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2014/08/30(土) 01:04:39.31 ID:Gqx9SXLWo
そうだ。あの日も寄り道して帰ったんだった。
「りっちゃん、りっちゃん」
「んー? なぁに、みおちゃん」
「あのね、……だいすきっ!」
「……えへ。わたしも!」
で、そっから七年くらい経って、
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2014/08/30(土) 01:05:59.44 ID:Gqx9SXLWo
◆ ◆ ◆
そこでじゃれ合ってる長い黒髪と明るい短髪の二人が
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2014/08/30(土) 01:08:12.89 ID:Gqx9SXLWo
お代わりを頼める相手はいなかった。
振り向けばすぐ後ろの席で
干からびた汗の塊みたいなスーツのおっちゃんが
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2014/08/30(土) 01:10:26.31 ID:Gqx9SXLWo
外で寄り添ってる二人もケータイを見てた。
無邪気にすり寄る短髪の女の子。
長い黒髪の女の子がちょっとどぎまぎしてるのに気づかない。
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2014/08/30(土) 01:12:39.82 ID:Gqx9SXLWo
昔もこんな光景をどっかで見た。
なんだっけあれ……と、甘ったるい味。
もう捨てようかないい加減これ。
思い出した。
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2014/08/30(土) 01:14:53.33 ID:Gqx9SXLWo
あのときもう少し幼かったら
あの女をひっぱたいてしまってたかもしれない。
でも、
さすがの私もその頃には喧嘩して敵を倒せばハッピーエンド、
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2014/08/30(土) 01:17:06.77 ID:Gqx9SXLWo
私のケータイもチカチカ光ってた。
見なきゃよかった。
不在着信、弟から。諦めが悪いな、って思わず笑う。
何様のつもりなんだろう、私ら。
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2014/08/30(土) 01:19:20.23 ID:Gqx9SXLWo
見下ろすと店の下で黒髪のあいつがケータイで喋ってる。
なにか焦った顔。
私は左のイヤホンだけ外して
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2014/08/30(土) 01:21:33.74 ID:Gqx9SXLWo
「どーゆう意味だよ。
ってか午後ティー買ってくるんじゃなかったの? おせえぞ」
ごめん、ちょっと立ち読みしてて、と謝る声が聞こえる。
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2014/08/30(土) 01:23:47.26 ID:Gqx9SXLWo
「はっ?おい澪、お前まさか――」
すぐ行くから待ってて、とだけ言い残して電話が切れた。
窓の外に目を走らせる。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:26:00.68 ID:Gqx9SXLWo
気づけば小さい方の女の子は、
黒髪の左手をつかんで抱きしめたまま泣きじゃくっていた。
黒髪ちゃんはその明るい髪をなでながら、
うまく気持ちを吐き出させるようにと背中をさすっているようだ。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:28:15.31 ID:Gqx9SXLWo
あわてて二人分のバッグをテーブルの上に載せる。
チャックが開いてて私の財布がテーブルにこぼれ落ちる。
店員はモップを構えて
ここぞとばかりに床拭き洗剤を塗りたくって行った。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:30:28.77 ID:Gqx9SXLWo
ガスト、セブン、カラ館、
ファミマ、東京サニタリーサー……飛ばしてまたファミマ、
ルノワール、ニューデイズ、セブン、ガスト、ダイソー、無印、セブン――
セブン多いなおい。
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2014/08/30(土) 01:32:42.23 ID:Gqx9SXLWo
あの子まだ泣きやまない。
コップの結露が濡らした指先と手の汗が混じって居心地悪い。
ちらかしたレシートに水滴が付かないように手首でどかすと
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2014/08/30(土) 01:34:55.73 ID:Gqx9SXLWo
ああもう、何してんだよ。
いっそこっち来いよ、ハッピーセットぐらいおごってあげるから。
動けない黒髪の子に短髪の子が強くしがみつくもんだから、
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:37:09.25 ID:Gqx9SXLWo
固まった。
一瞬、目が錯覚を起こしたのかと思った。
澪だ。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:39:22.79 ID:Gqx9SXLWo
腰にふたりしてしがみつかれて、澪が困ったように笑っていたら
(光の下まで二人に圧されたせいで
今度こそあいつの顔が見えてしまった)
向こうのビル一階のスタバの方から
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:41:36.21 ID:Gqx9SXLWo
階段を上ってくる足音で気付いて振り向くと、
新しいトレイに紙カップを二つ載せていた。
片方にはでかいスプーンが突き刺さっている。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:43:49.64 ID:Gqx9SXLWo
みんな寝てる、と澪がつぶやいた。
気付いてなかった。
綿のように柔らかく固まった空気が辺りに降りていて、
少し前まで突っ伏して寝てた私の方も眠気に誘われそうだ。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:46:03.09 ID:Gqx9SXLWo
高そうな腕時計を何度も見て舌打ちしている。
上着を抱えるとトレイを持って出て行こうとする。
そこに澪が呼びかけた。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/30(土) 01:48:16.49 ID:Gqx9SXLWo
「ね、律。この時間のマックって、なんだか守られてる感じしない?」
そう言う澪の後ろからまだ傾いた日差しが射し込む。
つややかな髪に淡い光が射して、まるで天使の輪っかのようだ。
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