32: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:21:19.28 ID:iX/HvtXE0
それにしても、愛、だなんて、私たち高校生には難しすぎるテーマではないだろうか。
台本には『愛』という言葉はたくさん出てくるけれど、それが主人公である私の役にとってどんな意味を持つ言葉なのか、いまいち理解していないのが正直なところだった。
私もまだまだ勉強不足なのだろう。
33: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:22:14.85 ID:iX/HvtXE0
ドラマの話題はそこで打ち切られた。
コンビニの前を通りがけに紗枝ちゃんがちょうど用事を思い出したと言って、それで私も一緒に寄っていくことにした。
どうやらお金を引き落とすらしかった。
ATMはすでに年配の方が一人、先に使っていたので紗枝ちゃんはその後ろでしばらく待つことになった。
34: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:23:20.96 ID:iX/HvtXE0
五
早朝、私と紗枝ちゃんはスタッフの方が運転するバスに乗ってロケ地へ赴いた。
35: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:24:26.50 ID:iX/HvtXE0
監督と一緒に管理人さんに挨拶に伺ったあと、さっそく機材が運ばれ、準備が始まった。
私たちキャストはまず演出家さんと話し合い、全体の進行から細かい位置取りなどを確認して、それから各々の準備に取り掛かった。
準備と言っても、衣装に着替えてメイクを終えてしまえば、あとは待機するだけだった。
36: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:25:05.88 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりちゃんも、すごく似合ってる。清楚で、キリッとしてて……本当に、素敵ね」
標準語で……というよりも、演じる役の言葉遣いで話す紗枝ちゃんの声に、私の心は不意にかき乱され、そしてあからさまに動揺してしまう。
別に今日が初めてというわけでもないのに。
37: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:26:12.45 ID:iX/HvtXE0
「……はい。あとは大丈夫?」
「え、ええ……たぶん、大丈夫だと思います」
38: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:26:41.44 ID:iX/HvtXE0
「そういえば……」
紗枝ちゃんはふと思いついたように話題を変えた。
この町に有名な和菓子のお店があるらしいとか、時間が空いたら屋敷の中を散策してみようだとか、そんな他愛のない話をして、上機嫌にはしゃいでみせた。
39: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:27:45.57 ID:iX/HvtXE0
不安はなかった。
心構えはできていたはずだった。
緊張こそしていたけれど、うまくやってみせる自信はあった。
40: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:28:22.35 ID:iX/HvtXE0
五つめのカットのあと、休憩が入った。
私はすでに申し訳なさと恥ずかしさと情けなさとですっかり気落ちしていた。
紗枝ちゃんはそうした私の不調をいち早く察してくれたらしかった。
41: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:30:37.21 ID:iX/HvtXE0
「やっぱり場慣れしてないと、難しいわよね。特にロケなんかは……」
「……ええ。思うようには、いかないものですね」
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