過去ログ - 戦艦水鬼「光溢れる水面に、わたしも」
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:47:36.45 ID:qsbs6+9v0

 羨望。

 この焦がれるような思いは、でなければ、恐らく恋なのかもしれない。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:48:12.87 ID:qsbs6+9v0

 十二隻の内訳――戦艦が二、航戦が一、正規空母が一、航巡が一、軽巡が二、重巡が一、雷巡が一、駆逐が三。数の多寡は即ち戦力の多寡。そして差でもある。
 いや、やめようと戦艦水鬼は首を横に振った。戦いは頭でするのではないと彼女は思っていた。
 それになにより。

以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:48:49.54 ID:qsbs6+9v0

 更に続く。甲標的による雷撃――戦艦水鬼への直撃弾を戦艦棲姫が庇った。炸薬が派手に炸裂し、艤装の一部をもぎ取っていく。それでも小破に至ることはない。硬い装甲と高い火力が、彼女ら戦艦の持ち味である。
 そして、遺憾なく発揮されるのは、十分に近づいてから。

 あっはぁ、と艶かしい声が出たのを、彼女はどこか他人事のように聞いていた。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:49:23.08 ID:qsbs6+9v0

 反動で水面が激しく波打ち、海鳥たちを気絶させた。当然敵影もただでは済まない。間一髪で致命傷こそ避けたのだろうが、修験道服は体と艤装をまとめて吹き飛ばしながら倒れこむ。大破ではない。中破だ。

 敵艦隊からの応射――外れる。お返しだ、と戦艦棲姫が呟くのを戦艦水鬼は聞き逃さない。同じ気持ちなのだ、と彼女は思った。昂ぶって昂ぶって仕方がないのだ。

以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:49:57.93 ID:qsbs6+9v0

 それが憐憫であるとすればまだ戦艦水鬼にも理解はできた。だが、番傘の抱いている感情は、恐らくそうではない。想像でしかないにせよ確信できた。なぜなら、彼女は負の感情とともに生きてきたから。
 恨みだとか、妬みだとか、嫉みだとか。
 そう言うよくない感情はよく知っているつもりだから。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:50:33.66 ID:qsbs6+9v0

 艤装を一撫で。うぉおおおんという雄たけびをあげ、怪物が二体、番傘へ突っ込んでいく。
 沈めよう。沈めなければならない。それこそが彼女の本懐で、深海棲艦の本能。

 更に歩を進めようとしたところへ弾着観測射撃。彼女の頭上に浮かぶ、煩わしい瑞雲十二型。巨大な艤装を背負っているくせに目に涙なぞ浮かべて、実にいけ好かない。ちぐはぐだ。
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:51:09.45 ID:qsbs6+9v0

 うらやましい。
 うらやましい。
 うらやましい。

以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:52:01.18 ID:qsbs6+9v0

 艤装が再度唸りを上げた。うらやましい。この羨望の感情をいかにして晴らしてくれよう。砲弾を撃ち、拳を振り上げ、もう一度もの言わぬ鉄屑へと戻すことによってしか為しえない。

 もう一度? そこで彼女は確かに自分の思考へ疑問を通わせた。

以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:52:36.27 ID:qsbs6+9v0

 酸素魚雷、及び艦首魚雷の猛攻を全てその一身で――あるいは二身で受け止めて、戦艦棲姫の艤装がゆっくりと崩れていく。赤い油を垂れ流し、ぶちり、ぶちりと自重に耐えられなくなった肉片が剥がれ落ちながら。
 なぜ、と問う間もなく、駆逐艦の魚雷が大破の戦艦棲姫を襲った。ちょうど真下で炸裂したその魚雷は、戦艦棲姫本体の下半身と、右腕から肩にかけてをまっさらにして、同時に命の灯火も吹き消す。

 残った戦艦棲姫が旗艦を大破まで追い込むが、既に彼女もまた残った駆逐艦、及び軽巡と重巡に囲まれている。二発の魚雷を受け、艤装と本体が断絶、それぞれが四断されて沈んでいった。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:54:15.43 ID:qsbs6+9v0

 20inch砲を重巡に向けた。あちらもこちらへ砲身を向けている。
 殆ど同時に発射された砲弾は、重巡を一発で大破に追い込む。が、反面、彼女の艤装の右側半分も機能停止に追い込まれた。頭を潰され、ぐずぐずに溶解していく。
 それでも彼女は戦いをやめない。当然のことではある。たとえ艤装がまるきり役に叩かなくなっても、決してやめないだろう。

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/03/24(火) 13:55:08.19 ID:qsbs6+9v0

 だが、戦いを続ける限りは、敵の姿を見ていることができる。
 それが戦艦水鬼にとって唯一無二の救いだったといってもよい。

 あまりにもうらやましい艦娘の姿。
以下略



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