過去ログ - 【モバマスSS】香水 あるプロデューサーの物語
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61:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:27:03.49 ID:4bekVCDt0
 慶は奈緒に詰め寄り、彼女の手を握った。口調の変化と、突然手を握られるという行為に、奈緒は思考がストップしている。これでイニシアチブはこちらのものだと、慶は勝利を確信した。

「俺は前から、お前が伸び悩んでいるのを知ってた。本心を言うと、俺はお前をプロデュースしてやりたいぐらいなんだ」

「そんなこと、急に言われても……」
以下略



62:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:27:55.82 ID:4bekVCDt0
「ごめん、奈緒。なんだか乱暴だったよな」

「いや……西門さんに、そこまでご心配かけてるなんて、こっちこそ悪かったよ」

 悪いのはこちらの方なのに、奈緒はまるで自分に非があるような言い方をした。
以下略



63:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:28:37.77 ID:4bekVCDt0
「あれ、何だろ……ちょっと、眩暈がするような……」

 奈緒の姿勢が崩れかけた。慶は素早く立ち上がり、奈緒の体を抱き留める。

「大丈夫か、奈緒」
以下略



64:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:29:33.38 ID:4bekVCDt0
「やばっ、もしかして、誰かに見られた?」

「ん? 何のことだ?」

 十中八九、清川だろうが、慶はあえて知らないふりをする。
以下略



65:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:30:19.01 ID:4bekVCDt0




 奈緒との事件から暫くして、慶は再び美城常務に呼び出されていた。
以下略



66:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:31:35.26 ID:4bekVCDt0
 目の前で、担当アイドルが他のプロデューサーと交情を深めていたのだ。気の弱い清川のことだから、慶に食って掛かってくることもあるまい。
 慶はあの時そういう計算をし、あえて清川の目の前で奈緒と接吻して見せたのだ。
 この少女にふさわしいプロデューサーは、この自分だと示すために。

「さあ、私にもわからない。確かに、彼の業績はあまり良いとは言えなかった。しかし、仕事に対しては真摯に取り組んでいたし、彼なりに努力している面もあった。それに、346を取り巻く情勢は予断を許さないため、一人でも多くの人材を欲しかったのだが。そこで、同期の君は何か知らないだろうかと思ってね」
以下略



67:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:32:41.45 ID:4bekVCDt0
「成果主義、実力主義は、常務が先般の会議で披瀝されたことでもあります。同期として酷な言い方に聞こえるかもしれませんが、率直な意見を申しますと、彼は常務の求める有為な人材ではなかったのではありませんか」

 慶はここで一度言葉を切り、常務の表情を窺った。常務は無言で先を促した。

「むしろ、ここで泣いて馬謖を斬り、全体の弛緩した空気を引き締めるという常務の判断は、統括重役として称賛に値するものだと思われます」
以下略



68:名無しNIPPER[saga]
2016/04/01(金) 22:34:06.28 ID:4bekVCDt0
 美城常務は暫く思案しているようだったが、顔をあげると、

「君の意見はわかった。では、清川君が担当していたアイドルだが……」

 清川を切り捨てることは、決定したかのように話を進めた。
以下略



69:名無しNIPPER[saga]
2016/04/02(土) 22:46:35.63 ID:zCk6PcLr0




 数日後、正式に神谷奈緒の担当プロデューサーとなった慶は、空いていた部屋を貸し切り、奈緒に指導を行っていた。
以下略



70:名無しNIPPER[saga]
2016/04/02(土) 22:47:28.38 ID:zCk6PcLr0
 人間は、パーソナルスペースというものを持っている。ニュアンスとしては、縄張りやテリトリーという言葉が近いだろうか。簡単に言えば、他人が近づいてきて不快に思う距離のことだ。
 例えば、電車に乗る想像をしてみれば、理解しやすいかもしれない。他に座席が空いているのに、おそらく殆どの人は、見ず知らずの他人の真横に座ろうとは思わないはずだ。
 つまり、自分から手を差し出すということは、相手のパーソナルスペースを侵害することになり、無意識のうちに相手に不快感を与えてしまう。

「相手が手を差しだしたら、相手の手を下から掬い上げるように両手で持つ。そして、相手の目を見ながらとびっきりの笑顔をし、一言二言、言葉を交わす。些細なことだけど、こういう細かいことに留意することによって、他のアイドルと差をつけられるぞ」
以下略



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