1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:30:36.76 ID:U5p14p78o
「咲-Saki-」の二次創作SSスレです。
とある別作品を下敷きにしたパロディ物になりますので、パクリだなんだとおっしゃらずに生暖かい目で見てもらえれば。
ゆっくりペースで週に一、二回ほど数レスずつの更新になると思いますが、完結までお付き合いくだされば幸いです。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:31:35.25 ID:U5p14p78o
尾道の風景は、どこか懐かしい。
私こと小走やえがこの街に住み始めてからまだ一年も経ってはいない。
しかしそんなこととは関係なく、私は勝手にこの街に対して郷愁を覚えるのだ。
長い長い坂を登りながら、私はふと後ろを振り返り、これはまるで昔読んだ物語の風景のようだと思った。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:32:09.85 ID:U5p14p78o
「ふぅ……ようやく帰宅……か」
小走やえ、28歳。今日も仕事を終え、誰も待つ者がいない1Kの我が家へと帰る。
十二月も半ば、師走の名の通りに日々はあっという間に過ぎていく。
吹きすさぶ寒風からとっとと逃げ出したいと、小走りとは言わないくらいの早歩きで家路を急ぐやえだった。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:32:53.04 ID:U5p14p78o
いつしか新生活にも慣れ、生活に余裕が出てくる。
ファミレスで人生初のアルバイトもやったし、人並みに恋愛の真似事のようなことだってした(ようで、結果的には何もしていないのと同じだったりはするのだが)。
思えばこの頃が、人生で一番自由で楽しかった時期かもしれない。
人生最後の夏休みみたいな時間はあっという間に過ぎてしまって、気付いた時には現実と向きあわなければならない時期になっていた。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:33:29.63 ID:U5p14p78o
しかし美味しいと感じてしまうものは仕方がない。
肉汁、美味しいし。口の中でたまらない感じに香って、ほら、肉ッ!って感じの主張してくるし。
貧乏舌になったのも、こういう食生活をずっと続けてるからだろうなぁと、もさもさと食べながらそう考える。
就職してからこっち、ずっとこんな生活をしている。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:35:05.74 ID:U5p14p78o
最初の投下はここまでになります。
これからはある程度書き溜めをして、きりがいいところで数レスずつ投下、という形で更新予定です。
安価など読者参加要素はないですごめんなさい……
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/19(日) 23:43:24.95 ID:3g1JAyoeo
さびしんぼうってあのさびしんぼう・・・?
原作だと主人公は高校生だったような。いきなりアラサーのニワカ先輩とは意表を付かれました
乙、続き待ってます
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/20(月) 00:27:12.91 ID:wEizObClo
アラサーの小走先輩か
続き期待
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:19:04.97 ID:1Ac64vbSo
更新しますよ
>>7
あの尾道三部作のさびしんぼうです。
ですがさびしんぼうの他にも下敷きになる作品があるので、アラサー小走先輩という設定になりました
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:19:46.34 ID:1Ac64vbSo
「それで先輩、今日は朝から浮かない顔なんですか」
「こたつって寝始めるのには最高なのに、いざ一晩過ごしてみると全然疲れが取れなくて『詐欺だ詐欺!』って言いたくなるな……」
凝った肩と首筋をぐりんぐりんと回しながら、やえと初瀬は社内大掃除の準備を進めていく。
岡橋初瀬――晩成高校時代からのやえの後輩だ。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:20:22.30 ID:1Ac64vbSo
「……よし、っと。どうです? 結構効いたでしょー?」
「おかげでかなり楽になったよ。それじゃさっさと掃除終わらせて帰るとするかー」
他の人たちはとっくに掃除を始めている。
自分たちも割り当てをさっさと終わらせて美味い飯でも食べに行くか、とやえと初瀬もいそいそと動き出した。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:20:55.01 ID:1Ac64vbSo
気付いたときには身体はもう動いていた。バランスを崩し踏み台から転がり落ちそうになっている初瀬の身体を受け止める。
――が。
どかっ! ……ばさささささー
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:21:36.25 ID:1Ac64vbSo
◇
「それじゃ、お疲れ様でしたー!」
「おつかれー。いやー、ひと仕事終えたあとのビール、最高だな!」
「ですよね!」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:22:05.38 ID:1Ac64vbSo
「先輩の前でこんなこと言うのもアレですけど、私、もう26なんですよ。四捨五入すればとっくに三十路なんですよ。
ただ、やってることなんて学生のときからそんなに変わらなくて……楽しいけど、でもこのままでいいのかなって。
昔はね、大人になったら大人の楽しみが増えると思ってたんですよ。落ち着いたり、些細なことに幸せを見いだせるようになったり。
でも実際、そんなことないんですよね。まだまだ全然幼稚なままで……本当の幸せはどこかにあるはずだって、まーだ夢見てる」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:22:40.70 ID:1Ac64vbSo
◇
家に、着いた。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、まだ少し酔いの残る頭を冷やすようにごくごくと飲んでいく。
時計を見てみると、もう少しでてっぺんを越えるところだった。また明日も仕事だ。年が明けるまでは少し忙しい時期が続くだろう。
歯を磨きながら、初瀬の言葉を反芻する。幸せは――妥協することで生まれるものなんだろうか。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:23:07.84 ID:1Ac64vbSo
ますます色んな考えがグルグルグルグルと回り続けて、ようやく出た一言は、
「お前……いったい誰だ?」
「ちゃちゃ……あっ。……コホン。さびしんぼうじゃ」
「さびしんぼう?」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/21(火) 16:24:30.22 ID:1Ac64vbSo
今日の更新はここまでになります
今週末まで少し用事が詰まってますので、次の更新は週明けになるかと思います
しょっぱなから間隔があいてしまって申し訳ないです
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/21(火) 19:15:10.43 ID:1/MaC8Q4o
乙。そうか、広島か
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/22(水) 17:41:50.38 ID:/tzh7ONQo
広島弁で一瞬まこかと思ってしまった
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/30(木) 03:39:07.11 ID:ffHVc6Tm0
◇
目をぱちくりとさせても、目の前の幽霊は消えやしなかった。
そもそもやえには、さびしんぼうと名乗った少女が幽霊には見えなかった。
幽霊というのは、もっとこうおどろおどろしい感じで、顔面蒼白で、足も消えてるものじゃないのか。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/30(木) 03:39:38.20 ID:ffHVc6Tm0
少女――さびしんぼうは、そこでふと、寂しげな表情を浮かべた。
懐かしむような。思い出すような。そんな表情だった。
しかしその顔は、一瞬で元の笑顔に戻る。
「――ヒ・ミ・ツ♪ じゃ♪」
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