過去ログ - オリジナル小説【現代ファンタジー】
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49:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:16:15.26 ID:FkLb1xlW0
マートも、やや回復してきている。
痛みをごまかしてその身を起こし、少し遅れて竜の後をつける。
その先では、彼女にとって予想外の事態が起こっていた。
竜が結界を猛り狂って叩いている。
それ自体は、合成獣がたまにやるのをマートも目撃している。
50:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:16:43.34 ID:FkLb1xlW0
「あう……」
先ほどとは違う意味で、言葉にならない声が漏れる。
気まずさが、なによりも広がる。
だが、そんな中でマートは正気を取り戻さなければならなかった。
結界があるとはいえ、妹に危険が迫っているのだ。
51:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:21:26.03 ID:FkLb1xlW0
後日。
「メロ〜、お菓子とって〜」
竜との戦いはマートの勝利に終わったとはいえ、そこで受けたダメージは馬鹿になるものではない。
しばらくは療養しなくてはならない。
しかし、前回とは事情が違うので、マートが無茶をすることはないだろう。
52:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:22:02.83 ID:FkLb1xlW0
「データがない?」
ここで言うデータとは、魔術士の個人情報のこと。
秘密事項である彼らを管理するには、彼らの秘密を握っていなければならない。
だが、スケアクロウとウィッチには、それがないというのだ。
「考えられることは、彼らが、先日初めて戦いに赴いたこと」
53:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:23:26.07 ID:FkLb1xlW0
また後日。
マートの体調も復調し、ある程度のリハビリも終え、戦線に復帰する。
ただし、条件はメロがついていくこと。
メロもアレックもなんだかんだ言って心配症なのだ。
メロに見送られ、マートは『町』の中へと入っていった。
54:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:24:14.58 ID:FkLb1xlW0
「……まぁ、いいでしょう」
ウィッチの抑揚のない声。
違和感と、かすかな恐怖。それを感じてマートは二人から飛び退き離れた。
「あれ? どうしたんすか? エラメクさん」
スケアクロウの方も、声に抑揚がない。
55:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:24:43.34 ID:FkLb1xlW0
運命という名の破滅は、ある日唐突に訪れた。
それは、合成獣という形を取り、人間の牙を向こうとした。
その時、一組の男女は運命に抗い、合成獣を『町』に封じ込めることに成功したのだ。
だが、合成獣は沈黙したわけではなかった。
ずっと蓄えていたのだ。結界を打ち破るための力を。
56:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:25:13.40 ID:FkLb1xlW0
運命なるものがもし、意志を持っていたとしたら、彼は子どもに違いない。
それはまさに、子どもが考えたような化け物だったからだ。
なにもかもを飲み込んで型創るそれは、絶望そのものだった。
具体的に現せるのは、その馬鹿げた大きさのみ。
57:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:25:58.59 ID:FkLb1xlW0
『頃合いです』
合成獣から、スケアクロウとウィッチの声が重なって聴こえてくる。
どうやら、会話能力があるようだ。
「頃合い?」
マートは心に浮かんだ絶望を押さえつけ、平常を装い、対話を試みる。
58:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:27:02.33 ID:FkLb1xlW0
「冗談じゃないわ! なんでそんなことしたいのよ!」
もはや、なにがなんだかわからない。
マートは叫ぶことで、理性を取り戻そうとした。
そこでまた、キメラからの返事が返ってくる。
『例えば……例えばあなたが、朝起きて、パンを食べることに疑問を抱きますか? 夜、床について眠ることに疑問を抱きますか? 私にとって、吸収とは、その程度のことです』
59:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:27:42.16 ID:FkLb1xlW0
「ようするに、あんたは自分が魔術士になることで、結界を通り抜けようってことね?」
『その通りです』
以前、アレックの言っていたマザーの黒い影。
それは、魔術士を『町』へと誘い込み、結界を通り抜ける力を我がものにするということだったのだ。
「でも……どうやってそんなたくさんの魔術士を招き入れたのよ?」
60:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:28:16.09 ID:FkLb1xlW0
『……』
ふと、キメラの頭部パーツが、空を見上げる。
上空には何機かのヘリコプターが飛行していた。
『ふむ。結界も、時を経るにつれて薄まってきたようですね。どうやら、彼らには私たちの姿が見えているようです』
「マジですか……」
61:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:28:49.98 ID:FkLb1xlW0
マートは、周囲を見回す。
マート以外の人間は、キメラの核になっているスケアクロウとウィッチ。
そしてあと一人……
メロがいた!
「メロ!」
62:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:29:23.21 ID:FkLb1xlW0
「メロ、お姉ちゃんね、怖いんだ」
「……うん」
二人の体は、嘘偽りなく恐怖で震えている。
「本当は、逃げ出したいんだ」
「うん……」
63:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:29:57.46 ID:FkLb1xlW0
その刃は巨大とかそういう問題ではなかった。
キメラの右パーツは、跡形もなくはじけとんだ。
『……』
キメラは自分の窮地に立っても、なんの感情も湧き起っていない。
それが、彼らの敗因なのだ。
64:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:30:36.56 ID:FkLb1xlW0
わけもわからずマートは闇雲に叫ぶ。そして、その闇雲の矛先は、張本人のアレックに向かった。
「アレックさんどうしてこんなことを!?」
もはや質問の言い方もめちゃくちゃで、彼女は傍から見てもパニックになっていた。
その間にも、キメラは残ったパーツでメロの結界を叩き続けている。
「ま、ちょっとメロちゃんに渡してあるんだよね。マイクみたいなものを」
65:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:31:31.38 ID:FkLb1xlW0
運命は一つの誤算をしていた。
それは、自分を動かす歯車たちの力を見誤ったこと。
初めは、一つの歯車が逆回転を始めた。
次に、その隣の歯車も、それに付き添い逆回転を始めた。
そして、幸運なことに、最初の歯車が三番目に引き当てたのは、影響力のある歯車だった。
66:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:32:34.05 ID:FkLb1xlW0
マートはもう、パニック状態も収まり、ため息をつく。
「はぁ……原作料はいただきますよ?」
『OK、OK。なんなら主演女優になってもいいよ?』
「遠慮しときます」
マートは会話を終え、キメラを見上げる。
67:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/21(土) 20:35:34.07 ID:FkLb1xlW0
世界から合成獣という脅威は去った。
その後、後始末が色々あったが、それもようやく全て終わった。
エラメク姉妹は、戦いの後、職と引き換えに、莫大な金と名声を手に入れていた。
「いや〜、キメラ・ハート・クロスは売上好調。エラメクさまさまって感じかな?」
アレックは、軽快に自分の創った映画の売り上げ自慢をしている。
68:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/21(土) 22:16:16.65 ID:nP9cZsico
乙
69:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/21(土) 22:32:08.85 ID:qR7QzYE2O
超乙!!
厨二はやっぱ最高だわ
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