882:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:49:24.15 ID:lNunJpruo
あさひは何も言わない。僕はまたグラスに口をつけて考える。
少し、違うような気がした。
そこにはまだ、自覚している以上の何かが秘められている気がする。
883:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:49:57.05 ID:lNunJpruo
僕のいない世界。
それはずいぶん簡単にまわりそうな気がする。
何もかもがうまく回るような気がする。
884:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:50:32.24 ID:lNunJpruo
僕が考え込んでいる間にあさひは立ち上がった。何かつまむものをとってくる、と彼女は言う。
僕は返事をしなかった。
885:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:51:25.50 ID:lNunJpruo
いつのまにか空になったグラスにあさひがワインを注いでくれた。僕はそれに口をつける。
僕は、僕自身が生き延びるために、生きていていいんだと信じたいがために、愛奈を利用した。
886:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:52:06.74 ID:lNunJpruo
認めよう。
僕がこんな有様になったのは、おそらく、祖父の姿のせいじゃない。
そこに起因する(と僕が思っていた)僕の憂鬱さえも、本当はそうではない。
887:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:53:12.01 ID:lNunJpruo
――ごめん。ちがう。そうじゃなくて、なにか、悩みがあるなら、いつでも……。
――……いつでも、聞くから、って、そう言おうと思ったの。
小夜は、そう言ってくれた。
888:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:53:51.13 ID:lNunJpruo
……必要としてくれる人がほしかった。必要としてくれる人が必要だった。
そうじゃないと自分が存在していていいのかわからなかった。
889:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:54:17.11 ID:lNunJpruo
小夜啼鳥の童話を思い出す。
遠い遠い昔の話だ。
890:名無しNIPPER[sage]
2017/11/15(水) 23:54:56.00 ID:lNunJpruo
下働きの娘は侍従長をさよなきどりの元に案内し、その鳥に皇帝の前で歌うように説得した。
鳥はその言葉を受け入れる。
さよなきどりの歌声に、そのあまりのうつくしさに、皇帝の目からは涙があふれて止まらなかった。
891:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:55:31.20 ID:lNunJpruo
小夜啼鳥。
さよなきどり。
よなきうぐいす。
ナイチンゲール。
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