15: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:22:01.98 ID:QvQsG1d2o
「それでは、そろそろお暇させていただきます」
「えー? もう帰っちゃうの?」
「ええ、その……。やらなければならないことがありますので」
16: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:22:27.82 ID:QvQsG1d2o
何事もなく一日が経過する。穂乃果と会ったこと以外はいつもどおり。
だけどそれは、確実に私に何かを残していった。
「サボってしまいましたねぇ」
17: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:23:07.53 ID:QvQsG1d2o
「授業中、ですよね?」
フェンス越しに見る校舎に動く人影は見当たらない。が、屋上に誰かが立っている。
昼休みはとうに終わっている時間帯。で、あれば何故屋上に人が。
18: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:23:48.10 ID:QvQsG1d2o
「あなたが大学をサボるなんて、いったいどうしたのよ」
寂れた喫茶店の一角で、真姫はコーヒーをストローで啜る。よくもまぁ、そんな苦い汁を飲めるものだ。
あの後、真姫は鞄を持って私のところまでやってきた。体調が悪いと言い張り、早退をしたそうだ。
19: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:24:32.84 ID:QvQsG1d2o
「昨日、穂乃果に会ったんでしょう?」
「ええ、ばったりと」
「どうだったのよ」
20: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:25:20.91 ID:QvQsG1d2o
「私、穂乃果と違って優しいから教えてあげましょうか? その居心地の悪さの原因」
「……聞きましょう」
真姫が指を組み、椅子の背もたれに身体を預ける。わざとらしく足を組み、高圧的な姿勢を取る。
21: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:25:58.07 ID:QvQsG1d2o
「それが引け目に繋がっていると?」
「まぁ、そうね。例え話になるけれど、あなたと穂乃果が同じ大学を目指していたとして、あなただけ滑ってしまった、みたいな感じよ」
「その通りだとすれば確かに引け目は感じるでしょうが……。ですが私たちは結局、別々の道に進んだ訳ですし」
22: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:26:38.34 ID:QvQsG1d2o
「あなたは失敗したのよ。それぞれが別の道に進めば、自ずと成長できるだろうとか思ってたんじゃない?」
「……そう、かもしれません。あなたの言うとおりに、私は」
穂乃果には私が必要なのだと思っていた。穂乃果に頼られることが嬉しかった。穂乃果を律することが私の役割だった。
23: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:28:07.37 ID:QvQsG1d2o
「あなたは穂乃果に引け目を感じている。原因はあなたが大人になれていないから。それで、あなたはどうしたいの?」
私が、どうしたいか。私は、どうしたかったのだろう。
真姫は私が失敗したといった。恐らく、それは真姫の語った中で唯一の間違い。
24: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:28:46.14 ID:QvQsG1d2o
「真姫、ありがとうございます」
頭を下げる。穂乃果とあったことで生まれたしこりが解れ、朝起きた時よりも思考がクリアだ。
やるべきことも決まった。
25: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/12(土) 01:29:13.65 ID:QvQsG1d2o
世の中には親友を越える関係がある。恋人だとか、家族だとか。
私と穂乃果と、そしてことり。私たちの関係性は親友という枠組みに収まっておらず、家族というものに近かった。
親、だったのだ。私は、穂乃果の親のような役割を担っていた。
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