんあったし、一筋縄ではいかなかったけれど、私はどうにか歌詞として成立するだけのものを作ることが出来た。
もちろん、これがそのまま使われるわけではないのだけど。それでもなんとなく達成感を感じるのは当然のことだと思う。
9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:42:27.57 ID:L8J356lk0
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二週間で三度ほど歌詞が往復した。
簡潔に、現状を伝えるなら……あまりうまくいっていない。
10: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:43:15.49 ID:L8J356lk0
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授業中にうとうとしてしまうなんていう不名誉な初めての経験を経て、やっぱり睡眠は大事だと実感した放課後。
私はいつものように電車に揺られて事務所に向かう。
11: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:44:40.17 ID:L8J356lk0
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ぼんやりとした意識が覚醒したのは、自分の身体がゆらゆらとした振動を感じなくなっていることを自覚した時だった。
……しまった、寝過ごしたかも。
12: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:46:30.56 ID:L8J356lk0
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自分からはなにもできないことが、こんなにも不安になるなんて、思ってもみなかった。
それはきっと、連想してしまうから。
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