13: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:09:53.06 ID:O4qi00qi0
「うわぁ、行きたくねー」
いっそ幻覚のほうがましだ。しかし、この状況を無視もできない。困惑した様子の後輩にだって謝らないと。
ため息を吐いてから、ぼくは部屋に足を踏み入れる。ぼくに気づいた後輩に目で悪いねと伝えると、安堵の色を浮かべて自分のデスクに戻っていった。ヘレンさんの前で立ち止まる。
14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:11:15.58 ID:O4qi00qi0
意味不明だけど、なんとなく納得させられてしまう。
世界レベルは伊達ではないらしい。
「で、なにやってんですか。レッスンはもう終わってるでしょう」
15: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:12:55.68 ID:O4qi00qi0
きっと思いつきではなくて、初めからぼくを誘うつもりだったのだろう。
ヘレンさんの服装は白い無地のブラウスと、タイトなジーンズに濃い紫色のショルダーバッグ。普段と比べると地味と言えるし、換言すれば目立たない格好だった。
スーツの男と歩いても自然な格好。ヘレンさんは意外と気遣いのできる大人なのです。
16: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:14:32.55 ID:O4qi00qi0
「塩二つ!」
「だそうです、お願いします」
カウンターに通されて、並んで座る。ヘレンさんは水の入ったコップを持ちながら、愉快そうに笑った。
17: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:37:35.77 ID:O4qi00qi0
「あなたも世界レベルになりなさい! 小難しいことなんて考えないで、力で押し通すぐらいの気概を持つのよ!」
ラーメン屋を出て、駅に向かう道すがら、ヘレンさんは突然力説しだした。考えた結果、ぼくとは真逆の結論にたどり着いたらしい。
「私はあなたが持ってきた仕事なら、なんでも完璧にこなすわ! だからあなたはもっと気楽にいきなさい」
18: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:38:42.92 ID:O4qi00qi0
「ヘレンさんは余計なことを考えなくていいのです。それはぼくの仕事です、個人レベルの話です。だから、ヘレンさんは堂々としていてください。些事はぼくに任せてください。わかりましたか?」
子供を叱るようにいうと、ヘレンさんは一瞬ぽかんとして、それからおかしそうに笑った。そうだ、この人はこれぐらい明るくいてくれた方がいい。世界レベルに小さな悩みは必要ない。
「ずいぶんと言ってくれるじゃない! さすがは私の認めたプロデューサーね! いいわ、そこまでいうなら、私はもうなにも言わないわよ」
19: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:40:38.54 ID:O4qi00qi0
4.ススメ大人への道
「プロデューサーさんの思い描く大人らしさってなんですかー?」
給湯室からコーヒーを持って戻ると、ソファーに腰掛けている若葉さんに、昼休みのひと時に相応しい、間延びした柔らかい声音で首を傾げられた。手に持った結婚情報誌にでも触発されたのかもしれない。
20: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:43:00.12 ID:O4qi00qi0
明るい落ち着きを持った声とともに千枝ちゃんがやってきた。結婚情報誌と俺たちの顔を交互に見て、驚いている様子だった。
「お疲れ。いや、違うよ? 結婚はしないよ?」
「なんですぐに否定するんですかー。プロデューサーさん、千枝ちゃんのこと好きすぎますよぉ」
21: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:44:49.34 ID:O4qi00qi0
小学生になに教えてやがる。心で突っ込む。嬉しそうに真似をする千枝ちゃんの手前、注意もし辛かった。
「次はセリフ。私といいこと……」
言い切る前に、俺は立ち上がり若葉さんの頭を押さえる。
22: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:45:58.81 ID:O4qi00qi0
「どうです! これが大人の魅力です」
しかし、本人はご満悦だった。千枝ちゃんもおおーと感嘆の声を上げる。もうなにも言うまい。
続いて千枝ちゃんが右手を上げた。
23: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:46:30.46 ID:O4qi00qi0
終わりです。
依頼してきます。
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