31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/27(金) 22:01:11.08 ID:EWTP6gU8o
気まずさを振り払うようにぼくは彼に訊ねた。
「ぼくはコウスケ。彼女はシナノ。あなたは?」
「セミだ」
ぼくは怪訝に思って、眉を寄せた。
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/27(金) 22:01:40.27 ID:EWTP6gU8o
「セミさんはどちらに?」
「いやまあ、決めてない」
「え?」
「変か?」
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/27(金) 22:02:16.46 ID:EWTP6gU8o
「夜が閉じてる?」
間を持たせるためにセミさんにシナノにしたのと同じような話をすると、彼は興味深げに眉を動かした。
「分かります?」
「なんとなくは。どこにも行けない感覚ならよく知ってる」
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/27(金) 22:02:46.02 ID:EWTP6gU8o
「まあいいや。夜はメリーゴーランドに似てるんだ。いや、夜になって静かになると人生がメリーゴーランドじみてることに気づいてしまうのかもな」
今度は人生観からのアプローチか、とぼくは真面目ぶって頷いた。
いよいよ夜というものが分からなくなってきた気がする。
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/27(金) 22:03:18.04 ID:EWTP6gU8o
「……亡くなったんですか?」
「電車事故。あ、違うか。自殺」
遮断機の下りた踏切に入って、ぐしゃ。これまた軽い調子で言う。
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:47:20.90 ID:YmJTGkrvo
一際冷たい風が吹いて、襟ぐりから冷気が忍び込んできた。
誰にでも何にでも代替品はある、とセミは言った。正確にはチナツという女子高生の言葉だそうだが、それはいい。
それを聞いたとき、心臓がきゅっと縮む感じがした。
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:47:48.84 ID:YmJTGkrvo
「なに?」
シナノが怪訝そうにこちらを見上げた。
ぼくは首を振って続けた。
「セキセイインコを家で飼ってるんだ。いやぼくが買ったわけじゃないから飼われてるって表現が正しいけど」
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:49:33.51 ID:YmJTGkrvo
いつの間にか川向うに大きな建物、というより工場のようなものが見え始めていた。
こちら側には広いグラウンドのような土地がたびたび現れる。
不思議がるシナノにガス工場だ、とセミは教えた。
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:50:00.75 ID:YmJTGkrvo
「きっと全部吹き飛ぶぜ」
「全部って全部?」
「ああ。世界中のガスタンクに飛び火して、全部が全部ブッ飛んじまう」
「それちょっとよさそう」
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:50:31.56 ID:YmJTGkrvo
「どうしてだ?」
セミが訊いてきた。
表面上は特別感情はこもっていないが、どこか脅しめいたものを感じた。
「どうしてそう思う?」
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/28(土) 05:51:15.71 ID:YmJTGkrvo
それでもぼくはぼくの家のインコを守らなければならなかった。
ぼくにとってあいつは換えなんてきかないし、いなくなったら困る。
不格好に走り寄ってきて小首を傾げてこちらを見上げる様子が、ぼくは好きだ。
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