77: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:38:11.21 ID:bJtf1eDj0
『言葉のままだよ。あたし、さ。ヒッキーのこといつも考えてるんだ。今なにしてるのかなーとか、なに考えてるのかなーとか?
授業中の暇な時とか、部活中とかもさ。色々ね 』
『……そうか』
78: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:43:30.03 ID:bJtf1eDj0
保健室内は静謐な空気が流れていた。
時たまエアコンが暖かい空気を流す、僅かな駆動音が聞こえるだけだ。
由比ヶ浜からチョコを受け取った後お互いどうにも余所余所しくなってしまい、現在は一人待ちぼうけだ。
飲み物を買ってくると先ほど出て行ってから、まだ帰ってくる気配はない。
79: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:47:41.87 ID:bJtf1eDj0
「こちらこそごめんなさい……連絡が遅れてしまって。待たせたでしょう?」
そう言って反省の弁を述べる。表情は窺えないが、声の調子からなんとなくどんな顔をしているかは推察できる。
こういうところは本当になんというか律儀で、雪ノ下らしいなと微笑んでしまう。
80: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:53:50.77 ID:bJtf1eDj0
「開けるぞ?」
「ええ」
はらりとカーテンを開ける。こんなに薄いものなんだなと、ふと手で触って感じた。
81: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:57:29.51 ID:bJtf1eDj0
「あなたはいつもこんなことばかり言ってるのだから、少しは聞く側の立場にもなってみなさい」
「そうっすか……」
それから2つ、3つ会話をして、再び静かな時間が流れる。
82: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:01:59.88 ID:bJtf1eDj0
「で、お前は? 誰かにあげたの?」
ニヤリと少し意地の悪い顔になっている自覚があった。
雪ノ下は少し視線をこちらから外して窓の外を眺める。何かを憂うような表情に思わず惹きつけられる。
83: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:06:58.04 ID:bJtf1eDj0
暫時心ここに在らず状態の俺の顔の前に、いつの間にか綺麗な包装紙に包まれた箱が差し出されていた。
その元を辿れば、雪ノ下が穏やかに微笑みを浮かべている。
「そうね、比企谷くんは本当に幸せものね。私からチョコレートが貰えるのだもの」
84: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:10:45.83 ID:bJtf1eDj0
「……じゃあ、はい」
そちらを見やれば、先ほどと同様に包装された箱がこちらに差し出されている。
「……おう」
85: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:12:46.54 ID:bJtf1eDj0
そう言って由比ヶ浜は雪ノ下にどんどん顔を近づけていく。
垂れた髪をすっと片手で耳に掛けてそれはまるで接吻でもするかのようなうっとりとした表情だ。
なっ!何をするだァーーーーッ。ガチゆりか?ガチゆりなのか?
86: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:16:10.99 ID:bJtf1eDj0
「さみぃな……」
「寒いね……」
自転車を押して、由比ヶ浜と並んでバス停までの道を歩く。
87: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:18:47.79 ID:bJtf1eDj0
停留所に到着し、由比ヶ浜が立ち止まる。
自転車の左レバーを握り込むと、キィと微かなブレーキ音が無人の停留所に響いた。
由比ヶ浜はくるりとその場で回ると、俺と真正面に向き合う格好になった。
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