9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:48:46.60 ID:Li1QhE+X0
子どもが次々に死んでしまう奇病がついこの間まで流行っていたのに、どうして村に来れたのだろう。
もともといた所から離れて寂しくないのか。
一人は寂しくないのか。
私は、もしかしたら、一人でも大丈夫だという確信をナツに見出そうとしているのかもしれない。
10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:18:38.47 ID:Li1QhE+X0
「こんなことを聞いても、なんの慰めにもならないでしょうに」
ナツは鼻で笑った。
「それとも、自分よりも可哀相な人間を見ると落ち着きますか?」
11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:36:38.98 ID:Li1QhE+X0
その後、何も言い返すことができず、また診療所に戻った。
そもそも、自分の常識が通じない相手なのかもしれない。
傷つくというか、カルチャーショックに近い。
「ナツ、家を案内しよう。ミソラは、しばらくは診療所生活が続くから、ナツはそれまでに家のことを覚えていこう」
12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:42:50.61 ID:Li1QhE+X0
それから、1週間程が過ぎた。
私は漸く自分の足で走れるくらいにまで回復していた。
ガリガリだった体も肉付いてきて、逆に太りすぎていないかと気になるくらいだった。
「今日まで、リハビリをさぼらずに頑張った成果ですね。頑張りましたね」
13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:46:59.59 ID:Li1QhE+X0
「ミソラ、歩けるようになったんですね」
「そうなの、それに、もう走れるんだよ」
と、車の周りを2周くらいして、運転席の横で足がからんでしまいずっこける。
14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:02:48.44 ID:Li1QhE+X0
家に戻って、夜は退院のお祝いということで豪勢な夕飯だった。
半分はナツが作ったというから驚きだ。
ナツは、両親の前では普通に笑って普通に会話していた。
1週間前に話したナツとはまるで別人で、もしかして何か心変わりしたのかと思った。
それが勘違いだと気付くのに時間は要さなかったけれど。
15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:15:48.01 ID:Li1QhE+X0
「廊下で寝ましょうか」
「え、いいよ」
「私が怖いんでしょう」
16: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:32:17.41 ID:Li1QhE+X0
「そうやって、優しくない言葉ばっかり喋ってると、いつか自分に不幸として返ってくるんだからね」
人差し指を彼女の鼻先に突き立てる。
ナツはそれを手で払いのけた。
17: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:47:05.79 ID:Li1QhE+X0
「それが生きることだと教えてくれた人はもうこの世にはいないので、それが真実なのかは不明です」
「それって、おばあちゃんとかおじいちゃんとか?」
「いいえ、生きることを教えてくれたのは、両親です。彼らからキスをもらったことなんてありませんでしたけれど。聞く前に、私が殺してしまいました」
18: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:55:52.09 ID:Li1QhE+X0
握手を求めているのが分かったけれど、私はその手を握り返すことはできなかった。
次の日、もうすぐ夏休みが終わるということをカレンダーを見て知った。
ただ、子どものいなくなったこの村に、再度学校を開くかどうかという所で大人たちがもめているようだった。
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