過去ログ - A Rabbit's Life (オリジナル百合)
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1: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 13:50:49.41 ID:7xDrI19W0
ハードボイルド風百合
銃は詳しくない
書きためなしなのでのろのろ
たぶん短い





『人類最後の日まで、臆病者は生き続ける』



ヘリの音で目が覚めた。
仄暗い空に向かって飛んでいる。
体が動かない。
先ほどまで、送迎用の車の中で体を揺らしていた気がしたが。
職業安定所はいつの間に空に浮かんだのだろう。

「ラビット、仕事だ」

私は呼ばれて、視線を転じた。
黒の戦闘服に身を包み込んだ男が七人。

「普通の職につけると思うなよ。俺たちの末路は、殺し続けるか、死ぬかだ。最も、臆病者にはもはや関係のないことだが。安心しろ、お前は、今回の仕事で確実にあの世行きだ」

男の言葉に周囲から電流のようなぴりりとした緊張感が走る。
やっと、休めると思っていたのに。
いつも、こそこそと動き回り、
人の顔色を窺い、
止まることなど許されなかった。
逃げ出したというのに、また引き戻されてしまった。
職業安定所は安全だと言った隣の部屋の男の下卑た顔を思い出す。
藁にすがるべきではなかった。

「ドナーが一匹逃げた。施設の森に上手く誘導したが、どうやら故郷が恋しいみたいでな」

「……」

「お前は囮さ。肉の匂いで寄ってくる。お前にたっぷりと年代物をぶっかけておいてやる。ありがたく思え」

指が少しだけ動かせた。
逃げるための思考はまだまどろんでいた。

「おっと、写真を見せてなかったな」

胸ポケットから彼は写真を抜き出した。
目を細めた。
金糸を思わせる肩よりも少し短い髪。
幼さの残る丸い顔。
青色の目。
写真の上に手書きで年齢が書いてある。
16歳。
年下だった。
男は小さく舌打つ。写真を私の顔の上に乗せる。
立ち上がって、降下の準備をし始めた。
何か、呟いている。

「ドナーに選ばれなければ、いい女に育ったろうに」

顔を振ることができた。
写真がはらりと落ちる。
裏にもまだ何か書いてあった。

ケイトス。
彼女の名前だろうか。

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2: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 14:41:46.14 ID:7xDrI19W0
敵はいつも誰かが連れてきてくれた。
みな、真っすぐに私の元へ向かうので、とてもやりやすかった。
敵はいつも同じぐらいの年代の子どもだった。
彼らは言葉を喋れなくされて、戦闘中はずっと唸っている。
ドナーになれなかった者の末路だ。
以下略



3: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 15:04:34.22 ID:7xDrI19W0
「お前の肉が一番美味いだろうから、それで各部位をそぎ落とすってのもありだな」

くつくつと喉奥で笑う。
他の男達が、散開し始める。
ヘリはまだ上空にいる。
以下略



4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 15:21:58.50 ID:7xDrI19W0
彼の頭が宙を飛んだ。
少女の傍らから、ぶどうの蔓のようなものが伸びていた。

「あれが……ケイトス」

以下略



5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 15:37:35.63 ID:7xDrI19W0
少女の頭部に触れる。
肌ざわりの良くない体毛に包まれた頭を確認する。
血は出ていない。
そもそも、同じ色の血液が変態後に出てくるのか。

以下略



6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 15:38:57.71 ID:7xDrI19W0
ちょっとここまで。
続きは夕方か夜か


7:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:12:27.73 ID:QlTNePDq0
マイケルは首ちょんぱされた状態で「あれが……ケイトス」 とか呟いたの?


8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 16:37:18.89 ID:7xDrI19W0
>>7
台詞入れる場所間違えましたね
まあ、それでも意識があったみたいなニュアンスで


9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 16:57:53.17 ID:7xDrI19W0
彼女のひげは人間の姿を保ったまま出現させることができるらしい。
正確には筋肉と運動神経が発達した触覚のようなものだった。
そのひげがヘリを捉えたのはものの数秒だった。
生憎、私は戦闘機なら訓練を受けていたが、ヘリは扱ったことがなかった。
そのため、中にいるパイロットを脅して操縦させようと提案した。
以下略



10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 17:13:53.64 ID:7xDrI19W0
ヘリががたんと傾く。

「どうしたの」

パイロットが舌を噛みそうなくらい早口で、
以下略



11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 17:22:28.17 ID:7xDrI19W0
目を開けると、公園のベンチに座っていた。
ガサガサと音がする。
新聞が体の上にかかっていた。
浮浪者がかけたのか。

以下略



12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 17:35:22.27 ID:7xDrI19W0
スーパーマーケットのかごをぶら下げて、私はしばらく自分の選択に戸惑っていた。
仕事中に街に出かけることは珍しくない。
ただ、先ほど命のやりとりをしていた敵と買い物にくるなんてのは間違いなく誰もやったことがない。

「これ、飲みたい」
以下略



13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 18:11:11.79 ID:7xDrI19W0
買い物を終え、私たちは安い宿を探していた。
ふと、視線を感じて顔を上げる。

「なに」

以下略



14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 18:30:56.92 ID:7xDrI19W0
ケイトスは見かけより、いくぶん幼い印象を受けた。
一通りの日常生活、会話はできるがどこかなじまない。
ドナーになる前からこんな感じだったのだろうか。
ケイトスは表情もあまり変わらない。
移植手術後にはよくあることだ、と昔施設の人が言っていたっけ。
以下略



15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 18:58:19.90 ID:7xDrI19W0
寝息が聞こえた。

「……」

この状況でよく眠れる。
以下略



16: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 19:22:49.42 ID:7xDrI19W0
殺されそうになっていた。
やはり、彼女も失敗したというカテゴリーに分類されるのか。
力だけなら、すぐにでも実戦で使えそうだけれど。

「……っくしゅん」
以下略



17: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 19:23:58.33 ID:7xDrI19W0
ここまで


18:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 19:31:12.81 ID:7xKbyDSeo
乙です



19: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 21:44:55.28 ID:7xDrI19W0
逃げて、その後は――。
職業安定所は、ダメだ。
児童誘拐のアジトなのだろう。
この国の失業者の大半はあそこへ行く。
働くあてもない子どもも。
以下略



20: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 21:59:01.07 ID:7xDrI19W0
翌朝、ドアの向こうから聞こえた話し声で目が覚めた。
正確には廊下の端の方だ。

「ケイトス」

以下略



21: ◆/BueNLs5lw[saga]
2015/09/22(火) 22:08:45.10 ID:7xDrI19W0
空に浮かんだ瞬間、

「あ、鳥」

などと間抜けな台詞を吐くケイトス。
以下略



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