過去ログ - 提督「グラーフ・ツェッペリン、割り箸を割る」
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:48:41.26 ID:IPF1yQGEO
「金剛さんは現にある己全ての感情に従い、グラーフ・ツェッペリンさんは「本来的な感情」に従おうとする。グラーフ・ツェッペリンさんは金剛さんに共感しきれないようですが、二人とも感情を行為の主要因にしうるという点では一致しています」
「鳳翔は感情に従わないと言うのか。理性的だと自負しているということか」「理屈っぽいのはどうも苦手です。どちらかというとそれはあなたの領分なのではないでしょうか」。グラーフ・ツェッペリンは鳳翔に勧められたので割り箸を脇に置き茶を飲んだ。
「ええと、何と言えば。欲を持っていて、なおかつそれが実現できる環境であったとしても、その感情に従う必要もないと感じているようです。だから、そうですねグラーフ・ツェッペリンさん風に言えば「めた感情」? 「ぱとす」に対する「えーとす」? なんにせよ、より大きな感情に従っているようなものです」
以下略
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:49:21.92 ID:IPF1yQGEO
「重要か」「ええ、重要です。例えば「人生は無価値だ」と言って自殺する人がいます。どうですか?」「どうですかとはどういう意図だ」「ふふ、すみません。でも、そう言って自殺する人は間違えています。本当に人生を無価値と思うのなら、自殺なんて選択はないはずです」
グラーフ・ツェッペリンが沈黙するので鳳翔は続けた。「そうではないですか? その人は自殺という積極的な行為で何かを実現しようとしたわけですから。その人が「無価値」という時、より大なる価値を実現するのにそれが邪魔になったということに過ぎません。
それは「無価値」というより「反価値」と言うべきでしょう。執心の否定が執心であったように、価値の否定も価値になってしまっているのです」
以下略
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:50:27.15 ID:IPF1yQGEO
グラーフ・ツェッペリンが日本に来てから、精神的苦悩をいわゆる「感情論」で片づける傾向が比較的強い風土に戸惑いを覚えていたのは事実であった。ほとんど紋切り型の感情論説を「この悩みにはこう」と展開する一対一対応の関数的お悩み相談。
しかも感情論は社会常識的にほとんどトートロジーとも言えるものばかり。トートロジーは常に正しきゆえに何も言っていないに等しい。天気予報が「明日は晴れるか晴れないかのいずれかです」と言うなら、それは何の役に立つというのか。
ここでは誰かに打ち明けられる悩みとは前もって己で答えを決めているものだけだなと漠然と思っていた。だから、鳳翔のその応答はグラーフ・ツェッペリンにとってひどく新鮮で喜ばしく思えた。
以下略
20
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名無しNIPPER
[saga]
2016/08/13(土) 01:51:11.30 ID:IPF1yQGEO
「別にとぼけるつもりはありませんよ」「どういうことだ」
「そうですね。心を牛に喩えて悟りに至る過程を描いた『十牛図』というものがありまして、それは牛を探すところから始まり手懐けたりするなど十枚の絵で構成されています。
グラーフ・ツェッペリンさんが言う悟りとは八枚目の「人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)」になります」
「八枚目?」「そうです。まだ二枚残っています。そして残りの二枚は解脱から世界に戻る過程になっていて、最後の「入?垂手(にってんすいしゅ)」では普通の人の外見で描かれています」
以下略
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:51:57.74 ID:IPF1yQGEO
鳳翔は去った。金剛と違い湯飲みはちゃんと片づけていった。しかし、謎を残していった。グラーフ・ツェッペリンはいまだ一本の割り箸を掌で転がす。
結局どうすれば。金剛も鳳翔も仮説「艦娘は提督への好意を機械運命論的に決定づけられている」という問題を回避する方法は教えてくれた。どちらも距離の取り方で感情の「本物/偽物」の境界を見えなくする手段であった。
金剛は感情に過剰に接近し、つまりその内で生きることによって感情の真偽区分をなくし、鳳翔は反対に感情から過剰に離遠し、つまりその外から眺めることによって真偽区分の意味をなくす。
