67: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:21:02.73 ID:iX/HvtXE0
特に顕著だったのは、彼女が不機嫌になった時である。
仕事か、お稽古事か、あるいは勉強か、いずれにせよ何か嫌なことがあると彼女は静かに怒りを溜め込み、さりげなく私にその不満をぶつけることがあった。
それは愚痴で済む場合もあれば、時には暴力めいた行為となって襲い掛かる場合もあった。
68: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:21:56.53 ID:iX/HvtXE0
「うちが死んだら、ゆかりはんも一緒に死んでくれる?」
ある夜、ベッドの中で突然、紗枝ちゃんが言い出した。
蒸し暑い夜で、私たちは少しばかり汗をかいた後だった。
69: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:22:32.83 ID:iX/HvtXE0
が、どちらにせよ泣いている彼女に対して私がしてあげられることと言ったら、物言わぬ人形のようにじっとし、彼女の欲しがるままにこの肉体を差し出すくらいなものだった。
けれど私にはそれだけで十分だったのだ。
70: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:23:06.59 ID:iX/HvtXE0
九
学校からの帰り、紗枝ちゃんと駅で落ち合う約束をしていた。
71: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:23:34.65 ID:iX/HvtXE0
外に出ると、街は今にも雨が降り出しそうな気配だった。
私はふと往来の中に手をかざして空を見上げた。
そして何気なく、
72: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:25:31.71 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりはん、肩が……ちょっと、こっち向いて」
エントランスで立ち止まり、紗枝ちゃんが鞄からハンドタオルを取り出して拭いてくれた。
73: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:26:25.25 ID:iX/HvtXE0
「……やっぱり、その……少し、恥ずかしいですね」
「ふふ、いまさら照れんでもええのに」
74: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:27:03.18 ID:iX/HvtXE0
それからしばらく、私と紗枝ちゃんは撮影を振り返りながら思い思いに感想を言い合っていた。
「……なんだか、難しいストーリーだったね」
75: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:28:04.86 ID:iX/HvtXE0
ドラマの大筋は、主人公ノラが、そのわんぱくさと無邪気さゆえに友人ハルの病態を悪化させてしまい、罪悪感と自責の念に苦しみながらも、一方では自分が傷つけたはずのハルによって救われていく、というものだ。
要するに、ある平凡な少女のささやかな青春譚である。
このドラマではそうした大まかなストーリーを中心に、他の生徒たちや先生との交流、あるいはちょっとした事件などが描かれていて、お話自体はそこまで複雑ではない。
76: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:30:03.24 ID:iX/HvtXE0
「……ゆかりはん?」
「え?」
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