2: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 03:46:17.69 ID:w4MVYybr0
六月、インターハイ長野県大会会場で、宮永咲は立ち止まっていた。きょろきょろとあたりを見渡して、どこに進めばいいのかと必死に頭を働かせている。完全に道に迷っていた。
彼女は控え室までの道のりがさっぱりわからなくなっているのだ。トイレに行くために控え室から出て、トイレにたどり着くまではよかったのだ。
問題なのはトイレから出てからだった。というのが、トイレから出てきた宮永咲はちょうど人の移動に巻き込まれてしまったのだ。
3: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 03:48:44.16 ID:w4MVYybr0
宮永咲はやったと思った。これで控え室に戻る道がわかる。そう考えたのだ。宮永咲が声をかけようとしたときだった。
とても背の低い少女が宮永咲に話しかけてきた。背の低い少女は少し日焼けしていた。日焼けしている少女はこういった。
4: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 03:51:35.96 ID:w4MVYybr0
須賀京太郎に、宮永咲は声をかけていた。
「京ちゃん? どうしたの」
5: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 03:57:20.55 ID:w4MVYybr0
五月の終わりごろ。夕方の清澄高校の廊下を京太郎は歩いていた。授業がすっかり終わり、部活動の時間である。
灰色になってしまった髪の毛をいじりながら、足音をまったくたたせずに廊下を進んでいく。京太郎は、高校生になってからは麻雀部に所属している。
ほんの数日前まではまったく休まずに通っていたのだが、さまざまな事情が重なりここ数日は部活に顔を出せていなかった。
6: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:01:26.45 ID:w4MVYybr0
京太郎たちが部室に到着したときには部員たちが部活動を行っていた。京太郎以外はみな、女子である。三年生が一人、二年生が一人、一年生が京太郎を入れて四人。
部長が見守る形で部員たちが麻雀卓を囲っていた。麻雀部なのだから、その活動は麻雀である。野球部が野球をするように、麻雀部の部員ならば、やることは決まっている。
宮永咲と京太郎が部室に入ってくると部員たちの動きが止まった。今まで聞こえていた音がぴたりと止まるのだ。学生服のすれる音がうるさく感じるような静寂にはいった。
7: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:06:31.24 ID:w4MVYybr0
部活動が始まって、数十分後のことだった。京太郎を染谷まこがほめていた。
「なんじゃあ、今日は調子がええのぅ」
8: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:13:32.35 ID:w4MVYybr0
しかし、どこで壊れたのかわからないという答え方でも嘘ではない。正確にどのタイミングで携帯電話が壊れたのか、京太郎にもわからないのだ。
京太郎の答え聞いて原村和がこういった。
「本当に無事でよかったですね。早く犯人が見つかればいいのに」
9: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:16:36.45 ID:w4MVYybr0
宮永咲の心配する声も聞かずに京太郎は金庫に手をかけて持ち上げた。京太郎は古びた金庫の底に手をやって、ほかの二人が手伝う前に持ち上げたのだ。ヒョイという擬音が似合う動きだった。
むしろ軽すぎたのか持ち上げすぎてバランスを崩していた。京太郎は、そこそこ重たいといって情報を得ていたので、結構な力を入れて金庫に挑みかかったのだ。そうしていざ持ち上げてみると、それほど重くない。
そうなってみると重たくもないのに力を入れすぎたということになるわけで、勢いがあまって体のバランスを崩しかけたのである。
10: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:21:21.87 ID:w4MVYybr0
髪の毛の話をしているとき異変に気がついたものが一人いた。染谷まこだ。異変といってもたいしたものではない。京太郎の灰色の髪の毛が、かつて
「金髪だった」
と断言できたのが、染谷まこだけだったのだ。ほかの部員たちは宮永咲も含めて
11: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:25:18.54 ID:w4MVYybr0
麻雀部の部員たちと校門で別れた京太郎は一人で帰り道を歩いていた。京太郎は帰り際に買い食いでもしないかといって誘われた。しかし、「さっさと帰ってきて休め」と両親から言いつけられていたので、断ったのだった。
そうして、少し早歩きで、普通目に見るととんでもないスピードで帰り道を進んでいた。
12: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 04:30:23.11 ID:w4MVYybr0
京太郎が答えようとしたところで、ソックが先に答えた。
「漫画だな。宇宙生物と耽美な高校生が戦う話。古い小説を原作にしてて面白いんだ。
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