1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 20:40:10.45 ID:sOwD8WLk0
地元から少し離れたこの男子校で部活に入るつもりはなかった。
中学時代からの同級生である木下(きのした)や八重樫(やえがし)と会う機会が少なくなってしまうだろうし、中学で所属していた美術部では幽霊部員としての活動しか行っていなかったから才能など欠片も無い。
にも関わらず、高城一砂(たかしろかずな)は誰とも遊ぶ約束をすることなく帰路を辿っている。
あの二人と会う約束が取れなかったからだ。
約束が取れないというよりも、どこか距離を置かれている気がしてならない。
「思ったんだけどさ……なんで二人とも私服なの?」
三人は学校を終えて集まった時、制服姿であるのは自分だけだった。木下と八重樫は同じ高校で、私服制の学校ではない。
気になって尋ねたところ「別にいいじゃん。気にするなよ」としか返ってこなかった。それから何度か放課後に遊んだがやはり二人は私服である。
一砂は何かに違和感を覚え、再度問いただした……それ以来「暫く予定が空かないんだ。ごめん」と告げられ、会うことが出来ていないのだ。
「どうすっかな……」
一砂は思った言葉を地面に吐いた。
電車に乗って地元方面へ買えることが順当かもしれないが、やるせなさが足取りをふらつかせている。
こんなことなら部活に入っておけば良かったのかもしれないと、思考までもが頼りない。
ポケットに手を突っ込み財布に幾らか入っていることを確認した。このまま帰る気にはどうしてもなれないので、喫茶店で暇を潰そうと思い立つ。
宛てもなく歩いていたせいか、いつもとは違う道を歩いていたことに、今までは鼻につくことがなかったビターな香りで気づく。
「Milk Hall(ミルクホール)……ここでいいか」
ノスタルジックを感じさせる入り口が何となく気に入ったということもある。珈琲で時間を潰せればそれで問題はないが。
ドアを開けようとしたその時、ふと目に入ったものは、手書きで書かれた【バイト募集】のマジックボードだった。
「……」
入店を一旦取り止め、一砂は少し考える。
やりたい部活があるわけでもないし、シフトに多少の余裕があるのなら……バイトをしてみるというのも、一つの手ではないかと。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 21:09:30.85 ID:sOwD8WLk0
「さぁさ、飲みなよ!!」
ドアの鈴を鳴らしてすぐに「ここで働いてみたいのですが」と、伝えたところ、ウェイトレス姿の女の子は元気よく珈琲を出してきた。注文したわけでもないのだが。
「すいません。いただきます」
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/14(日) 21:26:52.23 ID:B3GGbEtJ0
えらく懐かしいのきましたね、同じ作者のイエスタディをうたってとのクロスですか。続き楽しみです
羊のうたは1巻ラストの千砂の台詞「あきらめて…… こっちに来なさい ………こっちに来て…… 一砂……」ってのが無茶苦茶ぞくぞくした覚えがあります
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/14(日) 21:29:06.10 ID:4bhpI0q40
懐かしい〜千砂さんの儚さと強さに憧れたな〜期待!
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 21:33:21.09 ID:sOwD8WLk0
ゆっくり投下します。
冒頭でハルちゃん登場してますが、イエスタディとクロスってわけじゃないかも。
羊色が濃い内容になります。あと千砂出てきます。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 22:10:48.43 ID:sOwD8WLk0
「本当にいいんですか?」
「試作品だから味見役だもん。お金は取らないよ〜」
グリーンサラダパンと命名された緑色がかった食べ物を、一砂は表情を殺して飲み込んだ。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/14(日) 23:02:26.85 ID:sOwD8WLk0
18:00時目前になり、少しずつ客足が増えてきた。
ハルはいそいそと動き回りながらも、時折一砂へジト目を送る。
「……」
8: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/14(日) 23:07:43.11 ID:sOwD8WLk0
今日はこんなもんで
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/15(月) 01:43:51.48 ID:rd2aS5w90
明日も楽しみにしてます!
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/15(月) 11:53:53.90 ID:/2LtBB570
すごいのきちゃった!期待!
11: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 18:55:18.25 ID:uzaH7YtN0
「そろそろ一週間だけど、ちょっとは慣れたようだねぇ」
「んー……慣れたんですかね?」
12: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 20:23:15.74 ID:uzaH7YtN0
「わざわざすいません……」
「いや、構わないよ。今日は定時だからね」
恐縮して話す女の子に、水無瀬は疲れ気味に答えた。
13: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 20:49:15.55 ID:uzaH7YtN0
「核心を知ってしまうと、記憶は戻るのでしょうか」
「僕は脳医学を専攻していたわけじゃないが、可能性は高いと見ていいだろう。記憶だけが戻るか、それともあの奇病だけが発するか……もしくは、両方か」
14: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 22:27:49.96 ID:uzaH7YtN0
「正直、私はこれ以上関わりたくないんだ」
水無瀬は頭を抱え、心中を口にする。
「……ごめんなさい」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/15(月) 22:28:24.93 ID:uzaH7YtN0
てか八重樫からの呼称は「高城君」だったな・・・しくった
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/15(月) 23:06:29.06 ID:68vJABJDO
面白いけど、もう少し地の文に改行(一行余白をあけて)してくれると読みやすいかな
17: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 23:14:27.05 ID:uzaH7YtN0
「僕はそろそろお暇しよう……八重樫君はゆっくりしていきなさい」
数枚のお札と気遣いの言葉を置いて席を立つ。
それは流石に申し訳ないと八重樫は返却を試みたが、水無瀬は耳を貸さずに鈴を鳴らした。
本人からすれば、これ以上の関わりを断つための駄賃だったのかもしれない。
18: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/15(月) 23:18:16.66 ID:uzaH7YtN0
>>16
すまん。これでも空けてるほうなんだ。
小説書いてる身だからこれ以上空けるのは怖いです……変に癖付きそうで。
19: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/16(火) 00:20:24.88 ID:OPYTK7tZ0
「ふぅ〜、最後お客さん多かったね」
「でしたね……あんだけ多いと、俺捌けませんよ」
慣れない身で今日の人数はキツイと、一砂は疲れを顔に出す。
20: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/16(火) 00:57:40.88 ID:OPYTK7tZ0
「落ち着いた?」
「はい……」
自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、二人は地べたに座り話す。
21: ◆wPpbvtoDhE
2013/07/16(火) 00:58:12.45 ID:OPYTK7tZ0
今日はこんなもんで
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