過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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2012/09/10(月) 22:06:52.48 ID:f2pJeNOlo
けれど、そうしなければ前に進めないという場合がある。何らかの新しい展開を望むとき、痛みが不可欠な場合は往々にして存在する。
あるいは、痛みや不愉快に耐えた先で得たものがまったくの徒労だったという場合もあるだろう。
それならそれでかまわない。つまり本当のところ、この文章を書くことで僕が得たい結果とは、展開ではなくて納得なのだろう。
これを記すことは、僕にとっては単なる記録で、整理でしかない。
以下略
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2012/09/10(月) 22:07:19.79 ID:f2pJeNOlo
◇一
彼女がいなくなったのは、七月二十六日のことだった。
以下略
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2012/09/10(月) 22:07:46.33 ID:f2pJeNOlo
彼女は怒らなかったし、僕を説得しようともしなかった。
どちらにしても彼女の態度は同じだったし、そうである以上僕の返事も同じだった。
じっさい、彼女の語るあれこれよりもよほど切実な問題が、現実には山ほどあるように、僕には思えた。
以下略
5
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2012/09/10(月) 22:08:15.64 ID:f2pJeNOlo
「遠くにいきたいな」
と、ときどき彼女はそんなことを言った。
以下略
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(チベット自治区)
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2012/09/10(月) 22:08:37.42 ID:2XJa1cavo
きもちわるい
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2012/09/10(月) 22:08:50.18 ID:f2pJeNOlo
三週間後の土曜日、彼女がひとりで暮らしていたアパートの部屋を、彼女の叔父が訪れた。
部屋の中は整然としていた。生きる為に必要なもの、便利なものはあっても、それ以上の余分なものはなにひとつなかった。
部屋にあったのは無愛想な机と最低限の筆記用具、それから低めのテーブル、小さめの冷蔵庫だけだった。
以下略
8
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2012/09/10(月) 22:09:24.54 ID:f2pJeNOlo
◇
これは携帯電話についての話ということになる。
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2012/09/10(月) 22:10:07.91 ID:f2pJeNOlo
◇二
ドアがあった。数は数えきれない。その部屋には無意味な壁があり、無意味な扉があり、無意味な窓があった。
以下略
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2012/09/10(月) 22:10:34.55 ID:f2pJeNOlo
敷地の全容は中で働いているものにしか分からない。外側からは把握できないほど広いのだ。
ショールームは門のすぐ傍にあり、こちらは一般にも開放されていた。
僕は夏休みで暇を持て余した小学生の姪を連れて、近所の自宅からこの工場へと歩いて向かった。
以下略
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2012/09/10(月) 22:11:02.93 ID:f2pJeNOlo
ヒーローショーに間に合うような時間に出発したものの、それを楽しむのが目的ではなかった。
むしろ、目的なんてなかったと言ってもいい。姪は今年十歳になる。僕とは七歳離れていた。
十歳ともなれば、ヒーローショーを無邪気に楽しむ、とはいかない。しかもその日のショーは男児向け。
以下略
12
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2012/09/10(月) 22:11:29.42 ID:f2pJeNOlo
でも実際にはこんなものだ。たまの休みに一緒に出掛けるでもなく、弟に世話を押し付けて自分は服を買いに出かけている。
それを不満に思わないと言ったら嘘になる。でも、姪と遊びに出かけるのが不愉快というわけじゃなかった。
姪は、母親が反面教師になったのだろう、子供の割に落ち着いていてしっかりしている。
以下略
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