過去ログ - 北条加蓮「嫌いだった言葉」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:30:34.01 ID:oVE2GZJB0
 都内の病院の一室に、一人の少女がありました。

少女は、年間の多くをこの病室で過ごしていましたが、かけがえのない夢を持っていました。

それは、アイドルになることです。

でも、その夢は、追いかけられるものではないと思っていました。


「加蓮ちゃん、呼ばれたから検査行きましょうね」

こう言いながら、看護師さんが車いすを持って病室へとやって来ました。

大抵の日は、こうして検査を受け、先生の話を聞き、あとはベッドの上で過ごしていました。

加蓮は、何も変化のない毎日を繰り返しているうちに、意欲を失っていってしまったのです。

だから、持っていたはずの夢も、だんだんと小さく遠いものへとなっていきました。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:35:31.38 ID:oVE2GZJBo
 加蓮は、病棟のアイドルでした。

とてもかわいらしかったので、すれ違った患者さんが思わず振り返ることは珍しくありませんでした。

また、回診の日には、病室から出て行く先生たちがちらちらと見てくることもありました。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:39:58.18 ID:oVE2GZJBo
 土曜日の昼下がり、加蓮は売店で買ってきたジュースを飲みながらベッド脇のサイドテーブルの上に置いてある写真集をぼんやりと眺めていました。

「加蓮が好きな子の新作が出ていたよ」

こう言ってお母さんが数日前に買ってきてくれたそれは、未だにビニールに包まれています。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/09/05(金) 21:40:41.28 ID:ogJOdLn2o
期待


5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/09/05(金) 21:42:46.24 ID:lv+kjOMsO
加蓮誕生日SSきたー!


6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:44:36.20 ID:oVE2GZJBo
「加蓮いる? お母さんだけど」

「う、うん……」

聞きなれた声ですが、予期せぬタイミングに、しどろもどろに答えてしまいました。
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:49:06.45 ID:oVE2GZJBo
「そういえば、加蓮、あなた携帯の電源入れてないの?」と、お母さんが言いました。

「来る前に電話したけど、通じなかったわよ。こういう時には連絡するかもしれないから、電話には出られるようにしておいてね」

「うん……。気を付ける」と、加蓮はぶっきらぼうに答えました。
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:53:51.32 ID:oVE2GZJBo
 入院当初は通話もメールも普通にしていました。

さすがに病室内ではしないようにしていましたけれど。

特に友人からの励ましのメールは心に響きました。
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 21:57:35.84 ID:oVE2GZJBo
「加蓮はいつも頑張り屋さんじゃん! だから、もう少し辛抱すればきっと良くなるよ!」

「加蓮がいないと寂しいからさ。頑張ってね!」

「大丈夫! 早くよくなってね」
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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/09/05(金) 22:00:25.85 ID:cMXP0xV20
「がんばれ・がんばってね」より「がんばってるね・がんばったな」の方が努力が認められて良いって昔どこかで聞いたな
いや人によるし言い方や状況にもよるだろうけど


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:00:33.19 ID:oVE2GZJBo
 加蓮は、病室を出て、エレベーターホールへと向かいました。

その途中で、よく話しかけてくる患者さんとすれ違いました。

「加蓮ちゃん、背中、曲がってるわよ。私もこんな体だけど、しゃきっと歩くようにしてるんだから、若いあなたがそんなことではダメよ。がんばらないとね」と、その患者さんは言いました。
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:04:58.50 ID:oVE2GZJBo
どこからか誰かの足音が聞こえます。看護師、医師、入院患者、お見舞い、……。

大きさの違う足音が四方から響き、世の中が動き続けていることを教えてくれます。


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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:08:23.08 ID:oVE2GZJBo
 ある日の夜、加蓮は消灯時間を待ちながらテレビを見ていました。

本当はそのつもりもなかったのですが、あまりにもやることがなくなってしまったのです。

ちょうど、歌番組が放送されていたので、それにチャンネルを合わせました。
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:13:14.37 ID:oVE2GZJBo
「失礼します。加蓮ちゃん、さっき血圧測れなかったから測ろうか」

看護師さんが部屋に入ってきましたが、加蓮は一向に気づきません。

肩をとんとんと叩かれて、ようやく気づきました。
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:17:57.57 ID:oVE2GZJBo
「どうしたの?」

「あ、いや、やっぱり……」

「ゆっくりでいいよ」と、看護師さんは言うと、加蓮のベッドまでやってきて、目線まで腰を落としました。
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16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:21:50.57 ID:oVE2GZJBo
加蓮は、ゆっくりと一つ息を吐きました。

加蓮は、看護師さんに話を聞いてもらえたからか、穏やかな気持ちでした。

患者としてでなく、一人の人として心配してくれているようにも感じられ、嬉しくなりました。
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:23:41.82 ID:oVE2GZJBo
 数日後、加蓮が退院をする日が確定しました。

しかし、あの看護師さんが加蓮の部屋へとやってくる時はまだ訪れていません。

退院前日の午後、ようやくその機会が巡ってきました。
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:29:09.61 ID:oVE2GZJBo
「目標を、その日ごとに決めてみるというのはどうかな?」

「目標……?」

「そう。その日の体力に合わせて、これだけは絶対にしようということを決めてみるの。もちろん、無理はいけないから体調が悪くなったら、その都度休憩したり目標を変えたりして、そこら辺は臨機応変にね」と、看護師さんは言いました。
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:31:23.31 ID:oVE2GZJBo
加蓮は、胸のつかえが取れていくのを感じました。

「ありがと。アタシ、勝手に難しく考えてただけなのかも」と、加蓮は言いました。

「応援、してるからね」と、看護師さんは言いました。
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:37:22.74 ID:oVE2GZJBo
 その日、加蓮は家に帰ると早速お母さんにもらった名刺を見せてみました。

名刺をもらった事務所は、お母さんでも知っているような有名な事務所です。

加蓮は、お母さんの反応が楽しみで、少しそわそわしています。
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/05(金) 22:46:42.63 ID:oVE2GZJBo
「研修期間があるんだろう? ならば、とりあえずやってみればいいじゃないか。お前、こういうの興味あったんだろう?」と、お父さんが言いました。

夕食時に話題に出してみたところ、加蓮には意外な返事が返ってきたのです。

「ちょっと……」と、お母さんは言うと目付きが厳しくなりました。
以下略



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