12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:52:29.99 ID:fk92G9zco
 結衣「えっと……」 
  
  
 一体私は何に恐怖していたのだろう? 
  
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:13.11 ID:fk92G9zco
 じっと浴室の扉を見ていると……夢の中で感じた得体の知れない恐怖が少し蘇って、思わず鳥肌がたった。 
  
 この浴室自体はまったくもって普通の場所だ。勝手にシャワーが出ることなんて絶対にないし、夢の中で起こったようなことはもちろん過去に一度も無かった。全ては夢の中の出来事であり、私はあんな光景を想像したことさえもないのだ。 
  
 しかし私は見てしまった。あれが寝ているときの幻覚だとしても、心にはしっかりとあの不気味な光景が残ってしまっている。出っ放しのシャワーをこの手でひねって止めたし、その時足元にシャワーの水が少しかかった感覚だってした覚えがある。 
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:45.82 ID:fk92G9zco
 ―――――― 
 ―――― 
 ―― 
 ― 
  
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:54:47.76 ID:fk92G9zco
 結衣(助けて……) 
  
  
  
 京子。 
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:55:19.51 ID:fk92G9zco
 〜 
  
  
 気づけば私は……京子の家の目の前に到着していた。 
  
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:55:46.47 ID:fk92G9zco
 裏口に周ってみる。そこには存在だけは知っていて、私は使ったことのない勝手口があった。もしかしたらここが開いているんじゃないかと軽い気持ちで手をかけ、くいと引っ張る。 
  
  
  
 ……開いた。 
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:56:40.04 ID:fk92G9zco
 結衣「…………」 
  
  
 扉の向こうに京子がいることを信じ、扉の向こうに京子がいる景色を思い浮かべて……私は優しくノックをした。 
  
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:58:09.06 ID:fk92G9zco
 私が馴染みのあるこの部屋の姿を思い出す。こんなに整頓されたところは見たことがない。 
  
  
 普段そこまで汚いわけでもないが、いつも読みかけの漫画や適当に脱いだ靴下などが片付けられずに散らかっているのが常だった。しかし机の上も本棚も、何もかもがきちんと片づけられており……先のリビングと同じように、誰かがいた痕跡を感じさせてくれない。 
  
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:58:37.16 ID:fk92G9zco
 結衣「京子……きょうこぉ……」 
  
  
 この部屋で過ごした京子との思い出が、一瞬のうちにぶわっと蘇ってきた。 
  
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:59:26.00 ID:fk92G9zco
 結衣「きょうこ……きょうこぉ……っ……!」 
  
  
 京子のベッドに力なく手を伸ばし、京子の枕を力いっぱい握りしめて、誰に聴かれるわけでもないのに声を押し殺して泣いた。 
  
22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:59:56.91 ID:fk92G9zco
 思えば……京子はいつだって、私のもとに来てくれていた。 
  
  
 幼いころは、私を頼って近づいてきてくれていた。人見知りで弱気な京子には心から頼れる存在というものが少なく、私もそのころから既に京子の支えになる義務感すら覚えていた気がする。“単なる友達”である時間などあったかどうかもわからない。京子は私にとって守らなければいけない特別な存在だった。 
  
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