以下略
22
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名無しNIPPER
[saga]
2016/08/13(土) 01:53:18.24 ID:IPF1yQGEO
二人のやり方を拒否するグラーフ・ツェッペリンにとっては「アドミラルのことを好いている」と「感情が偽物の可能性」と両方を認める道しか開かれていないように思えた。
さらに「偽物の可能性」から「可能性」という言葉もなくそうと決めた。つまりそれは「私はアドミラルのことを好いているが、しかしその感情は偽物である」ということを承認することである。安直な賭けで問題を放棄しないようにと自戒したのだ。
パスカルは神の存在を証明する際に賭けの理論を持ち出した。
以下略
23
:
名無しNIPPER
[saga]
2016/08/13(土) 01:54:53.30 ID:IPF1yQGEO
そもそも根本的な矛盾はグラーフ・ツェッペリンが己を「偽りの愛に従わない」とするのに、自分で「その愛は偽物」としてしまっている点だ。理論的ザックガッセ、いわゆる詰みだ。どうしようもない。
苦悩を重ねる内にふとグラーフ・ツェッペリンは「私はどうしてこんなにも愚かなのか」と考えた。普通ではない。
普通ならそもそも仮説である「提督への好意を持つように艦娘は設計される」という点の事実確認を行うのではないか。大本営の研究室にでも潜り込むという一大スペクタクルを演じるべきではなかったのか。
以下略
24
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:56:45.24 ID:IPF1yQGEO
更に言ってしまえば、グラーフ・ツェッペリンのように疑い深い精神にとっては地球上全てでその事実が確認できなかったとしても、何か我々には与り知らぬ原理を疑うかもしれない。
そこまでいくともはや人間をわざと誤謬させるあの底意地悪いデカルト的悪神を信仰するかの如くである。絶対確実なものを求めるために間違いの可能性があれば全てを切り捨てる方法。
デカルトは切り捨てたものを結論的には神の誠実性によって回復しようとした。「私があるというのは確実である。そしては私は神が誠実であるという観念を有する。確実なものから出た命題は確実だ。神は断じて人間を騙す悪神ではないのだ。ゆえに懐疑によって一度捨てたものの確実性は保証される」
以下略
25
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 01:59:09.92 ID:IPF1yQGEO
この明らかな愚かさこそが、グラーフ・ツェッペリンにとって自分生来のものであるという根拠になる。理想兵器の設計書には愚かであることは計画づけられていないはずだ。
グラーフ・ツェッペリンは割り箸を眺めた。そう根本的に艦娘も割り箸も同じだ。設計的には道具として位置づけられている。本来無一物。感情や意志など余分なものはなかったはずだ。
しかし、それはどういうことだ。この愛が設計されたものでないにせよ、出自は完全に不明。結局振り出しではないのか。堂々巡りだ。
以下略
26
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名無しNIPPER
[saga]
2016/08/13(土) 02:04:04.76 ID:IPF1yQGEO
曇天の宵空からは月の朧気で曖昧な光が僅かに差し込むばかり。明晰を好むグラーフ・ツェッペリンにとって、曇天は昼には好ましいが夜には厭わしい。世界はまったく不条理だ。
かすかな光量の空に一瞬だけティーポットが見えた。いつのまにか金剛のティーセットは消えていた。いつの間にか飛び去っていたのか。暗がりで気付かなかった。グラーフ・ツェッペリンはその「天空のティーポット」を思い馳せた。
誰も空にティーポットが浮かんでいたなんて信じないだろう。でも、グラーフ・ツェッペリンはその存在を確かに知っている。
以下略
27
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名無しNIPPER
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2016/08/13(土) 02:09:50.95 ID:IPF1yQGEO
恐らく純愛ものなのではないでしょうか?
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