過去ログ - キリコとコブラでむせる
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6:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:14:59.41 ID:n3CjMYIK0
 激しいドラムとベースのリズム、耳を聾するエレキギターの咆哮。カウンターに並ぶスティールにふたりは腰を下ろした。
 コブラがバーテンにライトビールを二つ注文した。キリコはあまり酒が飲めない。ビールを嗜む程度だ。
 この前、コブラがバーボンを奢ってやったら、酒の度数にキリコは顔をしかめていた。

 薄暗い照明、天井からつり下がった裸電球は、絞首台にぶらさがった死刑囚のように音もなく揺れていた。
以下略



7:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:15:46.78 ID:n3CjMYIK0
 低い空、暗雲が重く圧し掛かってくる。森と森を隔てる川──黒い急流を二体のスコープドッグが泳ぐように突き進む。
 水深に足を取られないように注意しながら、岩床の裂け目に流れ込む、強く引っ張るような川の力をふたりの男は感じていた。

 川岸にたどり着き、泥濘を踏みつけながら、キリコは辺りに敵兵が潜んでいないか警戒した。
 地面から突き出た岩場の影、生い茂った茂みの中、苔むした倒木にカモフラージュし、敵はどこからでも飛び出してくる。
以下略



8:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:16:12.53 ID:n3CjMYIK0

 ふたりが左右に旋回しながら、敵の銃弾を回避する。キリコの撃った数発の弾が敵の装甲を貫いた。
 ポリマーリンゲル液に引火し、一機のツヴァークが回りの仲間を巻き込んで爆破した。

 鼓膜を震わせる爆音、吹き上がる紅蓮の炎、機体の破片が岩肌に突き刺さる。ゴーグル越しにキリコは敵を見据えた。
以下略



9:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:16:52.41 ID:n3CjMYIK0
 ミッター橋が強い突風にあおられて、グラグラと揺れるように傾いだ。キリコが橋の中央までいくと、橋下を見おろす。
 打ち寄せる汚水の波が、コンクリートの壁を引っかいている。
 排水溝が垂れ流す廃棄物──ヘドロの川から昇る異臭がキリコの鼻腔を撫でた。

 コブラの左腕は義手だった。義手の中に仕込まれていたのは銃だ。
以下略



10:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:17:33.80 ID:n3CjMYIK0
 コブラとキリコが良く集う、その酒場の名前は「ハッシュ・ハッシュ・ハッシュ(マリファナだらけ)」といった。
 何故、そんな名前なのかは誰にもわからない。バーテンですら知らなかった、
 
 酒場に陽気なサックスが響いた。赤々と燃えた葉巻の煙を吐き出し、コブラが空になったグラスをコースターに置く。
 溶けかかった氷がグラスにぶつかり、カランと音を鳴らした。
以下略



11:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:19:21.65 ID:n3CjMYIK0
 ファッションモデルのようなスタイルだ。

 腰から垂れ下がった弛んだガンベルトが、美女の白い尻の辺りで止まっていた。

 コブラの視線が女の相貌を射抜く──ジェーン──女は殺されたジェーンと瓜二つだった。張り詰めるコブラの鼓動。
以下略



12:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:21:38.93 ID:n3CjMYIK0
 「賞金稼ぎ兼ボトムズ乗りってとこかしら。この星にはお尋ね者も多いし、傭兵仕事も腐るほどあるから、稼ぐには持って来いよ」
 コブラがスツールの背にもたれかかり、ヒューっと口笛を吹いた。

 「女のボトムズ乗りかあ、渋いねえ」
 突然、バーテンの笑い声がカウンターに響いた。腹を抱えてひゃっひゃっひゃと笑い続ける。
以下略



13:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:22:18.25 ID:n3CjMYIK0
 「ナチ、一杯どうだ?」
 「頂くわ」
 キリコが酒の相手をしないとわかると、コブラはナチを酒の相手に選んだ。コブラがナチを見て、溜息を漏らす。
 「はあ、しかし勿体ねえな。こんな美人だってのに、男とはね」
 「残念だったわね」
以下略



14:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:23:07.31 ID:n3CjMYIK0
 特大スクリーンの向こう側では、顔面にアームパンチを叩き込まれたスタンディングトータスが、派手に転倒した。

 変形したコックピットのハッチから、夥しい血が溢れ出す。スタンディングトータスに乗っていた奴は間違いなく即死だろう。

 「くそっ、くそっ、くそったれっ、これで有り金全部スっちまったっ」
以下略



15:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:23:37.17 ID:n3CjMYIK0
 ハンモックから身を起こし、キリコは揺りかごで眠る赤ん坊を見た。ハンモックから降りる。
 それから赤子を起こさぬように、キリコは椅子にかかった耐圧服を静かに着た。

 埃で汚れた窓から、黄金色に輝く太陽の陽射しがまばゆいている。キリコは軽い眩暈を覚えた。
 安普請な作りの宿屋の階段をおりて、食堂にいく。
以下略



16:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:24:12.73 ID:n3CjMYIK0
 赤い酸の雨が降り注いだあとの街中は、いつも嫌みったらしく空気がじめついている。
 クエント人の大男が、雨上がりの路地をノシノシと歩いていた。
 「ル・シャッコ、あんたの古い知り合いってのは、ここら辺の近くにいるのか」
 「そうだ」
 シャッコが、隣にいる男の問いかけに簡潔に答えた。クエント人は総じて寡黙である。
以下略



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