過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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2013/05/22(水) 00:02:17.05 ID:GshVNNRdo
魔王の城を望む丘の上で、恐らく最後となる野営を行っていた。
禍々しい沼地の中心に聳える魔の居城は、ただ見ているだけでも正気を蝕まれるようだ。
空を貫くように伸びた無数の尖塔。
夜だというのにその上をなおも飛び続ける、鳥型の低級な魔物の群れ。
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2013/05/22(水) 00:03:07.18 ID:GshVNNRdo
勇者「……長かったな」
木から削り出した不格好な器に口をつけてから、火を囲んで座る仲間へと語りかける。
なけなしの干し肉と野菜の残りで作り、ささやかな塩で調えたスープは、まるで舌を試しているかのように薄味だった。
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2013/05/22(水) 00:04:52.43 ID:GshVNNRdo
野営地から少し離れた森の中、泉のほとりに二頭立ての馬車が停まり、馬は索具を解かれて、水を飲んでいた。
魔王の居城のすぐそばにあるというのにその泉は冷たく透き通り、昼であれば水底の魚影までも見て取れた。
まるで自然界が魔王の力に抗おうとしているかのように。
もしくは、魔王自身が――――自らに挑む者への、最後の『休息地』として用意したかのようにも見えた。
二頭の馬は聞き慣れた足音がふたつ近づいてくると耳をそばだて、水面から口を離し、振り返る。
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2013/05/22(水) 00:06:23.15 ID:GshVNNRdo
杖に魔力を込め、一振りする。
たった、それだけの動作で――――二頭の『仲間』とその馬車は、目の前からいなくなっていた。
蹄跡と轍、そして草の上に落ちた数本のたてがみを除いて、もはや名残は無い。
魔法使い「さ、終わった終わった。……戻って、『最後の晩餐』にしましょ」
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2013/05/22(水) 00:07:24.38 ID:GshVNNRdo
僧侶「……魔法使いさん?」
魔法使い「え?」
僧侶「大丈夫ですか? いえ。『城』が目の前にあるのに……『大丈夫』なはずが……」
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2013/05/22(水) 00:08:09.14 ID:GshVNNRdo
魔法使い「あ、そうだったわ。……ってかあいつら、もう食べてない!?」
僧侶「えっ?」
煮炊きの香りと木々のざわめく音に紛れて、男二人の談笑が聴こえる。
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2013/05/22(水) 00:08:48.10 ID:GshVNNRdo
皆が寝静まった頃、勇者は火の番をしながら、魔王の城を見ていた。
二つある天幕の内、ひとつは僧侶と魔法使い。もう一つは、戦士と勇者のものだ。
もう少しもすれば、魔法使いと番は交代になる。
勇者「…………旅が、終わるな」
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2013/05/22(水) 00:09:33.18 ID:GshVNNRdo
魔法使い「…………今、何時……?」
その時、天幕の一つから、魔法使いがのそのそと出てきた。
毛布を羽織ったまま、いつもの帽子を寝乱れた頭にかぶって。
声は、眠っていたようには聞こえない。
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2013/05/22(水) 00:10:02.32 ID:GshVNNRdo
木製のカップに、火にかけられていた鍋から飲み物を注いで魔法使いに手渡す。
次いで自分の分も入れると、ようやく、『魔法使い』と『勇者』は切り株の上に肩を寄せ合う。
二人で座る分のスペースは無いかとも思ったが、意外にも、座ってみれば気にならなかった。
魔法使い「……お湯じゃん、これ」
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2013/05/22(水) 00:10:40.68 ID:GshVNNRdo
肩を寄せ合い火を見つめ、語らう中で勇者は気付いた。
彼女は、くっと視線を巧みに逸らして、決して魔王の城を見ない。
顔を上げず、隣に座る勇者の顔にさえも顔を向けない。
勇者「…………」
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2013/05/22(水) 00:11:18.26 ID:GshVNNRdo
勇者「……俺達だから、ここまで来れた。だろ?」
魔法使い「はいはい。どうせもう帰れないわよ。なら、やってやろうじゃないのさ」
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