【グラスリップ】透子「かけるくん?」
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136:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:08:02.79 ID:OU1b3DXA0
俺は教室を見回す。
そこまできっちりと物が整理されているわけではない。どちらかと言えば、気の赴くままに、雑然とした感じ。
けれど、よく見れば、煌めくもの、美しいものがそこかしこに隠れていて、それらは外に向けてひけらかされることなく、とても大事に、大切に、ひっそりと内に秘められている。
137:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:11:35.08 ID:OU1b3DXA0
俺は窓の外に目をやった。空には三日月が浮かんでいる。
「まだ雪が降ってるのか?」
「……ううん、もう降ってない」
138:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:27:40.16 ID:OU1b3DXA0
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翌朝、俺たちはジョナサンの鳴き声で目を覚まし、慌ただしく学校から抜け出した。
家に帰ってテントに入り、俺は寝袋を敷くのも面倒でそのままぐったりと横になる。
139:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:29:44.50 ID:OU1b3DXA0
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午後になり、透子の家族がうちにやってきた。
以前工房で見かけた透子の妹――深水陽菜は、可愛らしい赤のワンピースを着ていた。
140:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:33:34.38 ID:OU1b3DXA0
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軽い会食の後、俺は庭に出て芝生に水をやっていた。
リビングでは、両親たちが世間話に花を咲かせながら、デザートの準備をしている。
141:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:39:01.60 ID:OU1b3DXA0
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いつもの高台の林の中に分け入って、俺たちは海と街が一望できる場所を見つけ、そこに腰を落ち着けた。
そこで透子は、ぽつぽつと自分のことを話し始めた。
142:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:42:08.70 ID:OU1b3DXA0
「でも、そうじゃなくてもいいのかもしれない」
「え?」
「透子の家族と俺の家族が、一緒に母さんのピアノを聴くって、そんなこと思いもしなかったけど、それだけでも十分なんじゃないかって」
143:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:44:08.82 ID:OU1b3DXA0
そうして俺が覚悟を決められずにいると、突然、透子が何かに気づいて声を上げた。
「あっ……」
振り返ると、透子が食い入るように蜻蛉玉を覗き込んでいた。俺もそちらに目を凝らして、はっ、と息を飲む。
144:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:46:23.26 ID:OU1b3DXA0
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ガラス越しに見えた花火は、しばらくして打ち止めとなった。
それからは特に何も起こらず、俺たちは諦めて家に戻ることにした。
145:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:51:37.99 ID:OU1b3DXA0
「……母さんが、演奏旅行について一緒に世界を回らないかって、誘ってくれてる」
そう告げると、透子は目に見えて動揺した。
「駆くん……なに言ってるの? 駆くんがもうすぐここからいなくなるかもしれないってこと?」
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