過去ログ - 佐久間まゆ「たった一つの光、願い込めて」
1- 20
11:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:22:26.54 ID:ltgFqpYMo
 やがて私たちは展望台を登り切り、鉄柵に両腕を置いた。

 プロデューサーさんが体重をすっかりと鉄柵に預けているのを見て、私も恐る恐る彼の真似をする。

 プロデューサーさんはスーツ姿、私は毛布をかぶったお化け。
以下略



12:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:24:16.71 ID:ltgFqpYMo
「奇麗だろう? 昔泣き疲れてこの場所で眠ったら、偶然見つけたんだ。その頃は寒くて次の日に風邪をひいたけど、それに見合って余りあるくらいの体験をしたと思っているよ」

 瞬く星から目を離せない私にプロデューサーさんが言葉をかける。

 やっとのことでその光景から視線を離し、私はプロデューサーさんの瞳を見つめた。
以下略



13:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:26:31.79 ID:ltgFqpYMo
「俺は、まゆの前にも数人アイドルをプロデュースしてきてる。だから、アイドルが考えてることくらいはわかるつもりだった」

 独り言のような調子で、プロデューサーさんは呟く。

「最初に担当したアイドルは、凛だった。彼女はじゃじゃ馬だったが、今思えばあいつの考えてることはわかりやすかったな。俺が思うアイドル像に、一番近い奴だった」
以下略



14:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:32:31.50 ID:ltgFqpYMo
「まゆは……プロデューサーさんのことが大好きです」

「それはさんざん聞いたよ。それも、演技じゃないのかと俺は考えている。その一人称や笑い方が演技なんじゃないかって、俺の考えすぎかな?」

 乾いた笑いがこぼれる。
以下略



15:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:38:13.95 ID:ltgFqpYMo
「私は、プロデューサーさんを嫌いになんてなれませんでした。だから、貴方に嫌われるような私になろうと思ったんです」

 そして私は、プロデューサーさんに背を向けて星空を見上げる。

「でも、貴方は私のことを嫌ってはくれませんでした。あんなに重い女を演じていたのに、どうして貴方は私の心に歩み寄ってきたんですか?」
以下略



16:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:40:26.80 ID:ltgFqpYMo
 こうして素直に心情を吐露すれば、立派な社会人である彼なら、私を嫌ってくれただろう。

 君の想いに応えることはできない、と、やんわりと私を拒絶してくれたのだろう。私の初恋は、緩やかに終わりを迎えたのだろう。

 だが、私はそうできなかった。
以下略



17:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:42:25.49 ID:ltgFqpYMo
 ようやく、私の初恋は終わる。

 嫌われるためだけの、病んで狂った『佐久間まゆ』も、今日でおしまい。

 そう思っていたのに、彼は毛布ごと、私の背中を抱きしめた。
以下略



18:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:42:59.20 ID:ltgFqpYMo
「最初は、君のことを苦手だと思っていた。でも、レッスンやライブに一生懸命な君を見ていたら、どうしようもなく君が愛しくなってきたんだ」

 まるで夢のような言葉に、私はただ泣き続けることしかできない。

「俺はプロデューサーで、君はアイドル。こんなことがあってはいけないのはわかっていたさ。だから俺は、君とつかず離れずの距離を保った」
以下略



19:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:45:03.14 ID:ltgFqpYMo
「……これから、どうしましょうか」

 務めて声を震わせないように、私はそれだけを呟く。

 プロデューサーとアイドルが恋仲なんて、スキャンダルも良いところだ。
以下略



20:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:45:33.26 ID:ltgFqpYMo
「それから、君がアイドルを引退したら、俺がプロデューサーを引退したら、今までできなかったことを少しずつ埋めていくんだ。時間をかけて、ゆっくりと。それまで、待ってくれるか?」

「うふ、他の子から迫られても、私を捨てないでくださいね?」

「はは、まゆこそ、俺を捨てないでくれよ?」
以下略



21:名無しNIPPER
2017/04/09(日) 16:46:23.02 ID:ltgFqpYMo
以上です。少ししたらHTML依頼出してきます。ご覧くださりありがとうごさいました。


23Res/17.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice