過去ログ - 真「二人の幸せのために」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:21:47.67 ID:n3AMBxtn0

「――ごめん……。ボクの“好き”と雪歩の“好き”はやっぱり違うみたいだ。今更こんな事を言うなんて、ボクは酷いやつだよね……。…………別れよう、雪歩。」

「…………冗談……だよね……?」

そう言って笑おうとする雪歩の顔はひどく引き攣っていて、今にも泣き出しそうに見えた。

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:24:21.14 ID:n3AMBxtn0

冬も間近、公園には風が強く吹いていた。まだ夕刻で明るさも幾分か残っていたけど、付近には誰もいない。足元を落ち葉がカラカラと小気味よい音を立てながら転がっていった。

ボクらのすぐ側にある噴水はその働きを止めていて、落ち葉を浮かべた水面は少し濁っていた。
春頃に訪れた時には綺麗な放物線を描いて水が噴出していた事を思い出す。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:27:21.39 ID:n3AMBxtn0

――半年程前――

765プロオールスターでの新春ライブが無事に成功し事務所で打ち上げをしている途中、「二人だけになれる場所で話がしたいの。」と雪歩がこっそりと耳打ちしてきた。なにやら重要な話があるらしい。
もう時刻が時刻なので明日ではダメなのか尋ねてみたが、どうしても今日話したいとのことだった。その真剣な表情にボクは頷き、打ち上げ後に近くの公園で落ち合う約束をした。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:29:38.16 ID:n3AMBxtn0

公園の入り口に着くと奥の方に人影が見えた。
夜中に公園に来るのは初めてだったから知らなかったけど、公園には公園灯がたくさん設置されていて思いの外明るい。
規則正しく並ぶオレンジの光の間を縫って人影に駆け寄る。そこにいたのは、やっぱり雪歩だった。

以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:32:14.72 ID:n3AMBxtn0

静まり返った公園にはサァー……という水音だけが聞こえ、ふと雪歩から視線を外すと雪歩の後ろに噴水があるのが見えた。
噴水から出た水が放物線を描き、月明かりを反射して煌いている。ボクはしばしその光景に見蕩れていた。

「あ、あのね……。」
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:34:27.82 ID:n3AMBxtn0

顔を真っ赤にして目を瞑りながらそう言う雪歩を、ボクは少しの間ポカンとした顔で見つめていた。雪歩は目をギュッと閉じたまま、産まれたての小鹿みたいにフルフルと震えている。

(勿論ボクも好きだよ。)という言葉を喉から出る直前に飲み込んだ。雪歩の“好き”はそういう“好き”じゃない……。それだけの事を言うのならこんな所まで呼び出さなくたっていいはずだ。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:36:27.70 ID:n3AMBxtn0

あまりにも驚いたせいで雪歩がボクの返答を待っている事をすっかり忘れていた。当の雪歩はいつの間にか目を開いていて、今にも涙が溢れそうな瞳でボクの顔を不安げに見つめている。

雪歩が不安がってる。何か喋らなくちゃ。

以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:38:56.45 ID:n3AMBxtn0

「あのね、まず、真ちゃんは私が事務所に入ったばかりで今よりもっとダメダメだった時、私を励まして、『一緒に頑張ろう。』って言ってくれたよね。それがすごく嬉しかったの。
それからもずっと不安な時や苦しい時に真ちゃんが傍にいてくれたから、私、今まで頑張ってこれたんだと思う。本当に感謝してるの。それから、真ちゃんのカッコよさも勿論大好きだし、女の子らしくしようと頑張ってるところも好き。
普段は気丈に振舞ってるけど本当は繊細で傷付きやすいところも、全部全部大好き。それからそれから……

以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:40:08.80 ID:n3AMBxtn0

ふぅ、と一息ついて、「雪歩の気持ちはよく分かったよ…。じゃあ、ボクの気持ちを言うね。」と言葉を紡ぐ。

雪歩はボクの言葉の続きを固唾を飲んで待っている様だった。


10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:43:46.58 ID:n3AMBxtn0

正直、告白された今でもボクは雪歩の事をそういう目では見れていない。
でも、雪歩に告白されて素直に嬉しいと思った。告白されたのなんて生まれてはじめてだし。雪歩はとてもかわいい女の子で、性格も愛らしい。雪歩の言う“好き”とは少し違うけど、ボクも雪歩が好きなことには違いない。今は違っても、時間が経てばボクも雪歩を“好き”になれるはずだ。

それに――……。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:45:54.65 ID:n3AMBxtn0

雪歩は少しの間呆然とその手を見つめていたけど、ボクと同じように、でもおそるおそる右手を伸ばしてきて、ほとんど添えるような微かな力でボクの手を握った。

「本当に……?本当にいいの…?」

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12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:47:55.69 ID:n3AMBxtn0

すると雪歩はボクの手を離し、突然ボクの胸に飛び込んできた。

ボクの胸元に頭を預けて抱きついたまま泣き続ける雪歩になんて言葉をかければいいのかわからず、とりあえず雪歩の背中に手を回して軽く抱き返す。そのまま子供をあやすように、ぎこちないながらも雪歩の背中をポンポンと叩いてあげた。

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:50:21.09 ID:n3AMBxtn0

「私……真ちゃんが好きで……大好きで……。でも、その気持ちを真ちゃんに伝えたら嫌われる、気持ち悪がられるに決まってるって思ってずっと言えなくて……辛かった。」

「……うん。」

以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:55:03.18 ID:n3AMBxtn0


「雪歩」小さな声で呼びかける。


以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:57:23.77 ID:n3AMBxtn0

付き合い始めたボク達は全てが順調にいっている様に思えた。仕事も、私生活も。


雪歩はボクと両想いになれた事で何かが吹っ切れたらしく、あらゆる仕事を積極的にこなしていった。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 22:58:54.93 ID:n3AMBxtn0

私生活の面では、恋人が女の子だとデートの時にスキャンダルに気を使う必要がないので気が楽だった。
ボクと雪歩はデートの時に手を繋ぐ。こんな事が人前で大っぴらにできるのもボク達が女の子同士であるが故の特権だろう。

手を繋ぐだけなら友達の時にもしていたけど、ただの友達だった時とは手の繋ぎ方が変化していた。お互いの指を絡める繋ぎ方だ。恋人繋ぎって言うんだったかな?
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 23:00:41.16 ID:n3AMBxtn0

デートと言っても、付き合いたての頃は友達の時と同じような遊び方をしていた。ただ、手の繋ぎ方が変わったように、お互いの距離がぐんと近くなりスキンシップが多くなった。
雪歩はボクに触れられるとくすぐったそうに笑う。それがすごくかわいくて、恋人という関係の持つ力に驚いたりもした。

以前の雪歩の笑顔にはどこか陰りがあった。今考えれば、という程度の極わずかなものだけれど、今の雪歩の屈託の無い笑顔を見ていてそれに気付いた。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 23:02:19.43 ID:n3AMBxtn0


そして、付き合ってから数ヶ月して、恋人という関係だったらいつかは辿り着くであろう場所にボクらも行き着いた。
つまり、その……ボクと雪歩は体の関係を持った。

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 23:04:27.45 ID:n3AMBxtn0

その日――ボクの部屋で肩を並べてソファーに座り、ゆったりとオフを過ごしている時、雪歩が突然ボクにキスをしてきた。
それ自体は何も特別な事じゃない。二人きりの時にキスをするのはいつもの事だし、何の脈絡も無くしてくる事もままあった。キスをするのは嫌いじゃなかったからボクも自然にそれを受け入れていた。

ただ、いつもと違ったのは雪歩がボクの口の中に舌を侵入させてきた事だ。ボクはその感触に驚いて目を見開き咄嗟に頭を引こうとしたけど、いつの間にか雪歩の手に後頭部を抑えられていてそれは叶わなかった。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 23:06:59.37 ID:n3AMBxtn0

やっとの事で雪歩がボクを離してくれた時、ボクらは息も絶え絶えの有様だった。

「雪歩……どうしたの突然、こんな……。」荒い呼吸を整えながら、動揺する心のままボクは尋ねた。

以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/11(木) 23:11:06.46 ID:n3AMBxtn0

……ボクは今の関係で十分満足していた。それになんと言っても、女の子同士でそういう事をするっていうのがボクにはあまりピンとこなかった。
でも、雪歩がそれを望むのなら……。

ボクに告白してきた時の様に不安げな顔の雪歩。その表情を見たボクは、自分の考えをまとめきる前に承諾の言葉を口にしていた。
以下略



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