過去ログ - 真姫「とある夏の日の思い出」
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1: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:31:49.36 ID:BnZpgpRg0
小学生1年生になる前の春休み、「お前はここの跡を継ぐんだよ」と言われて病院に連れてこられた。

真っ白な廊下。

真っ白な天井。

杖を持って歩いている少年や腕に包帯を巻いた少女などが集い、まるで特別な場所に見えた。

薬の臭いが漂い、普通の場所とは違うことが明らかだった。

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2: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:33:21.38 ID:BnZpgpRg0
手すりを頼りに危なげに歩くおじいさんが私を見て微笑みかけた。

その時はどう返していいかわからず父の後ろに隠れた。


以下略



3: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:33:47.17 ID:BnZpgpRg0



それから5年後、無事に私は小学5年生になった。

以下略



4: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:34:51.36 ID:BnZpgpRg0
夏休みになり、友達もそれほど多くなかった私は、誰かと遊ぶということもなくピアノを弾くか病院を訪れるかの2つの行動をただ機械的に繰り返した。

夏になり患者が増えた病院はいつもより活気があった。

同じ部屋になった者同士が会話を弾ませ交流を深めていく。
以下略



5: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:35:18.34 ID:BnZpgpRg0


そしてある日、ついに病室に足を踏み入れる決心をした。

たいした理由はない、べつに誰かと話したいわけではないと自分に言い聞かせた。
以下略



6: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:35:45.05 ID:BnZpgpRg0
しかしどれだけたてども返事は返ってこなかった。

呑気な患者なのだろう、と私は嘆息した。

だが本当にそうなのだろうか。
以下略



7: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:36:26.68 ID:BnZpgpRg0
小学生には重すぎる現実。

その答えが浮かんだ時、私の額には気持ちの悪い汗がにじんでいた。

立っているだけで鼓動が早まっていく。
以下略



8: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:37:16.09 ID:BnZpgpRg0
数年前、自分に微笑みかけてくれたおじいさんは去年亡くなった。

家族と楽しそうに会話していたおばさんは、入り口の札の名前が消えて見舞いが途絶えた。

人がいなくなるということがどういうことかわかっていた。
以下略



9: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:38:39.22 ID:BnZpgpRg0
見えたのは自分よりも小さな女の子。

「ふんふふーん♪」

備え付けのテレビにイヤホンを繋げ、映像が動く度に楽しそうに肩を揺らしている。
以下略



10: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:39:16.09 ID:BnZpgpRg0
「……ん?」

闖入者の存在に気づいたらしい彼女は、首をくるりと回して暖かい眼差しを自分に向けた。


以下略



11: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:41:17.88 ID:BnZpgpRg0
思えばどうして死んでいるという答えが出たのか、今の私にはわからない。

きっと気が滅入っていたのだろう。

大人になろうと背伸びしていた私は、いつの間にか暗い考えしか思いつけなくなっていたのかもしれない。
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12: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:43:18.16 ID:BnZpgpRg0
「バカねー、入り口の名前が消えてるなら退院したってことよ」

私よりも小さな体躯で鈴を転がしたように笑う彼女。

初めてそんなことを言われた。
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13: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:44:05.55 ID:BnZpgpRg0
何でもできる、賢いんだから。

そう言われ気分をよくしていた私の小ささを思い知るほどに、彼女はあらゆる分野においてたくさんの物事を知っていた。

年下にしか見えない背丈からは想像もできないことだ。
以下略



14: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:44:54.84 ID:BnZpgpRg0




「ねぇ、どうしてなまえおしえてくれないの?」
以下略



15: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:46:21.74 ID:BnZpgpRg0
「いい? 有名人の友達って嘘つく人もたくさんいるのよ?」

まるで諭すように私に語りかける。

「あんたは素直な子だから、嘘つきだと思われたくないの」
以下略



16: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:47:38.40 ID:BnZpgpRg0
「まあその頃には私のことなんか覚えてないでしょうけど」

私はそんな彼女の言葉を聞いて、本気でアイドルを目指しているのだとはっきり理解した。

それは少しおかしくて、それに彼女ならアイドルになれる気がした。
以下略



17: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:48:05.88 ID:BnZpgpRg0



どうして怪我をしたのか。

以下略



18: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:49:34.56 ID:BnZpgpRg0
「気になる?」

その言葉にはっとする。

彼女に気を遣わせてしまった。
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19: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:51:13.69 ID:BnZpgpRg0
「じゃあ今から独り言を言うからあんたは聞かないでおいてよ」

彼女は淡白だった。

私はそういう人間を今まで見てきたことがない。
以下略



20: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:52:21.69 ID:BnZpgpRg0
「私はね、普通に学校に行こうとしてただけなのよ」

その懐かしむような語り口はいつもの飄々とした様子と少し違っていた。

「そしたらボール遊びをしてる小学生がいてね、楽しそうだなーなんて思いながらその近くを通り過ぎようとしたの」
以下略



21: ◆eyH5F3DPSk
2014/01/14(火) 21:52:54.11 ID:BnZpgpRg0

「それで私は気付いたら倒れてた。ボールを取りに行った男の子が少し遠くで転んで泣いてた」

その辺の記憶が曖昧なのよねー、なんておどけて付け足した彼女は痛々しかった。

以下略



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