1: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:10:10.19 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「――起きるのです。暁美ほむら」
私の少し上から、聞き覚えのまったくない幼い声が落ちてくる。
それは年に似合わぬ、有無を言わさない凄みがある命令だった。
「……あなたは?」
目を開けると、懐かしいブレが私の視覚を撹乱した。酷くぼやける周囲。
魔法少女になってから、この感覚とはもう金輪際おさらばしたと思っていたのに。
はるか昔に離れた故郷に帰ったような不思議な気分を味わいながら、
そっと目頭を押さえ、魔力を目に注ぎ、視力を強制的に調整する。
そしてようやく網膜に、ベッドに横たわった私の傍で立って見下ろす、少女の顔の明白な輪郭が映る。
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2: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:13:26.79 ID:ejWaZZVNo
魔法少女基準で見ても相当に若い。
見た目は、どこにでもいそうな普通の小学生の女の子そのものだった。
3: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:15:23.96 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「大丈夫か?」
「は……はい……。ゲホッ、ゴホッ」
4: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:16:51.33 ID:ejWaZZVNo
喉に絡まる嘔吐寸前だった胃の中の物をまた飲み直すのは嫌だったけど、
だからといってその場に吐き出すわけにもいかないから、
ペットボトルに入った紅茶と一緒に飲み込んだ。
5: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:19:05.00 ID:ejWaZZVNo
「まあ、こんなこと今考えてもしょうがないか。はやくマミさんの家行こうぜ。
ほむら、重要な他の用事とか今日これからないよね?」
「あっ、はい。もちろんです」
6: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:20:45.21 ID:ejWaZZVNo
「ほら、マミさんもそんなぼうっと突っ立てないで肩組んでさ」
「え、ええ?」
7: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:22:39.03 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「いやー、どうにか間に合った」
「危なかったわね。あともう少しでアウトだったわ」
8: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:24:37.19 ID:ejWaZZVNo
「ん、そうだね。その方がいっか。……あー、とりあえず転校生、さん」
美樹さん、と呼ばれた私のクラスメイトは、腰を低く落として、剣を水平に、切っ先を前に向ける。
そして、言った。
9: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:25:48.30 ID:ejWaZZVNo
〜☆
また、失敗した。
まどかが死んでしまった。
10: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:33:47.34 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「この錠剤を持っておくのです」
「これは?」
11: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:35:29.72 ID:ejWaZZVNo
「どうして? 理由が必要なの?」
「当たり前なのです。人が何かを強く意識的に行おうとするなら、そこには必ず理由があります」
12: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:36:08.29 ID:ejWaZZVNo
「しかし私には、円環の理のためという確固とした理由があります。
だからこうして、世界のためだなんて自分を誤魔化すことなく、まっすぐな気持ちで御膳立てをしていられるのです。
円環の理の導きを取り戻すことが何よりも正しいことだと、なぎさは心の底から信じているから」
13: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:39:19.45 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「焦ることはないよ、ほむら。
願いなんてものはじっくり考えたらいいし、しなくてすむならそれが一番」
14: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:41:01.41 ID:ejWaZZVNo
「美樹さんには、しなくちゃいけない願いがあったんですよね」
「うん、必要だった」
15: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:43:29.16 ID:ejWaZZVNo
でも私に、自分の命を誰かのために賭けるなんてことができるんだろうか。
戦う前から、こんなに怖くてたまらないのに。
16: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:44:45.33 ID:ejWaZZVNo
〜☆
「アンタって、なんで契約したの?」
「私が契約した理由……。大した理由じゃないですけど、いいですか?」
17: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:47:56.16 ID:ejWaZZVNo
「……猫ぉ?」
「ええ。車に轢かれて死んじゃいそうだった猫を、治してあげたんです。……いけませんか?」
18: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:51:27.04 ID:ejWaZZVNo
「んー、そっか。
ほむらはアタシが、誰かのために願った魔法少女、ってものを苦手にしてること知らないもんね。
なら、マミさんのあの反応とアタシが結びつかなくてもしょうがないかな」
19: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:52:59.39 ID:ejWaZZVNo
〜☆
夜の見滝原、街路に照らされる道を私は全速力で走る。
目標は近い。
20: ◆2DegdJBwqI[saga]
2014/07/19(土) 21:54:31.42 ID:ejWaZZVNo
今更何を考えているんだろう。
死ぬ。そんなのは端からわかりきっていたことだった。
21: ◆2DegdJBwqI[sage]
2014/07/19(土) 21:57:02.64 ID:ejWaZZVNo
今日はここまで
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