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2013/03/23(土) 21:15:58.07 ID:sFFUNv8Z0
少したどたどしくはあるが、美希は一度見たダンスの振り付けの前半部分を、ほぼ間違えることなく踊ってみせた。
765プロ関係者以外の誰かに披露したのは、今回美希が初めてのダンスである。
「えっ!? す、すごい! 今の見ただけでもう覚えちゃったの?」
春香は動揺を隠せなかった。
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2013/03/23(土) 21:17:39.09 ID:sFFUNv8Z0
しばし呆然としていたが、すぐに我に返り、律子は美希を素直に賞賛した。
「まさか私の方が驚かされるなんてね」
美希は、もう動きたくないと言った様子でその場に座り込みながら、めんどくさそうに律子の顔を見た。
「アイドルって、大変だね」
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2013/03/23(土) 21:20:02.18 ID:sFFUNv8Z0
扉を開けると、千早はコーチと共に熱心に発声練習を行っていた。
来室にしばらく気づいていない様子だったが、コーチが律子達に挨拶すると、ようやく千早も向き直り丁寧にお辞儀をした。
「お疲れ様です、秋月さん」
「律子で良いと言っているでしょう? 敬語とかも、別に気を使わなくていいわよ」
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2013/03/23(土) 21:23:03.52 ID:sFFUNv8Z0
『蒼い鳥』は、まさしく千早のためにある曲だと律子は感じていた。
十分な声量に加え、ビブラートを利かせた伸びのある千早の歌声は、765プロでも随一である。
それに加え、どことなく悲壮感を漂わせるこの曲は、時折影を見せる千早のイメージにも合っており、ある種の完成形に達しているとさえ思った。
通しで歌い終えて、千早は少し首を捻っていた。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:25:21.04 ID:sFFUNv8Z0
何となく予感はしていたが、すぐに律子のそれは的中した。
美希は、ボーカル面でも抜群の歌唱力を見せた。
声の質も歌い方も、聞いている人を楽しませ、高揚させる不思議な華がある。
先ほどのダンスも、練習こそ十分でないためにたどたどしかったが、もし十分な練習期間を設けて磨き上げたダンスに、この歌唱力が合わされば――!
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2013/03/23(土) 21:27:42.17 ID:sFFUNv8Z0
【2】
突然、律子がレッスン室に連れてきた少女を見て、雪歩の心臓は大きく高鳴った。
星井美希と名乗るその少女は、つい先日、電車の中で雪歩達を助けた子であった。
二日ぶりの再会でも、彼女の姿は雪歩の瞳の奥にまぶしく映った。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:29:45.87 ID:sFFUNv8Z0
千早の様子も見に行くと言って、律子達が部屋を出てからも、残った三人は美希という少女の話題で持ちきりになった。
「雪歩は、あのダンスを通しで踊れるようになるまでどれくらいかかった?」
春香にそう聞かれ、雪歩は頭の中のカレンダーを一枚ずつめくり直してみた。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:32:18.68 ID:sFFUNv8Z0
翌日から、美希は事務所の話題の中心にいた。
水瀬伊織は、真と同様に美希に対してライバル意識を持った一人だった。
「ちょっと実力があるからって、まだ一花咲かせていないのはあんたも一緒なんだからね!」
ソファーに寝転がっている美希の前に立ち、ウサギのぬいぐるみを抱きながら人差し指を突きつけ、伊織はすごんで見せた。
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:34:36.98 ID:sFFUNv8Z0
雪歩は、美希と他のアイドル達とのやり取りを、少し離れた所から見ていた。
春香の焼いてきたクッキーを美味しそうにほおばり、あずさの胸に飛び込んで甘えた。
やよいが来れば逆に頭を撫でてあげたし、真が拳骨を突き出せばパーを出して見せた。
なぜ、嫌がる千早のお腹をさすっていたのかは分からないが。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:36:29.41 ID:sFFUNv8Z0
家の用事があるからと、先に帰ったやよい達を見送った後、プロデューサーも雪歩に練習を切り上げようか聞いた。
「いえ―――まだ全然、ダメダメだから、もう少しだけ残って練習しますぅ」
意外にも根性があるなと、プロデューサーは事ある毎に思っていた。
しかし、雪歩のそのメンタリティがどこからくるものなのか、彼には分からなかった。
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 21:37:59.68 ID:sFFUNv8Z0
一人残ったレッスン室で、雪歩は黙々と練習を続けた。
だが、どうしてもターンがうまくいかない。
時々、それらしく決まる時もあるが、どうしてなのか自分でも分からない。
何より、鏡に映る自分のダンスは、自分の目指す真のそれとは似ても似つかないものだった。
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