過去ログ - 後輩「それじゃ、本当にこれでお別れです」
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2012/04/24(火) 23:21:11.11 ID:qSbSwrSBo
「もうやめたくなりましたか?」
と後輩の声がした。咄嗟に反応できず彼女の顔を見返すと、ひどく不安そうな表情をしている。
最初に視界に入ったのは緑色のフェンスと、その向こうの道路、そこに舞う桜の花びらだった。
俺たちふたりは、どうやら一緒に昼食をとっていたらしい。
後輩の膝の上にはコンビニのレジ袋が置かれていて、彼女はその中からサンドウィッチを取り出しているところだった。
何の話をしていたのかは思い出せない。彼女の切羽詰まった表情を見るに、大事な話をしていたのかもしれない。
俺は一瞬とまどったが、それでも思い出せないものは仕方がないと割り切り、適当にごまかすことを決めた。
「いや」
曖昧に返事をすると、後輩は眉間に皺を寄せる。怒るというよりは訝るような仕草だ。何かしくじったのかと考えたが、それならそれで構わない。
適当にごまかしておけば、大抵のことは問題にならない。要するに、どれだけ上手にごまかすかが問題なのだ。
いつでもどこでも、変わらない。
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2012/04/24(火) 23:21:47.82 ID:qSbSwrSBo
彼女は諦めたように視線を落とし、サンドウィッチを口に運ぶ。
その様子を横目で警戒しながら、俺は周囲をうかがった。
場所はおそらく、うちの学校の体育館裏だろう。大きな切り株があって、俺と後輩はそれを椅子代わりにしていた。
以下略
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2012/04/24(火) 23:22:15.46 ID:qSbSwrSBo
今度は春か、と俺は思った。さっきまでは夏だった。……いや、九月だったから、秋だろうか? 夏休みが終わった直後だから、まだ夏かもしれない。
まぁ、九月が夏だろうと秋だろうと、どちらでもかまわない。いずれにせよ、ついさっきまでは九月だったことには変わりない。
ここ最近――六月の半ば過ぎから九月上旬まで――の俺には、こういうことがよくあった。
以下略
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2012/04/24(火) 23:22:53.10 ID:qSbSwrSBo
ただの白昼夢であると考えるのがいちばん自然だが、それはそれで困ったことになる。
俺の中には、
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5
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[sage saga]
2012/04/24(火) 23:23:24.39 ID:qSbSwrSBo
世の中に不思議なことはありふれているが、それも話で聞くのと自分の身に降りかかるのでは話がまったく違う。
最初は何が起こっているのかと不安に思ったものだが、何度も繰り返しているうちに慣れてきた。
より正確に言えば、気付いたのだ。この"ズレ"が何かをもたらすものではないということに。
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6
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2012/04/24(火) 23:24:07.38 ID:qSbSwrSBo
不意に、隣に座る後輩が顔を上げた。俺は面食らってのけぞる。
彼女は懇願するような表情で、「大丈夫ですよ」と言った。
「忘れないでください」
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2012/04/24(火) 23:24:41.64 ID:qSbSwrSBo
◇
もし「校内でいちばん指が綺麗な男子は」と問われたなら、迷わず「トンボだ」と答える。
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2012/04/24(火) 23:25:11.63 ID:qSbSwrSBo
俺とトンボは同じ部活に所属している。小学校の頃からずっと一緒のクラスだ。
そういう面だけ見れば、トンボと俺はかなり長い付き合いになる。だが、あくまでそれは表面上の話だ。
毎日のように顔を合わせているにも関わらず、俺は彼と三回しか話をしたことがない。
以下略
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2012/04/24(火) 23:25:47.20 ID:qSbSwrSBo
お前がこんな部に入るなんて意外だと言うと、今度は自然な微笑を浮かべ、
「そっちは別に意外じゃないね」
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2012/04/24(火) 23:26:14.50 ID:qSbSwrSBo
「意外だ」と口に出すと、彼は照れくさそうに笑って、「そうでもないだろ」と言った。
たしかに、そうでもない。
子供時代から品行方正だったトンボの本心を、俺は以前からかなり疑わしく思っていた。
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11
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[sage saga]
2012/04/24(火) 23:27:10.82 ID:qSbSwrSBo
「なにが?」
「自分が」
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2012/04/24(火) 23:27:47.96 ID:qSbSwrSBo
◇
トンボは「ときどきは休みたかった」と言った。「そっちと一緒だよ」とも言った。
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2012/04/24(火) 23:28:35.06 ID:qSbSwrSBo
ただぼんやりと過ごす。これはなかなかの苦行だ。
他の人間は、熱心に部活動に打ち込んだり、勉強に励んだり、あるいは友人関係や恋愛に夢中になったりしている。
そんな有意義な時間の過ごし方を外側からぼんやりと見ていると、強い不安や焦燥に駆られる。
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2012/04/24(火) 23:30:43.58 ID:qSbSwrSBo
◇
俺は校舎の屋上に寝転がっていた。太陽が燦々と輝き、空は青く、遥かまで澄んでいる。
以下略
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2012/04/24(火) 23:31:32.91 ID:qSbSwrSBo
ここにいる限り、俺はずっとひとりきりだ。孤独というものはある種の安心を伴う。
闖入者がいるとすれば――おそらくは、鳥か虫か。あるいは、もっと別な何かだけだろう。
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2012/04/24(火) 23:33:17.06 ID:qSbSwrSBo
それでも俺は、スズメに対して可能なかぎり正直であることを心掛けている。
なぜだったかは忘れてしまった。……近頃はずっとこうだ。自分がいつから屋上にいるのかさえ判然としない。分からないことが多すぎる。
俺は立ち上がって、制服を叩いて埃を落とした。
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2012/04/24(火) 23:33:46.78 ID:qSbSwrSBo
◇
「例の噂、聞いてない奴はいるか?」
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2012/04/24(火) 23:34:25.64 ID:qSbSwrSBo
ハカセは呆れたような溜め息をついた。
「シラノ、お前、友達いないのか」
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2012/04/24(火) 23:35:34.18 ID:qSbSwrSBo
「失礼な」
彼女はハカセの言葉に眉をひそめた。
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2012/04/24(火) 23:36:01.14 ID:qSbSwrSBo
彼女の言ったことは半分くらいは本当だ。
たしかに彼女は、教室では二人の女子としか会話しない。けれどそれは浮いているわけではなく、敬遠されているのだ。
学年の中でも断トツの容姿を誇るシラノとその友人ふたりは、女子の中でどう扱われているかはしらないが、男子の中ではかなりの人気者だ。
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2012/04/24(火) 23:37:11.25 ID:qSbSwrSBo
「お前ら、もうちょっと社交的になれよ」
「わたしはいつでも社交的なつもりですよ。誰でも話しかけてくださいって感じです」
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