過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
1- 20
1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:06:16.49 ID:f2pJeNOlo

◇序

 これから僕が記す文章は、昨年八月から九月にかけての一ヵ月のあいだ僕を悩ませたある出来事についての記録として読んでもらいたい。
 おそらく大半の人間にとっては、この文章は何の役にも立たないものになるはずだ。ある種の人間にとっては有害ですらあるかもしれない。
 そう感じた時点で、この手記のページを閉じてくれて構わない。
 なんだ、こういう類のものか、と、眉をひそめて忘れるのがいいだろう。それがお互いの為だ。
 僕は何も誰かを不愉快にさせたくてこんなものを書いているわけではない。そのことを覚えていてくれれば幸いだ。
 
 反対に、こういったものを必要としている人間がいるはずだと僕は思う。
 この言い方は正確ではないかもしれない。
 僕はこういったものを必要としてくれる人間がいるものだと信じたいのだ。
 もしかしたらそんな人間はこの世にいないのかもしれない。
 こんな記録を必要としているのは、ひょっとしたら僕一人なのかもしれない。
 それは今の僕には判断のつかないことだし、またどちらでもいいことでもあった。
 いずれにしろ、僕は書くことに決めたし、決めた以上は書ききってしまいたいと思う。

 そうするために、僕はいくつかの不愉快な過去を自分の手で掘り返さなければならないだろう。
 いくつかのかさぶたを剥がさなくてはならないし、ひょっとしたらその傷口に指を突っ込んで掻きむしらなければならないかもしれない。
 それはもちろん、僕にとってもできるなら避けたいことだ。



SSWiki : ss.vip2ch.com



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:06:52.48 ID:f2pJeNOlo

 けれど、そうしなければ前に進めないという場合がある。何らかの新しい展開を望むとき、痛みが不可欠な場合は往々にして存在する。
 あるいは、痛みや不愉快に耐えた先で得たものがまったくの徒労だったという場合もあるだろう。
 それならそれでかまわない。つまり本当のところ、この文章を書くことで僕が得たい結果とは、展開ではなくて納得なのだろう。
 これを記すことは、僕にとっては単なる記録で、整理でしかない。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:07:19.79 ID:f2pJeNOlo

◇一


 彼女がいなくなったのは、七月二十六日のことだった。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:07:46.33 ID:f2pJeNOlo

 彼女は怒らなかったし、僕を説得しようともしなかった。
 どちらにしても彼女の態度は同じだったし、そうである以上僕の返事も同じだった。

 じっさい、彼女の語るあれこれよりもよほど切実な問題が、現実には山ほどあるように、僕には思えた。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:08:15.64 ID:f2pJeNOlo

「遠くにいきたいな」

 と、ときどき彼女はそんなことを言った。

以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/10(月) 22:08:37.42 ID:2XJa1cavo
きもちわるい


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:08:50.18 ID:f2pJeNOlo

 三週間後の土曜日、彼女がひとりで暮らしていたアパートの部屋を、彼女の叔父が訪れた。
 
 部屋の中は整然としていた。生きる為に必要なもの、便利なものはあっても、それ以上の余分なものはなにひとつなかった。
 部屋にあったのは無愛想な机と最低限の筆記用具、それから低めのテーブル、小さめの冷蔵庫だけだった。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:09:24.54 ID:f2pJeNOlo




 これは携帯電話についての話ということになる。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:10:07.91 ID:f2pJeNOlo

◇二


 ドアがあった。数は数えきれない。その部屋には無意味な壁があり、無意味な扉があり、無意味な窓があった。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:10:34.55 ID:f2pJeNOlo

 敷地の全容は中で働いているものにしか分からない。外側からは把握できないほど広いのだ。

 ショールームは門のすぐ傍にあり、こちらは一般にも開放されていた。
 僕は夏休みで暇を持て余した小学生の姪を連れて、近所の自宅からこの工場へと歩いて向かった。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:11:02.93 ID:f2pJeNOlo

 ヒーローショーに間に合うような時間に出発したものの、それを楽しむのが目的ではなかった。
 むしろ、目的なんてなかったと言ってもいい。姪は今年十歳になる。僕とは七歳離れていた。
 
 十歳ともなれば、ヒーローショーを無邪気に楽しむ、とはいかない。しかもその日のショーは男児向け。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:11:29.42 ID:f2pJeNOlo

 でも実際にはこんなものだ。たまの休みに一緒に出掛けるでもなく、弟に世話を押し付けて自分は服を買いに出かけている。
 それを不満に思わないと言ったら嘘になる。でも、姪と遊びに出かけるのが不愉快というわけじゃなかった。

 姪は、母親が反面教師になったのだろう、子供の割に落ち着いていてしっかりしている。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:11:55.73 ID:f2pJeNOlo

 姉はときどき姪につらく当たる。姪もまた、母親が自分を疎んじていることを感じている。 
 だからこそ彼女はそんなとき、あまり母親に近付かない。母親にどれだけ話したいことがあっても黙っている。
 嵐が過ぎ去るのを待つかのように。

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/10(月) 22:12:23.38 ID:f2pJeNOlo
スレタイミスったけど書きます


15:たわし ◆TAWaSIT2OA[sage]
2012/09/10(月) 23:41:46.47 ID:LmHYcKlIO
さっさと書け太郎


16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2012/09/11(火) 09:53:42.87 ID:L4GJcbPDo
期待してる


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/09/11(火) 11:46:06.58 ID:Id582b34o

◇三
 

 案の定、姪はヒーローショーには興味を抱かなかったようだった。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/11(火) 11:47:34.48 ID:Id582b34o

 僕のそんな感情を、姪はよく察した。そのたびにかわいそうなほどうろたえる。 
 僕が母親について些細な(本当に些細な)文句を言ったときでさえ、彼女はひどく悲しんだ。
 
 彼女は別に、僕が言うことが間違っているとは思っていないだろう。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/11(火) 11:48:33.65 ID:Id582b34o

 十分に遊んで満足し、僕らはもう一度外に出ることにした。
 先を行く姪の背中を見ながら展示場を歩いていると、不意に視界の端に何かが引っかかった。
 妙に気にかかって、その正体を確認する。

以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/11(火) 11:49:50.47 ID:Id582b34o

 背筋が粟立つのを感じた。僕は扉から少し離れた。ひどく気味の悪いものを見たような気分。
 なぜ、どこにも繋がっていない扉に鍵がかかっているんだろう。開けるための扉に、なぜ鍵がかかっているんだろう。
 ひどく不安な気持ちになる。その気持ちを振り払うために、ことさら明るく考えようとした。

以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/09/11(火) 11:50:31.74 ID:Id582b34o

 中庭のヒーローショーは既に終わっていて、悪役の着ぐるみが風船を配っている。
 小さな子供たちが風船にはしゃぐ様子を見て、姪がうずうずしていたようだったので、「もらっておいで」と声を掛ける。
「いいの?」という顔で僕を見上げてから、少しの間逡巡していたが、彼女は結局駆け出した。

以下略



879Res/670.75 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice