1:1[saga]
2013/12/08(日) 09:30:24.04 ID:OWwQizcX0
・伊織SSです
・書き溜めてあるのですぐ終わります
では、よろしくお願いします。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:1[saga]
2013/12/08(日) 09:30:55.28 ID:OWwQizcX0
―小鳥の囀りと共に、重い目蓋を開かせる。
寝相で乱れた髪をかき上げながら、カーテンの隙間から窓の外を見やる。
…まだ空に藍が残ってる。 さっきの鳥も随分早起きなものね。
正面に立てかけてあるアンティークの壁時計を見ると、午前五時を差そうとしていた。
3:1[saga]
2013/12/08(日) 09:31:25.15 ID:OWwQizcX0
「残念ね。 もうさっき起きたところよ」
姿が見えるわけでもないのに、不敵な笑みを浮かべ、肩をすくめて視線を受話器に送る。
モーニングコールよりも早く起きれたんだと、ちょっぴり優越感に浸ってしまう。
4:1[saga]
2013/12/08(日) 09:32:03.40 ID:OWwQizcX0
「ふぅ……」
さっきと同じ体勢でベッドに体を預ける、と同時に思い出した事が一つだけあった。
5:1[saga]
2013/12/08(日) 09:32:43.64 ID:OWwQizcX0
その言葉を引き金に、弾かれるようにベッドから体を離す。
クローゼットの中を力強く開く。 シルバーフォックスにチンチラ、セーブル。
うむ、我ながら素晴らしいラインナップ。 ミンクを選んだところでそのまま腕を袖口へ。
と、通したところで気付く。 まだ寝間着じゃない。
6:1[saga]
2013/12/08(日) 09:33:10.14 ID:OWwQizcX0
見えない所にまで気を配る。 "女優"として、最低限の事。
ネックレスはカルティエのトリニティ。 それ以外の装飾品は要らない。
別にパーティに出席するわけでも無し、無駄な輝きを増やす意味もありはしないんだから。
7:1[saga]
2013/12/08(日) 09:34:22.45 ID:OWwQizcX0
・ ・ ・ ・ ・
「……うん、悪くないわ。 少し香辛料が効きすぎかもしれないけど」
8:1[saga]
2013/12/08(日) 09:34:52.75 ID:OWwQizcX0
「……あっ、ありがとうございます!!!」
エプロンのなびく音が背中から聞こえてくる。
きっとまた敬虔にも、私に向かって頭を下げているんでしょうね。
9:1[saga]
2013/12/08(日) 09:35:20.48 ID:OWwQizcX0
「良いのよ。 別に兄様達じゃないんだから」
普通は、袖を使用人に通させたりするんだったわね。
改めて袖に腕を通す。 ミンクの手触りがとても心地良い。
10:1[saga]
2013/12/08(日) 09:35:52.27 ID:OWwQizcX0
伊織様―――。
11:1[saga]
2013/12/08(日) 09:36:25.57 ID:OWwQizcX0
そう、私が「伊織お嬢様」と言われなくなってもう7年になる。
18まではその呼び方が定着していたが、それを越えるとすぐに「伊織様」になった。
私ももう25になる。
12:1[saga]
2013/12/08(日) 09:36:57.22 ID:OWwQizcX0
暖かく、外気と隔絶された室内を出ると、肌を刺すような寒気が頬を撫ぜる。
13:1[saga]
2013/12/08(日) 09:37:33.53 ID:OWwQizcX0
・ ・ ・ ・ ・
デコボコした道にヒールを持っていかれ、イライラする事数回。
曲がり角すぐにある、カフェテラスのある喫茶店で、若い男女が口喧嘩をしていた。
周りの客は辟易している者、心配そうに見守る者、そもそも気にしていない者と、なんとまぁ綺麗に分かれていた。
14:1[saga]
2013/12/08(日) 09:38:18.22 ID:OWwQizcX0
ライブの後、疲労が原因で体調を崩してしまった時のこと。
その日も仕事があり、無理を推して家から出ようとした瞬間、目の前に"アイツ"が居た。
新堂から連絡を受けてここまで駆けつけた、という説明を私が質問で投げかける前に答えられ、
私がその説明を理解するよりも早く抱きかかえられ、ベッドへと運ばれた。
15:1[saga]
2013/12/08(日) 09:39:16.05 ID:OWwQizcX0
もしかして、もしかしてアンタは、私の事を想って怒ってくれているの。
私の為に泣きそうになって苦しそうになって、私の為に悲しそうになってくれているの。
16:1[saga]
2013/12/08(日) 09:39:52.04 ID:OWwQizcX0
・ ・ ・ ・ ・
そろそろ脹脛が悲鳴を上げ始め、やっぱり車を頼めば良かったか、と後悔する事幾何回。
17:1[saga]
2013/12/08(日) 09:40:42.68 ID:OWwQizcX0
「いらっしゃいませ。 ……お花、好きなんですか?」
先ほど花に水遣りをしていた店員が声をかけてくる。
「ん……、あぁ……嫌いでは、ないわ」
18:1[saga]
2013/12/08(日) 09:41:11.33 ID:OWwQizcX0
「へぇ……。 なんで、花が好きなの?」
「え? うーん、そうですねぇ。 やっぱり元気をくれるから、ですかね」
「元気?」
19:1[saga]
2013/12/08(日) 09:42:18.84 ID:OWwQizcX0
あれは、いつだったかしら。
20:1[saga]
2013/12/08(日) 09:42:53.33 ID:OWwQizcX0
「その歌を歌えるのは、伊織、お前もなんだよ」
「私も……?」
ゆっくりと頭を撫でられる。
21:1[saga]
2013/12/08(日) 09:43:29.97 ID:OWwQizcX0
「…………さま……? ……きゃく……」
47Res/25.33 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。