過去ログ - 小梅「ありがとうを物語にのせて」
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1: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:09:00.08 ID:Uojde39To
TBSの時のお話です

・短め
・地の文形式
・初投稿なのでミスが多いかも

以上の点にご了承願います

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2: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:09:50.51 ID:Uojde39To

「いつか、その女の人が、お引っ越しして……大家さんが、部屋を点検したんだ。そこで……あるはずの部屋がないことに気がついて……壁紙をはがしてみると、釘がびっしり打ち付けられた扉が……」

 照明を落とした事務所で、私はぽつぽつと、語りかけるように話す。手に持った燭台の上で蝋燭が、私ときらりさんの顔だけをゆらゆらと危なげに照らし出す。きらりさんの大きな目が、不安そうにきょろきょろ動くのが可愛く見えて、つい口調にも熱が入ってしまう。

以下略



3: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:10:19.14 ID:Uojde39To
 丁度よく雷が落ちて、大音量とともに事務所を冷たい白に浮かび上がらせる。そのお陰で、きらりさんの肩が小さく跳ね上がるのがはっきり見えた。びっくりしてくれた。その事実についつい頬が緩みそうになるのを、なんとか押さえ込む。

「ぴいっ……!」

 蘭子ちゃんみたいな声をあげて、きらりさんが耳をふさぎ込んでしまった。聞き手がいなくちゃ、怖いお話も意味がない。猛回転していた口を止めて、照明を付ける。蛍光灯の刺さるような鋭い光に目が眩みそうになって、私はちょっぴり眉を寄せた。
以下略



4: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:10:59.53 ID:Uojde39To
「こんな感じで、だ、大丈夫なのかな……私、喋るのあんまり得意じゃない、けど……」

「でもさっきの怪談、とぉっても上手だったよ? アヤちゃん愛海ちゃん愛結奈ちゃん、それにPちゃんも一緒にいるんだし、心配しなくてもばっちしだと思うにぃ!」

「そ、そっか……ばっちしー……えへ……」
以下略



5: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:11:31.81 ID:Uojde39To
 蝋燭すら付けてないうえ、さっきまでの明るい部屋とのギャップもあって、一瞬本当に真っ暗にしか見えなかった。その暗さは、アイドルになる前の自分の部屋、一人でずっと映画を見ていた頃の部屋にどこか似ていて。どこか懐かしい、安心できるような気持ちを私は抱えていた。

 とはいえ、このままという訳にもいかない。テーブルの上に置いた懐中電灯を点けようと適当に腕を伸ばすと、柔らかくて暖かい感触がした。続いて暗闇の中に響く、ちょっと変わった悲鳴。

「にょ、にょわー!」
以下略



6: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:12:05.20 ID:Uojde39To
 そのまま付けると、前方の棚に光りの円がパッと照射され、そこに何もいないことを明らかにする。これでもう大丈夫、と喜ぶきらりさんを後目に、私は少し、ほんの少しだけつまんないような思いを感じていた。久しぶりの暗くて落ち着く空間に対する名残惜しさ、のようなもの。

「あれ?」

 そんな気持ちが通じてしまったのだろうか、急に光が消え、辺りがまた墨を垂らしたような暗闇に戻る。きらりさんが慌ててスイッチをかちかち切り替えてみるけど、一向に変化がない。
以下略



7: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:13:25.43 ID:Uojde39To
「……きらり、さん?」

「うーん? どうかしたぁ?」

 つい名前を呼んでしまったけど、その返事もいつも通りの明るさで。こんな密着していなければ、誰も気づかないだろう、そんなひっそりとした震え。でも、きらりさんが何かを怖がっていて、それを私に隠そうとしているのは、明らかだった。
以下略



8: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:13:52.77 ID:Uojde39To
「……ご、ごめん、なさい……」

 気づけば、呟きが漏れていた。きらりさんが首を傾げるのが気配でわかる。私が喋る度に、小さく動きが止まるのも。その原因は、きっと私。ぽろぽろと取り留めもなく、涙みたいに言葉がこぼれ出していく。振り続ける雨の音が、身体を打ち付けるように響いていく。

「その、私……きらりさんのこと怖がらせちゃって、怖いお話、いっぱいして……きらりさんの気持ち、考えないで……」
以下略



9: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:14:35.74 ID:Uojde39To
 後ろに急に引っ張られ、ぎゅっと軽く抱きしめられた。服越しに伝わる体温と、微かに聞こえる心臓の鼓動。私の髪をゆっくりと撫でながら、「あのね、小梅ちゃん」と優しい声をかけてくれる。

「きらりね、一度も小梅ちゃんのお話、嫌だって思ったことないよ?」

 私の気持ちに応じるように震える喉から、そんなはずない、とよれよれの声を絞り出す。助けてもらっているのに。そんな思いが胸いっぱいに詰まって、肺を押しつぶす。
以下略



10: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:15:05.72 ID:Uojde39To
 少し迷ってから、胴にゆったりと回されたきらりさんの手に、私はそっと自分の手をかさねる。芯から伝わる温もりに背を押されるようにして、私は強ばった口を開く。

「……き、きらり、さん」

 喉にはまだ少し怯えが残っていて、いつも以上につっかえながら喋る。なぁに、と聞き返すきらりさん。それに合わせ、その大きな体に支えられながら言葉を探す。
以下略



11: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:16:12.05 ID:Uojde39To
「さ、最初はよく知らなくて、びっくりしたけど……女の子は、その人がとってもいい人だってすぐ気が付いて、好きになったんだ……」

 とくん、とくん。私の鼓動ときらりさんの鼓動が重なって、心地よいリズムを産む。雨の音は、もう聞こえない。

「その人はね、すごく頼りになって、いつでも優しくて……」
以下略



12: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:16:40.20 ID:Uojde39To


 雨上がりの澄んだ空では、雲の合間から星がきらきら瞬いていて。その下を、私たちは進んでいった。

 お互いの温度を確かめるように、繋いだ手は離さないまま。
以下略



13: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:18:41.86 ID:Uojde39To
おしまい
きらりと小梅ってわりと対照的で相性いい組み合わせだなーとか思いながら書いてました

読んで下さった方ありがとうございます



14:名無しNIPPER[sage]
2016/11/28(月) 05:08:29.42 ID:W/2QpwmEo
よく分からん


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