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2013/03/23(土) 21:07:19.52 ID:sFFUNv8Z0
タクシーを捕まえて向かった先は、地元の自治会館だった。
既に事務所の車が駐車場に停められている。
ちょうど、あずさとやよいの出番が始まる時間であった。
受付を済ませ、美希の手を引き、律子は庁舎内の2階にある大会議室へと向かった。
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2013/03/23(土) 21:09:34.02 ID:sFFUNv8Z0
「あふぅ。この人に連れられたから来ただけなの」
それはそうなんだけど―――。
何か言い返したくなるのを我慢して、律子は美希にライブの感想を聞いてみた。
「うーん、ちょっと想像してたのと違うってカンジかな」
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2013/03/23(土) 21:11:46.73 ID:sFFUNv8Z0
プロデューサーから半ば強引に事務所の車の鍵を受け取り、律子は第二京浜を北へ向かった。
五反田駅を過ぎ、品川にある衆議院の議員宿舎へ向かうよう交差点を右折すれば、通り沿いに765プロ御用達のレッスンスタジオがある。
およそ10分ほど車を走らせ、ダンスレッスンが行われている部屋の扉を開けると、春香と雪歩、真が休憩しているところだった。
真の姿を見て、律子はしめたと思った。
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2013/03/23(土) 21:14:01.79 ID:sFFUNv8Z0
「ダンスの練習風景をこの子に見せてあげたいの。一度、通しでやってみせてちょうだい」
律子の目線は、真と美希の方へ交互に向けられていた。
三人は元気良く返事をすると、音源をセットし、配置についた。
「真を良く見ていなさい。あの黒いタンクトップの子」
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2013/03/23(土) 21:15:58.07 ID:sFFUNv8Z0
少したどたどしくはあるが、美希は一度見たダンスの振り付けの前半部分を、ほぼ間違えることなく踊ってみせた。
765プロ関係者以外の誰かに披露したのは、今回美希が初めてのダンスである。
「えっ!? す、すごい! 今の見ただけでもう覚えちゃったの?」
春香は動揺を隠せなかった。
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2013/03/23(土) 21:17:39.09 ID:sFFUNv8Z0
しばし呆然としていたが、すぐに我に返り、律子は美希を素直に賞賛した。
「まさか私の方が驚かされるなんてね」
美希は、もう動きたくないと言った様子でその場に座り込みながら、めんどくさそうに律子の顔を見た。
「アイドルって、大変だね」
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2013/03/23(土) 21:20:02.18 ID:sFFUNv8Z0
扉を開けると、千早はコーチと共に熱心に発声練習を行っていた。
来室にしばらく気づいていない様子だったが、コーチが律子達に挨拶すると、ようやく千早も向き直り丁寧にお辞儀をした。
「お疲れ様です、秋月さん」
「律子で良いと言っているでしょう? 敬語とかも、別に気を使わなくていいわよ」
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2013/03/23(土) 21:23:03.52 ID:sFFUNv8Z0
『蒼い鳥』は、まさしく千早のためにある曲だと律子は感じていた。
十分な声量に加え、ビブラートを利かせた伸びのある千早の歌声は、765プロでも随一である。
それに加え、どことなく悲壮感を漂わせるこの曲は、時折影を見せる千早のイメージにも合っており、ある種の完成形に達しているとさえ思った。
通しで歌い終えて、千早は少し首を捻っていた。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:25:21.04 ID:sFFUNv8Z0
何となく予感はしていたが、すぐに律子のそれは的中した。
美希は、ボーカル面でも抜群の歌唱力を見せた。
声の質も歌い方も、聞いている人を楽しませ、高揚させる不思議な華がある。
先ほどのダンスも、練習こそ十分でないためにたどたどしかったが、もし十分な練習期間を設けて磨き上げたダンスに、この歌唱力が合わされば――!
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:27:42.17 ID:sFFUNv8Z0
【2】
突然、律子がレッスン室に連れてきた少女を見て、雪歩の心臓は大きく高鳴った。
星井美希と名乗るその少女は、つい先日、電車の中で雪歩達を助けた子であった。
二日ぶりの再会でも、彼女の姿は雪歩の瞳の奥にまぶしく映った。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:29:45.87 ID:sFFUNv8Z0
千早の様子も見に行くと言って、律子達が部屋を出てからも、残った三人は美希という少女の話題で持ちきりになった。
「雪歩は、あのダンスを通しで踊れるようになるまでどれくらいかかった?」
春香にそう聞かれ、雪歩は頭の中のカレンダーを一枚ずつめくり直してみた。
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