56: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:05:35.29 ID:zJUkddjZ0
サウザンドが踏み込みつつ蛇の処理をした、隙というにはあまりに小さな瞬間。ロレンシアはその隙間に強引に進み出た。
「阿呆がっ!!」
突きを終えて戻る皆殺朱と、前に進むロレンシアが平行の動きをとるや否や、サウザンドの一括と共に薙ぎ払いが襲いかかった。
57: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:10:34.35 ID:zJUkddjZ0
>>55
>>56
訂正
〇フィアンマ
×サウザンド
58: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:22:11.74 ID:zJUkddjZ0
ロレンシアはドアを蹴破るや否や、身に着けていた黒い外套を前へと投げ飛ばしていた。武器は無い。必要無い。この至近距離で、プレートメイルを身に着けた鈍重な相手に必要なのは剣では無い。
自ら投げた外套の下をくぐるように行われた低空のタックル。重い甲冑を身に着けた大男を一度倒した後、立ち上がるのを許すほど“何も無い”ロレンシアは甘くない。
二人の動きを横手から見ていたア―ソンはロレンシアの勝ちを確信し、残ったロレンシアをどう処理するか半ば考え始めていた。
59: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:22:44.75 ID:zJUkddjZ0
フィアンマは蛇を処理するにあたって、槍を直撃させずかすめる方法をとっていた。なぜなら床や壁をつたう蛇に直撃させれば、瞬刺殺の尋常ではない威力の余波が建物を傷め、自分にとって優位な戦場を失ってしまう可能性があったからだ。
だがそれを抜きにしても、“深緑”のア―ソン“血まみれの暴虐”フィアンマ、そして“何も無い”ロレンシアという規格外同士の戦いは、開始から一分に満たない間に建物へかつてない衝撃を与えていた。そして今、戦いの余波ではなくフィアンマとロレンシアが建物の破壊を目的として、そのあらん限りの力を床に放つ。
二人のいた周囲の床は、フィアンマが瞬刺殺を放つための踏み込みで特にダメージを受けていた場所でもあった。前後左右のみならず、天井からも含めて百を超える蛇がその身をくねらせ迫る中、軋む異音と共に二人は落下する。蛇たちも一点の穴に流れる水のように二人へ続くが、先ほどまでとは違い囲んでいるわけではなく、同じ方向から固まった状態での襲撃など二人にとって脅威ではなかった。
60: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:23:39.07 ID:zJUkddjZ0
フィアンマとア―ソンの武名や悪評は、残酷さや血生臭さ、そして嫌悪と恐怖無しには語れないものだった。
対してロレンシアのそれは二人のそれとは趣が異なり、不可解な不穏さを感じずにはいられないものであった。
トロイメライ城消失事件の主犯にして、嘆きの谷を血染めの滝に変えし者、三度にわたる幻影の騎士の殺害。調べれば調べるほど謎が増える事件に関わっていることが一度や二度ではないのだ。
61: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:24:17.12 ID:zJUkddjZ0
「ひっ……」
逃げようにも恐怖で体が固まってしまって動けずにいた住民の一人が、再開する戦いの前兆として膨れ上がる殺気と狂気に引きつった声をあげてしまう。
そして、その声にア―ソンが反応してしまった。
62: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:24:50.28 ID:zJUkddjZ0
「ハイヤアアアアアァツッ!!」
雄たけびと共にフィアンマが駆ける。身長一九〇超、体重一〇〇超の男が三〇キロ近いプレートメイルを身に着けて爆走するその姿は、純粋な脅威に他ならない。
ロレンシアは槍を手放しつつ後ろへと飛び下がるが、目を疑う追撃が待っていた。
63: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:25:21.55 ID:zJUkddjZ0
「……クキ、キカカカカッ」
最初は呆気にとられていたア―ソンだが、やがて例の甲高いのにくぐもった耳障りな嗤いを立てる。
「サ、流石“何モ無イ”ロレンシア……ッ! ダガ、終ワリダ! 私ノ蛇ハ……優シサモ甘サモ無イ! ホンノ少シノ毒デモ、十分ダ! オマエハ即死ジャナイダケ……ダ!!」
64: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:25:53.30 ID:zJUkddjZ0
馬鹿げた行いに目を剥く。毒の中に身をさらしての奇襲など、完全に想定外だった。既にその体は毒に侵されていたが、あくまでそれは少量。助かる可能性はわずかだがあった。その可能性を奇襲の機会を見つけるや否や投げ捨てるなど、人間の発想ではない。
フィアンマは槍で近づいてくる蛇を処理しながら、投てきはガントレットで弾く算段していた。完全に意表を突かれたフィアンマには、毒の霧を隠れ蓑に接近したロレンシアへの打つ手が無かった。何をしでかすかわからない相手だと、わかっていたにも関わらず。
ロレンシアは猫科の獣のようにその身を宙に躍らせながら、ナイフをフィアンマの喉元へと奔らせる。ナイフは兜とプレートメイルの隙間をかいくぐり、下に着けていたクロスアーマーを貫いた。
65: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:26:42.48 ID:zJUkddjZ0
身をひねりながら着地したロレンシアは、血を振りまきながらア―ソンへと駆ける。その左腕の傷口が変色し始めていることを筆頭に、どこをどう見ても限界間近だった。ここを乗り切れば、驚異的な再生能力を持つア―ソンの勝ちとなる。
逃げるという選択肢が一瞬ア―ソンの頭をよぎった。ここを耐え切れさえすれば勝てるのだから、無様でも両腕を盾に身を丸め、攻撃に耐えながらフィアンマに吹き飛ばされた蛇たちを呼び寄せる。蛇たちがロレンシアに群がり攻撃の手が緩んだところで、槍を引きずりながらでも逃げればいい。
だが逃げるという選択肢を選ぶには、あまりにロレンシアはボロボロだった。手に持つのはナイフだけだった。たとえ胸に大穴が開いている状態でも、今のロレンシアが自分を殺し切れるとは思えなかった。村の中で嫌われ続けてプライドなどたいして持っていなかったが、自分より不利な相手から逃げ出す経験は一度も無かった。ほんの少し残っていたプライドが逃げるという選択肢を除外する。それよりも、最後のチャンスにかけるロレンシアを真っ向から捩じりふせ、貪ってみたかった。
83Res/189.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20