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2013/05/18(土) 07:53:10.10 ID:0FhXK3hqo
綺麗な赤い絨毯。真っ白な天井と壁。
窓の外の様子を見ると、いつも通り、覆いかぶさるような灰色の雲から、雨粒が静かに降り続いていた。
それでもたしかに、太陽はおぼろげな光を携え、東の空に浮かんでいる。
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2013/05/18(土) 07:53:36.62 ID:0FhXK3hqo
この広々とした屋敷にいるのは、わたしの他にはたったひとり。
メイドを自称するシラユキという少女だけ。
いつからなのか。
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2013/05/18(土) 07:54:17.83 ID:0FhXK3hqo
◇
厨房の扉を開けると、シラユキの姿が見えた。
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2013/05/18(土) 07:55:13.20 ID:0FhXK3hqo
きしきしと音が立つような寒さの中、まだ薄暗い厨房で、彼女の立ち姿はいつもより頼りなく見えた。
厨房の入口で立ち止まったわたしに気が付くと、シラユキはふわりと笑う。
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2013/05/18(土) 07:55:41.79 ID:0FhXK3hqo
「なんですか、急に?」
シラユキは戸惑った風な声音で言う。
後ろから抱きついているせいで顔が見られないことを、わたしは少し残念に思った。
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2013/05/18(土) 07:56:08.03 ID:0FhXK3hqo
「そんなこと言わずに、味見させてよ」
「……かまいませんけど」
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2013/05/18(土) 07:57:47.33 ID:0FhXK3hqo
◇
屋敷には大きな姿見があるから、わたしは自分の姿をちゃんと確認することができる。
わたしの髪は真っ黒にくすんでいて、瞳も焦茶色に近いが、ちゃんと確認しないと黒っぽくしか見えない。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:01:08.68 ID:0FhXK3hqo
この屋敷に来たのがいつだったか、正確には思い出せない。
つい最近だという気もするし、ずっと前だという気もする。どうもはっきりしないのだ。
というよりわたしには、そんなに昔のことがよく思い出せないのだ。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:02:26.92 ID:0FhXK3hqo
◇
「最近、嫌な夢を見るの」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:03:54.12 ID:0FhXK3hqo
昼になれば少しは暖かくなるけれど、この街の朝は、凍えそうに寒い。
けれど、この張りつめたような冷たい空気が、わたしは嫌いではなかった。
「誰かがわたしの名前を呼んで、どこかに連れて行こうとするの」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/18(土) 08:05:15.81 ID:0FhXK3hqo
「その人は、何かを言っていたんですか?」
「分からないけど、"駄目だ"って」
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