7: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:00:22.75 ID:nlsr789Z0
あの日のことは白昼夢だったのだろうかと考え始めた一週間後。
それまで何一つ起こらなかった少年の心に、些細な変化が現れた。
男子「おい、俺の代わりにやっといてくんねえ?」ニヤニヤ
8: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:00:50.65 ID:nlsr789Z0
少年「……」
少年は口も開かず、かといって箒も取らずに立ち尽くした。
産まれてこの方、湧いたことのない感情に戸惑っている。
9: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:01:38.89 ID:nlsr789Z0
それからも"蜃気楼"によるものだと思われる感情操作は続いた。
その度に少年は得たことのない感情から不安になり、心から恐怖した。
「それが哀しィってことだ。
君は今まで現実を直視してィなかったから、哀しみを覚えたことはなかったようだな」
10: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:02:36.29 ID:nlsr789Z0
日毎に"蜃気楼"の声は大きくなり、言葉数は比例して増えていく。
「不思議なものだな。姿形を成してなィ俺の方が人間らしくて、
人から産まれて人型の君に感情が欠乏してィる。
人間はなにを以て人間と定める? なんて、少々哲学が過ぎるが。
11: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:03:09.94 ID:nlsr789Z0
"蜃気楼"は事あるごとに少年へ話しかけた。
感情云々だけではなく、くだらない内容の話も次第に増えた。
「おお、少年。これはなんだ、なんとィう食べ物だ」
12: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:03:54.49 ID:nlsr789Z0
男子「おい、宿題みせろ」
何度も何度も巫山戯た男だと、半ば少年に自分を重ねて"蜃気楼"は怒りの種を蒔いた。
少年「……」
13: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:04:44.14 ID:nlsr789Z0
ある日の日曜日、少年は"蜃気楼"の要望により散歩をしていた。
「散歩に行こう、少年」
少年「……嫌」
14: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:05:28.14 ID:nlsr789Z0
「とりあえず人の多ィ街に出よう。閑静な住宅街では感情の動きようがなィ」
電車に乗って三十分。少年は滅多に訪れることのない都会に着いた。
「さて、適当にぶらつくとしようか」
15: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:06:29.26 ID:nlsr789Z0
結局無駄足だったかと二時間程少年を歩かせて"蜃気楼"は諦めかけていた。
その時、偶然にもありがたい事故に会う。
女「あれ? 少年くん?」
16: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:07:51.16 ID:nlsr789Z0
「ならば哀しみの種はどうだ。
ここまで気にかけてくれてィるのに、なにも返せなィ自分を悔やむんだ」
しかしその種もまた恐怖が飲み込んでしまう。
暗雲が轟く空の下で"蜃気楼"は唐突に笑顔になった。
17: ◆QkRJTXcpFI[sage saga]
2012/11/30(金) 12:08:47.82 ID:nlsr789Z0
「どれだけだ! どれだけ君は怯えてィれば気が済むんだ!
好きな子と偶然ばったり出会ったのだろう!? 喜べよ! 両手を挙げて喜べよ!」
「ここは〈ど、どうしよう、なに話したらィィんだろう〉って困惑する場面なのだよ!
それでも男の子か君はあああああああああ!」
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