過去ログ - 杏子「ホグワーツ?」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)
2012/09/28(金) 09:36:43.73 ID:egDxkjz6o
ヒョロリと背が高く、髪やひげの白さからみて相当の年寄りだ。髪もひげもあまりに長いので、ベルトに挟み込んでる。淡いブルーの眼が、半月形のメガネの奥でキラキラ輝き、高い鼻が少なくとも二回は折れたように曲がっている。濃紫のビロードの、はでなかっとの背広を着た姿が、大勢の物珍しげな人の目を集めていた。アルバス・ダンブルドアだ。鉄の門を通り、殺風景な中庭に入った。その奥に、高い鉄柵に囲まれたかなり陰気な四角い建物がある。ダンブルドアは石段を数段上り、正面のドアを一回ノックした。しばらくして、赤髪赤目のやせたエプロンをかけた女性がドアを開けた。
「こんにちは。ミセス・コールとお約束があります。こちらの院長でいらっしゃいますな?」ダンブルドアが目を細めながら言った。
「ああ」ダンブルドアの目を覗き込みながら、女性が言った。
「ああ……ついに……お待ちください……ミセス・コール」女性が振り向いて、静かな、しかし力のある声で呼んだ。
 遠くのほうで何か大声で答える声が聞こえた。女性はダンブルドアに向き直った。
以下略



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2012/09/28(金) 09:37:58.04 ID:egDxkjz6o
 ダンブルドアは白黒タイルが貼ってある玄関ホールに入った。全体にみずぼらしいところだったが、染み一つなく清潔だった。背後の玄関ドアがまだ閉まりきらないうちに、痩せた女性が、煩わしいことが多すぎるという表情でせかせかと近づいてきた。とげとげしい顔つきは、不親切というより心配事の多い顔だった。ダンブルドアのほうに近づきながら、振り返って、エプロンをかけた別のヘルパーに何か話している。
「……それから上にいるマーサにヨードチンキを持って行っておあげ。ビリー・スタッブズは瘡蓋をいじっているし、エリック・ホエイリーはシーツが膿だらけで――もう手一杯なのに、こんどは水疱瘡だわ」
 女性は誰に言うこともなくしゃべりながら、ダンブルドアに目を留めた。とたんに、たったいまキリンが玄関から入ってきたかのを見たように、唖然として、女性はその場に釘づけになった。
「こんにちは」
 ダンブルドアが手を差し出した。ミセス・コールはポカンと口を開けただけだった。
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2012/09/28(金) 09:38:49.27 ID:egDxkjz6o
「ここにお伺いしましたのは、お手紙にも書きましたように、佐倉杏子について、将来のことを相談するためです」ダンブルドアが言った。
「ご家族の方で?」ミセス・コールが聞いた。
「いいえ私は教師です」ダンブルドアが言った。
「私の学校に杏子を入学させるお話で参りました」
「では、どんな学校ですの?」
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2012/09/28(金) 09:39:56.15 ID:egDxkjz6o
 ジンにかけてはミセス・コールが初ではないことが、たちまち明らかになった。二つのグラスにたっぷりとジンを注ぎ、自分の分を一気に飲み干した。あけすけに唇を舐めながら、ミセス・コールは初めてダンブルドアに笑顔を見せた。その機会を逃すダンブルドアではなかった。
「杏子はどんな子ですか?」
「おかしな女の子ですよ」
「ええ」ダンブルドアが言った。「そうではないかと思いました」
「赤ん坊のときもおかしかったんですよ。そりゃ、あなた、ほとんど泣かないんですから。そして、少し大きくなると、あの子は……変でねえ」
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2012/09/28(金) 09:41:02.46 ID:egDxkjz6o
 ミセス・コールは事務所を出、石の階段へとダンブルドアを案内し、通りすがりにヘルパーや子どもたちに指示を出したり、叱ったりした。孤児たちは、みんな同じ灰色のチュニックを着ていた。まあまあ世話が行き届いているように見えたが、子どもたちが育つ場所としては、ここが暗いところであるのは否定できなかった。
「ここです」
 ミセス・コールは、二階の踊り場を曲がり、長い廊下の最初のドアの前で止まった。ドアを二度ノックして、彼女は部屋に入った。
「杏子? お客様ですよ。こちらはダンバートンさん――失礼、ダンダーボアさん。この方はあなたに――まあご本人からお話していただきましょう」
 ダンブルドアが部屋に入ると、ミセス・コールがその背後でドアを閉めた。殺風景な小さな部屋で、古い洋箪笥、木製の椅子一脚、鉄製の簡易ベッドしかない。
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:42:09.81 ID:egDxkjz6o
「はじめまして杏子」
 ダンブルドアが近づいて、手を差し出した。
 少女はその手を取らなかった。ダンブルドアは、固い木の椅子を杏子の傍らに引き寄せて座り、二人は病院の患者と見舞い客のような格好になった。
「わしはダンブルドア校長じゃ」
「『校長』?」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:42:52.64 ID:egDxkjz6o
「きみに言ったとおりだよ私はダンブルドア校長でホグワーツという学校の校長だ。私の学校への入学を勧めにきたのじゃが――きみが来たいのなら、そこがきみの新しい学校になる」
 この言葉に対する杏子の反応は、まったく驚くべきものだった。ベットから飛び降り、憤激した顔でダンブルドアから遠ざかった。
「騙されねえぞ!精神病院だろう。そこから来たんだろう?『校長』、ああ、そうだろうさ――ハン、アタシは行かないぞ、わかったか?」
「わしは精神病院から来たのではない」ダンブルドアは辛抱強く言った。
「私は校長先生じゃよ。おとなしく座ってくれれば、ホグワーツのことを話して聞かせよう。もちろん、きみが学校にきたくないというなら、誰も無理強いはしない――」
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:43:37.83 ID:egDxkjz6o
「その通り」ダンブルドアが言った。
「じゃ……じゃ、アタシができるのは魔法?」
「きみはどういができるのかね?」
「アタシの言葉には不思議な力がある。アタシが本気で命令したら逆らえない」
 杏子は震える声で言った。首から頬えと、たちまち興奮の色が上ってきた。熱があるかのように見えた。ダンブルドアは眼を見張った。
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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:44:29.41 ID:egDxkjz6o
「きみに異存は無いだろうと思うが、もし、ホグワーツへの入学を受け入れるつもりなら――」
「もちろんだ!」
「それなら、わしを『先生』と呼びなさい。『命令』も禁止じゃ」
 杏子の表情が硬くなった。それから、がらりと人が変わったように丁寧な声で言った。
「すみません、先生。先生には『命令』できないみたいですね。それから、どうぞ、アタシに見せていただけませんか――?」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:45:12.20 ID:egDxkjz6o
「ホグワーツでは」
 ダンブルドアは言葉を続けた。
「魔法を使うことを教えるだけでなく、それを制御することも教える。きみは我々の学校では教えることも許すこともないやり方で、自分の力を使ってきた。魔法力に溺れてしまうものは、きみが初めてでもないし最後でもない。しかし、覚えておきなさい。ホグワーツでは生徒を退学させることができるし、魔法省は――そう、魔法省というものがあるのじゃ――法を破る者をもっとも厳しく罰する。新たに魔法使いとなる者は、魔法界に入るにあたって、我らの法律に従うことを受け入れねばならない」
「はい、先生」杏子がまた言った。
 杏子は盗品を出し終わると、ダンブルドアを見て、素っ気なく言った。
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/09/28(金) 09:46:05.80 ID:egDxkjz6o
 ダンブルドアは教材リストの入った封筒を杏子に渡し、孤児院から「漏れ鍋」への行き方をはっきり教えた後、こう言った。
「周りのマグル――魔法族ではない者のことじゃが――その者たちには見えなくとも、きみには見えるはずだ。バーテンのトムを訪ねなさい」
「わかりました」
 杏子が呟いた。それから、抑えきれない疑問が思わず口を衝いて出たように、杏子が聞いた。
「アタシの父さんと母さんは魔法使いだったのか?」
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