過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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2013/11/11(月) 20:29:33.38 ID:foU1KJOC0
 凪である。
 しかし、この海原が静寂に包まれることはなかった。
 静けさを破るものは、無数の発砲音、スクリュー音、そして着弾音である。
 同時に巻き上がる膨大な水しぶきの中を、縫うように駆け抜ける影が一つ。
 よほど時勢に疎い人間でない限り、それを見て、ある一つの言葉を思い浮かべるだろう。
以下略



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2013/11/11(月) 20:30:13.37 ID:foU1KJOC0
らを送り届ける母艦の運用に特化した施設とするならば、あまり大がかりなものとならないのはものの道理であった。
 結果として、口さがない者に横須賀鎮守府の外観を語らせればそれは、
「まるで学校のよう……」
 と、なるのである。
 そんな鎮守府の最奥、最も守りを厳重なものとしている場所に艦娘たちの寮が設けられていた。
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2013/11/11(月) 20:30:45.30 ID:foU1KJOC0
しまったようだ。
「もしかして……もしかしてなんだけどさ……五十鈴ちゃん、演習のこと気にしてる?」
「ぐ……」
 図星を突かれ、飯が喉につかえてしまった。
「なんだ……そんなことだったの」
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2013/11/11(月) 20:31:11.72 ID:foU1KJOC0
ら、五十鈴は自問自答した。
「それにしても……」
 人の気も知らず、気楽に語っていたコメンテーターの言葉を思い出す。
 その中で語られていたある事柄こそが、今現在五十鈴を最も悩ませていることだし、きっとそれを察したからこそ、あの親友はここに来てくれたのである。

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2013/11/11(月) 20:32:08.78 ID:foU1KJOC0
安置され、非番の乗組員たちは部屋の隅で居心地悪そうにしている士官たちの視線を受けながらも、記念撮影などに興じているのである。
 ちなみに由良は、真っ先に記念撮影を行っており、その写真をメールに添付して鎮守府に残った艦娘たちに自慢していたものだ。
「……私はいいさ。今は、自分の艤装に集中しないと、な」
「まだ……調子、戻らないんだ?」
「ああ、日に日に悪くなっている気がする。今日の定時哨戒も、思うように速度が出せなかった」
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2013/11/11(月) 20:32:35.55 ID:foU1KJOC0
「とにかく、わたしはいくね! 五十鈴ちゃんは安全なところへ!」
 それだけ言い残し、下駄にも似たカタパルトへ両足を乗せた。
「軽巡由良、出撃!」
 かけ声と同時、電磁式のカタパルトが射出され、由良の姿は海原へと消えていく。
 格納庫には、五十鈴が……いや、五十鈴の名を受け継いでいた少女が一人取り残された。
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2013/11/11(月) 20:33:02.61 ID:foU1KJOC0
在がどれほど危険で恐ろしいかは知っているだろうに、そう口にせずにはいられないのである。
 だが、恐怖で口を開かずにいられないのはベテラン乗組員とて同じことだ。
「見かけでまどわされるなよ……深海棲艦っていうのは、強力な個体ほど人間に近い姿なんだぞ」
「こんごう……あたご……かつて自衛隊が保持していた艦艇の数々も、あれと同じやつに沈められたんだ。こんなちゃちな輸送船より、遥かに強力な船がだぞ」
 艦橋内を、重苦しい沈黙が包み込んだ。
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:33:34.95 ID:foU1KJOC0
 少女はそれに、また驚かされた。軍規に照らし合わせれば、当然こんなところに存在するはずがない品物だ。
「ま、誰だか知らないが上手いことやって積み荷に潜り込ませたんだろうよ。そういうはしっこいやつ、俺は嫌いじゃあない」
 言いながら男は早くもウィスキーの栓を開け、中身を美味そうに口へ含む。
「――ふうっ、昔は酒なんか大嫌いだったが、いや、この頃は悪くないと思うようになってきたな」
 そう言ってから、男はじろりと少女をねめつける。
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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:34:17.60 ID:foU1KJOC0
わっているが、軽巡や駆逐のそれは、さほど強力なものではないのである。
 これは鎧に身を固めた長槍兵にナイフ一本で立ち向かうかのような所業であり、もはや蛮勇であるとさえいえた。
(それでも……)
 やらなければならない。
 輸送船に積まれた長門の艤装を失えば全軍の士気は確実に低下するであろうし、何よりあの船には、戦う力を失った彼女の親友がいるのである。
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:34:51.21 ID:foU1KJOC0
連合艦隊旗艦の魂と戦力を受け継ぎし艦娘長門は、すぐさま次弾の発射態勢をとる。
 だが、ル級とていつまでもその動きを止めているものではない。
『――ッ!』
 咆哮を上げながらも高速機動を開始し、次弾を回避することに成功する。
 着弾による衝撃波でクレーターの如く陥没する海面を尻目に、残る全砲門が長門に向けられた。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:35:17.77 ID:foU1KJOC0
 隣の執務机から、こんなところまで腐れ縁の親友がそうなぐさめてくれる。
 その時、こん、こん、とノックする音と共に、執務室の扉が開かれた。
「コーヒーを淹れてきましたよ……長門さんはブラックで、陸奥さんはミルクと砂糖たっぷりのやつでしたよね?」
 湯気が立つコーヒーを運んできてくれたのは、今は長門を名乗る彼女に代わり、五十鈴の艤装に選ばれたツインテールの少女である。
「あ、この写真。先代の赤城さんが引退した時のやつですよね?」
以下略



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