104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:26:14.72 ID:J60wAoTTo
堅苦しい口調で話すその男に、わたしはなんだか嫌な気持ちになった。
声に抑揚というものがないのだ。色というか、気配というか、そういうものがなかった。
生きている感じがしないのだ。下界の人間はみんなそうなのだろうか?
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:27:12.60 ID:J60wAoTTo
シラユキはしばらく黙りこんだようだったが、やがて諦めたように口を開いた。
「わかりました。ただ、少しの間待っていていただけませんか? 屋敷の中を少し片付けさせてください」
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2013/05/24(金) 06:28:19.06 ID:J60wAoTTo
わたしは通路を逆戻りし、玄関ホールから距離を取る。
シラユキとすぐ近くで言葉を交わすわけにはいかなかった。
わたしが厨房の付近まで移動したとき、シラユキは玄関ホールの方から姿を現した。
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:29:04.34 ID:J60wAoTTo
シラユキは困った顔をした。わたしも困った。
書庫だろうとどこだろうと、しっかりと探されれば見つかってしまう可能性は拭えない。
「そんなにしっかりとは確認しないと思うんです。どこか見つからないような場所なら……」
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:30:52.59 ID:J60wAoTTo
窓の外は雨が降っている。森の中に逃げ込めば隠れることはできなくはないが、傘は玄関にしかない。
何より、廊下の窓から見つかるかもしれなかった。
どこかの空き部屋のクローゼットやベッドの下は、いざというときに逃げることができない。
109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:31:51.19 ID:J60wAoTTo
シラユキは少し不安そうな顔をした。
でも、他のどこでも同じなのだ。彼女は最後に覚悟を決めたように頷いた。
「じゃあ、書斎の中に身を隠して、内側から鍵をかけてください。
110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:33:01.99 ID:J60wAoTTo
◇
書斎に行ってみて思ったのは、クローゼットには隠れられないということだった。
あまりに「あからさま」過ぎるのだ。
111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:33:36.61 ID:J60wAoTTo
さて、とわたしは思う。困った。手詰まりだ。
ためしに机の引き出しを開けてみる。たいしたものは入っていない。
簡単な文具や羊皮紙なんかが入っているだけだった。
112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:34:10.01 ID:J60wAoTTo
やっぱり書斎はだめだったんだ。見つかってしまう。見つかったらどうなるんだろう?
わたしはシラユキの表情を思い出した。あの悲しそうな顔。
彼女はわたしに猶予を与えようとして、静かに書斎の鍵を開けようとしている。
113:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:37:08.84 ID:J60wAoTTo
思わず声をあげかけて、口元を押さえる。
「早くしろ。見つかりたいのか」
114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/24(金) 06:37:39.88 ID:J60wAoTTo
「喋るなよ」
とその人は小声で言った。
かちり、という音がして、辺りが微かに明るくなる。
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