388:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:03:33.75 ID:TYp+eNeDO
目を覚ました。
カーテンの隙間から覗く暖かい日差し。無駄に大きいベッドの上で、少女は身じろぎした。体を起こし、右膝を立てた状態で頭を抑える。頭痛がした。
389:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:05:37.27 ID:TYp+eNeDO
制服の掛かっているハンガーを取ろうとして、手を止める。なんだか気が進まなかった。これを着たら、自分は貞淑で体の弱いお嬢様になってしまう。この服をこれ以上着ていたら、もう戻れなくなってしまうような恐怖感が胸中で渦を巻いた。
あの人達のせいだ。賑やかな生徒会室。初めは面倒事だと思っていたが、段々とほだされていっているのが分かった。だから意図的に避けていたのに、あの少年が現れてからは、目に見えて足を運ぶ回数は増えていた。
390:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:06:53.36 ID:TYp+eNeDO
「……最っ低」
再び呟く。今度は自分に向けた言葉だった。何も知らない彼を連れまわして、間違いだと分かっているのに、この手を離せない。血に濡れた、汚れた手を。
391:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:08:48.31 ID:TYp+eNeDO
不意に、部屋のドアがノックされた。
「おはようございます、お嬢様。お目覚めでしょうか」
392:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:13:04.92 ID:TYp+eNeDO
何もかも違う。間違っている。こんなのは望んでいない。
もう戻らない。兄は死んだ。母は変わった。何もかも滅茶苦茶だ。元通りになど出来るはずがない。
393:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:15:17.56 ID:TYp+eNeDO
どこまでも居心地の悪い家だ。
逃げるように外へ出るのも無理からぬことである。カレンにとって、この家の価値といえば良質なシャワーと清潔なベッドがあることくらいだった。
394:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:17:22.73 ID:TYp+eNeDO
バスの中は閑散としていた。この近辺は高級住宅街だ。住む人間は大抵、運転手付きの送迎車を持っている。公共の交通機関を使う必要がないのだ。
しかし駅に近づくにつれ、人が多くなってくる。時を置かずして満員になるだろう。すし詰めになるのはごめん被りたかったので、さっさと降りた。部活動でもあるのか、学生連中が雪崩れ込んでくる。間一髪だった。
395:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:19:15.35 ID:TYp+eNeDO
ライだ。間違いない。
彼は困った様子で相手の少女に何かを案内している。無口、無愛想、無表情の三重苦を抱えている人物にしては珍しい。
396:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:24:02.35 ID:TYp+eNeDO
彼は不思議そうに首を傾げてから、再び歩き出そうとした。待ち合わせまで時間があるとはいえ、なんだか非常に面白くない。
今度は明確な怒りを込めて睨み付けた。ライはビクッと体を震わせ、こちらに再度顔を向ける。恐る恐るといった様子だ。失礼な反応だが、ちょっと可愛いと思った。
397:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:25:31.07 ID:TYp+eNeDO
自分だけ食事しているのも妙だと思い、
「朝ご飯は食べた?」
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